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本編
雷光と激情
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様々な家の屋根を蹴り続け、ようやく南東のポイントへと辿り着く。
元々あった店を軽く解体し、ほぼ広場となったそこは明かりがないにも関わらず明るかった。
発生源はもちろん《雷光》であり、そのスキル《雷体化》が原因だ。
荒ぶる戦神の如く戦う姿は雄々しく、猛々しく──そして痛ましい。
着ている服はいたるところが擦れ、破れ、切り裂かれており、血も滲んでいる。
溜まった疲労のためか、いつもの技の冴えも、スキルの繊細さも欠いたその動きは、力強さなどはなく、手負いの獣が息絶えるその直前、最後に振り絞る力の様な類いに見える。
『ありゃあもう…ダメだな。いつ落ちてもおかしくない』
シャルも俺と同じ意見のようだ。
店の敷地内には《雷光》の他に三名ほどの人影、恐らく西学の生徒。
その外…店の敷地の外には、それを取り囲むようにして数え切れないほどの黒い影が。恐らくこれも西学の生徒。
そして──そこから指示を飛ばす明らかに指揮官らしき人影。
「………。」
『どうした?今代の』
「いや、何…」
それなりに近い家の屋根からその光景を見下ろしながら、ポツリと呟く。
「やっぱり…こういうのってアレだよな」
明らかに狙われた集中攻撃というか…完璧な計画で潰されるというか…。
そう言うのが…。
あぁいや、それもあるだろうが…それよりも。
女一人に大勢で寄って集ってリンチってのは…。
「糞ッ気に食わねぇな、って」
出し惜しみはしない。
俺は意識して緋眼を発動、胸元の銀剣も取り出して《千変》を待機状態にする。
飛び降りる瞬間、ふと思いつきで髪の中に手を突っ込むと、目当てのものを取り出してから。
「シャル、任せた」
『あぁ、任された』
とっ──と。
軽く飛び降りる。
「起きろ!《千変》!!」
起動した唯一無二の武具が俺の呼びかけに呼応し、腰で砕け散る。
想起するは流麗な鎧。
美しく、気高く、そして純粋な。
それを一秒もかからずに想い起し、装着する。
長い髪をたなびかせ、絶えず動き回る《雷光》と、どうやってかそれにピッタリと張り付くようにして戦う西学生徒の丁度中心。
鎧に付与されている重力魔法も操作し、本来ならありえない重量を伴った俺の着地は、両者の間に巨大なクレーターを作ってのものとなる。
当然、動きは止められる。
「きっ、貴様何者──」
ひとまず近くにいた西学の生徒を無言でぶっ飛ばす。もちろん銀剣で。
相手は地面とほぼ水平に吹き飛び、外にいた生徒の壁にぶち当たって止まる。
「………新手か?」
フラフラと幽鬼のような目で俺を睨みつつ、しかし絶対にその得物は離さずに俺へと向かってくる《雷光》。
一体どれだけの間戦い続けたのだろう。
意識は朦朧とし、身体も心もすり減らし、後はもう倒れるだけの糸が切れた操り人形のような様子で。
それでもなお、戦おうとする彼女は。
成程、確かに素晴らしいシェパードだった。
『…この状態で《雷光》と会うのって初めてじゃね?』
知ってる。だからこれを付けといたんだろ?
俺がクルリと振り返ると《雷光》の表情が一気に抜け落ちる。
「──お前。まさか《緋眼騎士》か?」
何となく、こそばゆくなって頬をかきつつそっと顔を近づけ一言。
『暫く休んでろ、お姫様』
それだけ言うと、俺は正面を──残った西学の生徒の方を向く。
俺は口を開くこと無く、しかし意味は伝わるよう、端的に。
銀剣を担ぎ、逆の手で手のひら上に向けてくいくい、と。
俺が伝えたいのは簡単な事。
──かかってこいよ糞野郎共。
元々あった店を軽く解体し、ほぼ広場となったそこは明かりがないにも関わらず明るかった。
発生源はもちろん《雷光》であり、そのスキル《雷体化》が原因だ。
荒ぶる戦神の如く戦う姿は雄々しく、猛々しく──そして痛ましい。
着ている服はいたるところが擦れ、破れ、切り裂かれており、血も滲んでいる。
溜まった疲労のためか、いつもの技の冴えも、スキルの繊細さも欠いたその動きは、力強さなどはなく、手負いの獣が息絶えるその直前、最後に振り絞る力の様な類いに見える。
『ありゃあもう…ダメだな。いつ落ちてもおかしくない』
シャルも俺と同じ意見のようだ。
店の敷地内には《雷光》の他に三名ほどの人影、恐らく西学の生徒。
その外…店の敷地の外には、それを取り囲むようにして数え切れないほどの黒い影が。恐らくこれも西学の生徒。
そして──そこから指示を飛ばす明らかに指揮官らしき人影。
「………。」
『どうした?今代の』
「いや、何…」
それなりに近い家の屋根からその光景を見下ろしながら、ポツリと呟く。
「やっぱり…こういうのってアレだよな」
明らかに狙われた集中攻撃というか…完璧な計画で潰されるというか…。
そう言うのが…。
あぁいや、それもあるだろうが…それよりも。
女一人に大勢で寄って集ってリンチってのは…。
「糞ッ気に食わねぇな、って」
出し惜しみはしない。
俺は意識して緋眼を発動、胸元の銀剣も取り出して《千変》を待機状態にする。
飛び降りる瞬間、ふと思いつきで髪の中に手を突っ込むと、目当てのものを取り出してから。
「シャル、任せた」
『あぁ、任された』
とっ──と。
軽く飛び降りる。
「起きろ!《千変》!!」
起動した唯一無二の武具が俺の呼びかけに呼応し、腰で砕け散る。
想起するは流麗な鎧。
美しく、気高く、そして純粋な。
それを一秒もかからずに想い起し、装着する。
長い髪をたなびかせ、絶えず動き回る《雷光》と、どうやってかそれにピッタリと張り付くようにして戦う西学生徒の丁度中心。
鎧に付与されている重力魔法も操作し、本来ならありえない重量を伴った俺の着地は、両者の間に巨大なクレーターを作ってのものとなる。
当然、動きは止められる。
「きっ、貴様何者──」
ひとまず近くにいた西学の生徒を無言でぶっ飛ばす。もちろん銀剣で。
相手は地面とほぼ水平に吹き飛び、外にいた生徒の壁にぶち当たって止まる。
「………新手か?」
フラフラと幽鬼のような目で俺を睨みつつ、しかし絶対にその得物は離さずに俺へと向かってくる《雷光》。
一体どれだけの間戦い続けたのだろう。
意識は朦朧とし、身体も心もすり減らし、後はもう倒れるだけの糸が切れた操り人形のような様子で。
それでもなお、戦おうとする彼女は。
成程、確かに素晴らしいシェパードだった。
『…この状態で《雷光》と会うのって初めてじゃね?』
知ってる。だからこれを付けといたんだろ?
俺がクルリと振り返ると《雷光》の表情が一気に抜け落ちる。
「──お前。まさか《緋眼騎士》か?」
何となく、こそばゆくなって頬をかきつつそっと顔を近づけ一言。
『暫く休んでろ、お姫様』
それだけ言うと、俺は正面を──残った西学の生徒の方を向く。
俺は口を開くこと無く、しかし意味は伝わるよう、端的に。
銀剣を担ぎ、逆の手で手のひら上に向けてくいくい、と。
俺が伝えたいのは簡単な事。
──かかってこいよ糞野郎共。
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