664 / 2,027
本編
撃退と西学
しおりを挟む
「ふぅ、これで何組目だ?」
二回の窓から襲撃者をぶん殴って吹き飛ばし、その場で一息つく。
今回のパーティは下に一人、上に四人送り込んで襲撃してきたため、下の階の一人を蹴散らして上の階に俺が助太刀した。
もはや奪取を狙っているのではなく、ほとんど店の破壊を狙っている手口だ。
「お疲れ様です教官…えーっと、今ので八組目ですね」
「そうか…」
壁にかかった時計を見ると、時刻は丁度十二時。防衛を始めたのが九時半で、最初の襲撃は十時頃…二時間で八組だから、十五分に一組ペースか。もちろん、実際にはもっとバラつきがあるが…。
「数、多くね?」
そんな事を思える程度には来ている気がする。
そもそも、五人前後で八組だから、単純に考えると既に四十人近く襲撃してきている。
丸々ひとクラス襲撃しているようなものだ。
まぁ、傷を治した者が再び攻めてくることもルール上なんの問題もないので、実際は使いまわしているのだろうが…それにしたって多い。
そして、連戦ではないが、中途半端に挟まれるような休憩が逆に疲労を感じさせているような気もする。
幼い頃から戦い慣れていた俺ですらそうなのだ。隠そうとしている二人の疲労もかなりの物だろう。
「俺、昨日はほとんど寝てたから知らねぇんだけど、起きてた時はずっと相手来なかったぞ…?」
まぁ、人払いの魔法の結果でもあるのだろうが。
「…ジャフ…あぁ、初日の防衛組の一人なんだけど」
少し考えながら男子くんが口を開く。
「初日は一晩とおして四組しか来なかったらしいよ。流石にこの数は…異常じゃないかな」
「…ふむ」
既にその倍の数が来ているのか。
本気で落としにかかっているのだろう…しかし。
それにしては、あまりここに力を入れていないではないだろうか?
既に二つの店を落とした西学だが、それでも攻めてきている余裕があるという事は、まだ生徒が…店を取っていないクラスが存在するという事だ。
仮に店を持っているのが聖学で言う所の新一年、旧一年のようなクラス──まぁ、新しく出来た学校に新旧もクソもないのだが──だったとしよう。
さらにそれとは別に、俺たちへ攻めてくるクラス…仮にこれを新二年に当てるとしたら。
当然、最低もう一つ旧クラスが存在するはずだ。
そのクラスは…一体どこを攻めている?
どこの店も、ひとクラス分の戦力じゃあ足りないだろうし、西学は誕生したばかりだ、まだ教育が出来きっていないだろうから、戦力的にもそもそも問題が…。
「…ダメだ、わからん。なぁ、誰か西学のクラス割みたいなの知らねぇ?」
ダメ元でそう聞いてみる。もし分かれば、後どのぐらい戦えばいいかわかるかもしれないしな。
「えっと…一年ふたクラス、二年ふたクラス、三年ふたクラスですねー」
女子ちゃんが答え、
「…うん?クラネシナさん、それっておかしくない?」
男子くんが問う。
「ふぇ?何がですか?」
「だって、今年出来たばかりなんだからさ、一年がふたクラスあってもおかしくないけど、二年と三年があって、ふたクラスあるのっておかしくない?」
確かにそうだ。
そもそも西学は今年初めて出来たはず。
二年三年があるのがおかしい…。
「いやぁ、二人とも知らないんですか?」
当然のように女子ちゃんが言う。
「西学って、一年は普通に募集したんですけど、二年以上はギルドから人を回してもらったんですよ。だから、技術的に上の人を『一年、或いは二年の教育課程を通った』事にしているんですって」
「…は?」
「もちろん、年齢はある程度絞られてるらしいですがねー」
女子ちゃんがそう言ったと同時に。
『今代の』
来たか?
