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本編
夜中と友人
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夜の王都、明かりも落ちきって暗闇に染まった夜の中を俺一人が走る。
向かうは王都の南東ポイント…つまり二つ名持ち達が陣取った場所。そこへ向かって屋根から屋根へと飛び移りながら急ぐ。
何故ならそこへ今、西学のほぼ全生徒が攻め入っているらしいからだ。
もちろん情報源はあの馬鹿っぽい少年から。嘘をつくにも頭を使うので、信用できるかどうかという点なら、ある意味最も信用出来るだろう。
それに、向こうのやろうとしている事が聖学祭を潰すことだったのなら、この事も考えて然るべきだった。
二つ名持ちというのは、ある意味この学校の象徴でもある。
それが出す店が今年、例年と違うことをするということで尚更注目を集めたのだ。
向こうとしては潰さない理由など一つもない。
その話を聞いた途端、脳裏で弾けたのは夕方の《雷光》の言葉。
──「今日の防衛は私がここを受け持つからな。そもそも遅れようがない」
──「私がここを──」
他は?
私達とは──他の誰かと戦うとは一言も言ってなかった。
普通ならば一人でも充分なのかもしれないが──向こうは明らかに計画立て、クラスや学年ではなく学校で二つ名持ちのポイントを潰しに来ている。
遅れてそう気づいた頃には少年を放り出し、寝かせていた男子くん女子ちゃんを叩き起こしていた。
もちろん二人からの文句は山ほどあったが、急いでいたので超簡単に事情を説明して店を飛び出た。もちろん、鍵は押し付けて。
アーネには事情を説明するどころか起こしてすらいなかったが、まぁ向こうは問題あるまい。元々防衛役ではなく回復役として呼んでいたのだから。
問題は──。
「ッチ」
背中をつぅ、と伝う熱。
同時にヒリヒリと痺れるような痛み。
先の格闘家との戦いで放置していた傷が悪化したらしい。
ついでに、ボコボコに殴られた顔や腹の怪我も治していない。
今も鈍い痛みがずっと引くことなく身体を縛っている。
少しでもいいから、アーネに治してもらえばよかったか…?
ふとそんな事が脳裏を過ぎると同時に、その時間すら惜しいとも思った。
俺が店を出たのは十二時半。防衛戦が始まって既に三時間も経っている。
つまり、三時間も一人で戦い続けていることになる。
そんなもの──普通の人間が耐えられるものではない。
屋根を蹴り、次の屋根へと向かう瞬間──それとなく見慣れた頭が見えた。
「っ──!」
『どうした今代の?怪我を治しに戻──あぁ、そういう事か』
「ユーリア!!」
屋根上から飛び降り、彼女の目の前に着地する。
「何っ──レィアか!どうしてこんな所に」
「事情説明は後だ!ルト先輩にメッセージを飛ばせるんだよな!?」
「え?あ、あぁ。出来るがどうし──」
「今すぐ繋いでくれ!」
「しかし、いくらルト坊でももう寝ている時間で…」
困惑するユーリア。当然か。
「十秒でいい、内容は南東が危ないって事だけ、それで通じるはずだ!頼んだぞ!」
「ちょっ、お前はどこに」
ユーリアに一方的にそういった後、俺は再び屋根の上へと飛び乗る。
そこから先は脇目もふらずに目的地に向かって駆けた。
向かうは王都の南東ポイント…つまり二つ名持ち達が陣取った場所。そこへ向かって屋根から屋根へと飛び移りながら急ぐ。
何故ならそこへ今、西学のほぼ全生徒が攻め入っているらしいからだ。
もちろん情報源はあの馬鹿っぽい少年から。嘘をつくにも頭を使うので、信用できるかどうかという点なら、ある意味最も信用出来るだろう。
それに、向こうのやろうとしている事が聖学祭を潰すことだったのなら、この事も考えて然るべきだった。
二つ名持ちというのは、ある意味この学校の象徴でもある。
それが出す店が今年、例年と違うことをするということで尚更注目を集めたのだ。
向こうとしては潰さない理由など一つもない。
その話を聞いた途端、脳裏で弾けたのは夕方の《雷光》の言葉。
──「今日の防衛は私がここを受け持つからな。そもそも遅れようがない」
──「私がここを──」
他は?
私達とは──他の誰かと戦うとは一言も言ってなかった。
普通ならば一人でも充分なのかもしれないが──向こうは明らかに計画立て、クラスや学年ではなく学校で二つ名持ちのポイントを潰しに来ている。
遅れてそう気づいた頃には少年を放り出し、寝かせていた男子くん女子ちゃんを叩き起こしていた。
もちろん二人からの文句は山ほどあったが、急いでいたので超簡単に事情を説明して店を飛び出た。もちろん、鍵は押し付けて。
アーネには事情を説明するどころか起こしてすらいなかったが、まぁ向こうは問題あるまい。元々防衛役ではなく回復役として呼んでいたのだから。
問題は──。
「ッチ」
背中をつぅ、と伝う熱。
同時にヒリヒリと痺れるような痛み。
先の格闘家との戦いで放置していた傷が悪化したらしい。
ついでに、ボコボコに殴られた顔や腹の怪我も治していない。
今も鈍い痛みがずっと引くことなく身体を縛っている。
少しでもいいから、アーネに治してもらえばよかったか…?
ふとそんな事が脳裏を過ぎると同時に、その時間すら惜しいとも思った。
俺が店を出たのは十二時半。防衛戦が始まって既に三時間も経っている。
つまり、三時間も一人で戦い続けていることになる。
そんなもの──普通の人間が耐えられるものではない。
屋根を蹴り、次の屋根へと向かう瞬間──それとなく見慣れた頭が見えた。
「っ──!」
『どうした今代の?怪我を治しに戻──あぁ、そういう事か』
「ユーリア!!」
屋根上から飛び降り、彼女の目の前に着地する。
「何っ──レィアか!どうしてこんな所に」
「事情説明は後だ!ルト先輩にメッセージを飛ばせるんだよな!?」
「え?あ、あぁ。出来るがどうし──」
「今すぐ繋いでくれ!」
「しかし、いくらルト坊でももう寝ている時間で…」
困惑するユーリア。当然か。
「十秒でいい、内容は南東が危ないって事だけ、それで通じるはずだ!頼んだぞ!」
「ちょっ、お前はどこに」
ユーリアに一方的にそういった後、俺は再び屋根の上へと飛び乗る。
そこから先は脇目もふらずに目的地に向かって駆けた。
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