大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

下と所長

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いつだったかに一度乗せてもらった、この変なカラクリに乗り、地下の研究所へ向かう。
するとすぐに白衣の女性達がやって来て、俺の前に道を塞ぐように並んだ。
「アポ無しで来てみたんだが……意外と反応早かったな」
シャルに向けてそう呟くと、すぐ向かいの女性がその言葉を拾った。
「貴方は要注意人物ですからね。今日はどう言った御用件ですか?」
「当人に直球で言うなよ。俺だって傷つく。ラピュセ──に、直に言う必要も無いんだが、ちょっと用意して欲しいものと、俺がする行動を軽く研究ってか解析して欲しいんだが」
「えっ……と。ふむ、あぁはい……分かりました。所長がお会いになるそうです。それと、用意して欲しいものとは何ですか?」
「ん、大したものじゃないんだが。なんつーか、ひたすら壊れにくい物ってか、切れにくい物ってあるか?それを俺が斬るから、切った瞬間を分析して欲しい」
「切れにくい物、ですね。何種類か用意しておきます。ではこちらの者に従って所長の所へ行ってください」
「悪いな」
そんな訳で別の研究員に連れられ、研究所の奥へと歩みを進める。
『《始眼》の分析か』
「あぁ」
「……?。今なにかおっしゃいましたか?」
「あぁいや。独り言だ。気にしないでくれ」
と言って、シャルと会話を続ける。
「あの事象に説明がつけられるのかどうか。というより、そもそも観測が出来るのか」
自身で編み出したのに、その戦技アーツがどういうものなのかが何となくでしか理解出来ていない現状、これを切り札として使って予想外のことが起こる。なんてことがあったりしたら困る。出来る限り知って、可能性をちゃんと押えておきたい。
「こちらですね。どうぞ」
と言って女研究員が所長室の扉を開き、俺を通す。
「ようラピュセ。急に来て悪かったな」
「ほんと、悪いと思ってよね。私も結構忙しいのよ?特に最近は……で、どうなの?一週間のインスタント修行は。結果あったの?」
「流石。耳が早いな」
「あら、この学校の事で知らないことはおよそないと言っても良いわよ。例えばそうね。ウィルクラインを再起不能にしたのはペネレーって子よ。もうこの学校にいないけど」
「学校に居ないって……そいつ、どうしたんだ?」
「別に大した事じゃないわ。例の進行の時の惨状を見て、心病んで王都に戻っちゃっただけよ」
さらりとラピュセが言い、シャルが軽く肯定する。
『まぁ、保健室は地獄だったろうな……』
戦争を知っている彼女がそう言うのだから、それ程ではないにしろ、近い惨状ではあったのだろう。
「で、切れにくいものを持ってこいってのは一週間の成果と関係あるのかしら?」
「まぁそんな所だ。変な先入観とか持って欲しくないから、先に見てもらいたい。何をするかって話なら先にするが」
「それぐらい言わなくてもいいわよ。切るんでしょ、どうせ」
「厳しいねぇ。でも当たりだ。絶対切れない様なものを持ってきてくれると助かる。もちろん倫理的とか精神的なモノじゃなくて、物理的な方な」
「魔法的なのは?」
「それでもいい。とにかく、剣で切れないような──あぁ、ついでだ。剣もあるか?二、三本あるといいんだが」
と言うと、ラピュセは小首を傾げた。
「貴方の持ってるその剣じゃダメなのかしら?」
「ダメじゃねぇんだが……これ使うと、確実に切っちまうからな。それじゃ実験ってか検証の意味が無いだろ」
そう言って俺は肩を竦めた。
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