『来たぞ』
「……はぁ」
「どうしたんです?教官?」
「無礼なお客さんだ。迎え撃つぞ…あぁそれと」
ふと見上げた時計は、きっかり十二時十五分を指していた。
「お前らは休め。寝てろ」
二回の窓から襲撃者をぶん殴って吹き飛ばし、その場で一息つく。
今回のパーティは下に一人、上に四人送り込んで襲撃してきたため、下の階の一人を蹴散らして上の階に俺が助太刀した。
もはや奪取を狙っているのではなく、ほとんど店の破壊を狙っている手口だ。
「お疲れ様です教官…えーっと、今ので八組目ですね」
「そうか…」
壁にかかった時計を見ると、時刻は丁度十二時。防衛を始めたのが九時半で、最初の襲撃は十時頃…二時間で八組だから、十五分に一組ペースか。もちろん、実際にはもっとバラつきがあるが…。
「数、多くね?」
そんな事を思える程度には来ている気がする。
そもそも、五人前後で八組だから、単純に考えると既に四十人近く襲撃してきている。
丸々ひとクラス襲撃しているようなものだ。
まぁ、傷を治した者が再び攻めてくることもルール上なんの問題もないので、実際は使いまわしているのだろうが…それにしたって多い。
そして、連戦ではないが、中途半端に挟まれるような休憩が逆に疲労を感じさせているような気もする。
幼い頃から戦い慣れていた俺ですらそうなのだ。隠そうとしている二人の疲労もかなりの物だろう。
「俺、昨日はほとんど寝てたから知らねぇんだけど、起きてた時はずっと相手来なかったぞ…?」
まぁ、人払いの魔法の結果でもあるのだろうが。
「…ジャフ…あぁ、初日の防衛組の一人なんだけど」
少し考えながら男子くんが口を開く。
「初日は一晩とおして四組しか来なかったらしいよ。流石にこの数は…異常じゃないかな」
「…ふむ」
既にその倍の数が来ているのか。
本気で落としにかかっているのだろう…しかし。
それにしては、あまりここに力を入れていないではないだろうか?
既に二つの店を落とした西学だが、それでも攻めてきている余裕があるという事は、まだ生徒が…店を取っていないクラスが存在するという事だ。
仮に店を持っているのが聖学で言う所の新一年、旧一年のようなクラス──まぁ、新しく出来た学校に新旧もクソもないのだが──だったとしよう。
さらにそれとは別に、俺たちへ攻めてくるクラス…仮にこれを新二年に当てるとしたら。
当然、最低もう一つ旧クラスが存在するはずだ。
そのクラスは…一体どこを攻めている?
どこの店も、ひとクラス分の戦力じゃあ足りないだろうし、西学は誕生したばかりだ、まだ教育が出来きっていないだろうから、戦力的にもそもそも問題が…。
「…ダメだ、わからん。なぁ、誰か西学のクラス割みたいなの知らねぇ?」
ダメ元でそう聞いてみる。もし分かれば、後どのぐらい戦えばいいかわかるかもしれないしな。
「えっと…一年ふたクラス、二年ふたクラス、三年ふたクラスですねー」
女子ちゃんが答え、
「…うん?クラネシナさん、それっておかしくない?」
男子くんが問う。
「ふぇ?何がですか?」
「だって、今年出来たばかりなんだからさ、一年がふたクラスあってもおかしくないけど、二年と三年があって、ふたクラスあるのっておかしくない?」
確かにそうだ。
そもそも西学は今年初めて出来たはず。
二年三年があるのがおかしい…。
「いやぁ、二人とも知らないんですか?」
当然のように女子ちゃんが言う。
「西学って、一年は普通に募集したんですけど、二年以上はギルドから人を回してもらったんですよ。だから、技術的に上の人を『一年、或いは二年の教育課程を通った』事にしているんですって」
「…は?」
「もちろん、年齢はある程度絞られてるらしいですがねー」
女子ちゃんがそう言ったと同時に。
『今代の』
来たか?
『来たぞ』
「……はぁ」
「どうしたんです?教官?」
「無礼なお客さんだ。迎え撃つぞ…あぁそれと」
ふと見上げた時計は、きっかり十二時十五分を指していた。
「お前らは休め。寝てろ」
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる