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本編
報告と処遇
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「これが《臨界点》が見た景色、ですか」
「はい。恐らくですけれど、例の魔族の視界から入り、そこに映った景色をそのまま切り取って写したんだと思いますわ」
「術式は?写した時の」
「一瞬だったのでそこまでは……けれど、詠唱なら覚えてますわ」
そう言うと、学校長がどんな詠唱だったか聞いてきたので、アーネがその場で諳んじる。
「導きと転写の魔法の複合ですね。知らない場所を知り、それを写す。手堅く確実と言える手段です。使った魔導具もしっかりしてますし、それなりの信憑性はあるでしょう」
「……つまり?」
俺が軽くハテナを飛ばしつつ聞くと、学校長がこちらを向いて話す。
「この絵は魔族の足取りを追うのに充分な材料となり得るでしょう。と言っても、その事に向こうも勘づいていてもおかしくない……早急に対策を練りたい所ですね」
と言って、学校長が例の絵を細く長く畳み、それをどこからともなく取り出した大弓の矢に結び、そして番える。
同時に学校長の傍らにいつの間にか魔本も浮いており、勝手にページがパラパラと捲られ、やがて目的の項目が見つかったのだろう。ピタリと止まって輝きを放つ。
「《千里は手中に。万里は眼前に有り》」
極めて短い詠唱。
しかし、逆に言うのなら、学校長ですら詠唱が必要な魔法。
「《我が一撃、外すこと無し》」
そう言って学校長が手を離すと、矢が轟と音を立てて飛び、壁をぶち抜いて飛び──は、せず、するりと抜け、そのまま消えて飛んで行った。
「これでしばらくすれば教会に届くでしょう」
どういう魔法だったのか。ともかく、矢を光に変えたのは何となくわかった。が、逆に言うならそれだけしか分からなかった。
「で、他に報告は?」
「これで終わりですわね。ただ、ひとつ聞きたいんですれけど、クアイはこの後どうなるんですの?」
アーネがそう聞くと、学校長は即座に答えた。
「聖学を退学し、出て行ってもらいます」
『まぁ、そうなるよなぁ』
シャルがどこか呑気にそう言う。
「パスを断ったのはわかりました。ですが、術式が残っているのなら、万が一と言う事があります。それに、私は元々どう片付こうが、彼女を退学させるつもりでしたから」
「わかりましたわ。彼女にその事はまだ伝えてないんですわよね?」
「今はまだ。これが終わり次第、すぐに言うつもりでしたが……まさか退学させるな、とは言いませんね?」
ジロリ、と学校長が俺を睨めつけ、流石の俺も両手を上げて降参のポーズをする。
「俺はただ、クアイがあんな目にあうのがおかしいと思って行動しただけだ。それに、言うだけ言って俺は結局何も出来なかった。今回の件は何も文句は言えないよ」
学校側も充分譲歩してくれたし、結果もそれなりに出せた。僅かに問題は残ったものの、それに対して学校側が彼女を退学させるというのも理にかなっている。
「でしたら、一つだけお願いがありますの」
「出来る範囲でしたら構いませんよ」
学校長がそう言い、アーネが頷く。
「簡単ですわ。クアイには洗脳の事を隠しておいて欲しいんですの。そして、何も知らずに自身の都市へ戻って欲しいんですわ」
アーネのその言葉に対し、学校長は一度だけ首を縦に振った。
「はい。恐らくですけれど、例の魔族の視界から入り、そこに映った景色をそのまま切り取って写したんだと思いますわ」
「術式は?写した時の」
「一瞬だったのでそこまでは……けれど、詠唱なら覚えてますわ」
そう言うと、学校長がどんな詠唱だったか聞いてきたので、アーネがその場で諳んじる。
「導きと転写の魔法の複合ですね。知らない場所を知り、それを写す。手堅く確実と言える手段です。使った魔導具もしっかりしてますし、それなりの信憑性はあるでしょう」
「……つまり?」
俺が軽くハテナを飛ばしつつ聞くと、学校長がこちらを向いて話す。
「この絵は魔族の足取りを追うのに充分な材料となり得るでしょう。と言っても、その事に向こうも勘づいていてもおかしくない……早急に対策を練りたい所ですね」
と言って、学校長が例の絵を細く長く畳み、それをどこからともなく取り出した大弓の矢に結び、そして番える。
同時に学校長の傍らにいつの間にか魔本も浮いており、勝手にページがパラパラと捲られ、やがて目的の項目が見つかったのだろう。ピタリと止まって輝きを放つ。
「《千里は手中に。万里は眼前に有り》」
極めて短い詠唱。
しかし、逆に言うのなら、学校長ですら詠唱が必要な魔法。
「《我が一撃、外すこと無し》」
そう言って学校長が手を離すと、矢が轟と音を立てて飛び、壁をぶち抜いて飛び──は、せず、するりと抜け、そのまま消えて飛んで行った。
「これでしばらくすれば教会に届くでしょう」
どういう魔法だったのか。ともかく、矢を光に変えたのは何となくわかった。が、逆に言うならそれだけしか分からなかった。
「で、他に報告は?」
「これで終わりですわね。ただ、ひとつ聞きたいんですれけど、クアイはこの後どうなるんですの?」
アーネがそう聞くと、学校長は即座に答えた。
「聖学を退学し、出て行ってもらいます」
『まぁ、そうなるよなぁ』
シャルがどこか呑気にそう言う。
「パスを断ったのはわかりました。ですが、術式が残っているのなら、万が一と言う事があります。それに、私は元々どう片付こうが、彼女を退学させるつもりでしたから」
「わかりましたわ。彼女にその事はまだ伝えてないんですわよね?」
「今はまだ。これが終わり次第、すぐに言うつもりでしたが……まさか退学させるな、とは言いませんね?」
ジロリ、と学校長が俺を睨めつけ、流石の俺も両手を上げて降参のポーズをする。
「俺はただ、クアイがあんな目にあうのがおかしいと思って行動しただけだ。それに、言うだけ言って俺は結局何も出来なかった。今回の件は何も文句は言えないよ」
学校側も充分譲歩してくれたし、結果もそれなりに出せた。僅かに問題は残ったものの、それに対して学校側が彼女を退学させるというのも理にかなっている。
「でしたら、一つだけお願いがありますの」
「出来る範囲でしたら構いませんよ」
学校長がそう言い、アーネが頷く。
「簡単ですわ。クアイには洗脳の事を隠しておいて欲しいんですの。そして、何も知らずに自身の都市へ戻って欲しいんですわ」
アーネのその言葉に対し、学校長は一度だけ首を縦に振った。
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