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本編
転移と帰還
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「え、ちょ。これ大丈夫──じゃねぇよな!?」
「自動転移起動まで時間が無いようです。もって五分──いえ。五分もないですね」
「マジか!」
とりあえず拾い上げ、細かく振動するそれを首に引っ下げて修練所へ。
「おいベル!あと──なんだっけ。ベルの親父さん!悪いが急に向こうへ戻らにゃならんくなった!」
「えらい急やな!ってなんやそれ!?なんかのアンカーか!?」
ベルが俺の方を見ると、目を見開いて驚く。
「フィッシング・ワープの目印らしい!もう時間がない!」
「は!?あんな化石みたいな魔法使えるやつおるんか!?」
「おいクランベルナ!まだ話は終わってないぞ!」
「後にせいハゲ!うっわ、やたら回りくどいなこれ。これやからクソ古い術式は嫌なんやわ」
「え、何して──」
「残り三分ぐらいか。なんか指定の場所行かんなんらしいけど大丈夫なんか?」
「指定の……?」
「恐らく転移時の部屋の事かと」
「喋っ……!?」
「お前はスっこんどれクソ親父。魔法ロクにわからんやろ。えーっと、式にちょっと余裕作ってあるな。教本通り、ガチガチのコピーじゃなくて助かったわ。逆言ったら余程の変態やけどな」
「なんでもいいけど、俺は今から行かなきゃならん。アンタら二人を送る時間はないから──」
「やし、ここをこう、やな」
ピタッ、と。札が止まる。
「……何をした?」
「術式にちょっとだけ余裕あったから、そこんトコ書き足して簡単なロックかけたわ。五分ぐらいは延長されたんやないかな」
他人の魔法に介入して術式を弄るなんてのは、余程の事がないとまず無理と聞いていたのだが。
「何言いたいかはその顔見れば分かる。まぁ、向こうの術者に聞いてくれた方が早いと思うわ。それより、ほれ」
と言ってベルが手を出す。
「……?」
「何呆けた顔してんのや。ウチらここから出さんと不味いやろ」
「あ、そうか」
と言う訳で髪で目隠しをし、マキナを纏い、二人を担いで大急ぎで大聖堂の地下から大教会の外まで運ぶ。
「悪いが先に行く!諸々サンキューベル!」
「英雄様にはウチから言っとくわ!じゃあな!」
それだけ言って、再度大急ぎで大聖堂の地下へ。
「えー、あー、えっと、シュライネ──さん!いる!?」
「はい?お呼びでしょうか?」
「のぅわっ!?」
走りながら呼びかけると、音も気配も無く、すぐ近くの扉から真っ白なシスターが現れた。
「大急ぎで戻ることになったんだけど、俺が来た部屋って──」
「わかりました。こちらでございます」
シュライネが足早に進み、その後を俺が追う。先程ロックをかけられたはずの札は、再度振動を始めている。
「お部屋の状態は来た時と全く同じ状態に保存してあります。何分相当高度な魔法とお聞きしていたので」
「助かった。この部屋か」
シュライネが開けた部屋に入ると、確かに先日来た時と全く変わりのない、複雑怪奇な紋様と呪文が渦巻く、目眩のするような部屋。
「一週間世話してくれてありがとうな、シュライネさん」
「いえ、私も久々のお客人で嬉しかったです」
その言葉に若干の疑問を覚えて振り返ると、そこにシュライネの姿は無い。
代わりにいるのは、蒼い髪の少女。
「よお、一週間ぶり」
手を挙げてそう挨拶すると、アンジェはかなり険しい顔をして、「ねぇ」と声を掛けた。
「誰か私の術式に介入した奴いるでしょ。誰?」
ふむ、少しばかり機嫌が悪いらしい。
「あー、手先も魔法も器用な槌人種が知り合いにいてな」
俺はそう彼女に説明し始めた。
「自動転移起動まで時間が無いようです。もって五分──いえ。五分もないですね」
「マジか!」
とりあえず拾い上げ、細かく振動するそれを首に引っ下げて修練所へ。
「おいベル!あと──なんだっけ。ベルの親父さん!悪いが急に向こうへ戻らにゃならんくなった!」
「えらい急やな!ってなんやそれ!?なんかのアンカーか!?」
ベルが俺の方を見ると、目を見開いて驚く。
「フィッシング・ワープの目印らしい!もう時間がない!」
「は!?あんな化石みたいな魔法使えるやつおるんか!?」
「おいクランベルナ!まだ話は終わってないぞ!」
「後にせいハゲ!うっわ、やたら回りくどいなこれ。これやからクソ古い術式は嫌なんやわ」
「え、何して──」
「残り三分ぐらいか。なんか指定の場所行かんなんらしいけど大丈夫なんか?」
「指定の……?」
「恐らく転移時の部屋の事かと」
「喋っ……!?」
「お前はスっこんどれクソ親父。魔法ロクにわからんやろ。えーっと、式にちょっと余裕作ってあるな。教本通り、ガチガチのコピーじゃなくて助かったわ。逆言ったら余程の変態やけどな」
「なんでもいいけど、俺は今から行かなきゃならん。アンタら二人を送る時間はないから──」
「やし、ここをこう、やな」
ピタッ、と。札が止まる。
「……何をした?」
「術式にちょっとだけ余裕あったから、そこんトコ書き足して簡単なロックかけたわ。五分ぐらいは延長されたんやないかな」
他人の魔法に介入して術式を弄るなんてのは、余程の事がないとまず無理と聞いていたのだが。
「何言いたいかはその顔見れば分かる。まぁ、向こうの術者に聞いてくれた方が早いと思うわ。それより、ほれ」
と言ってベルが手を出す。
「……?」
「何呆けた顔してんのや。ウチらここから出さんと不味いやろ」
「あ、そうか」
と言う訳で髪で目隠しをし、マキナを纏い、二人を担いで大急ぎで大聖堂の地下から大教会の外まで運ぶ。
「悪いが先に行く!諸々サンキューベル!」
「英雄様にはウチから言っとくわ!じゃあな!」
それだけ言って、再度大急ぎで大聖堂の地下へ。
「えー、あー、えっと、シュライネ──さん!いる!?」
「はい?お呼びでしょうか?」
「のぅわっ!?」
走りながら呼びかけると、音も気配も無く、すぐ近くの扉から真っ白なシスターが現れた。
「大急ぎで戻ることになったんだけど、俺が来た部屋って──」
「わかりました。こちらでございます」
シュライネが足早に進み、その後を俺が追う。先程ロックをかけられたはずの札は、再度振動を始めている。
「お部屋の状態は来た時と全く同じ状態に保存してあります。何分相当高度な魔法とお聞きしていたので」
「助かった。この部屋か」
シュライネが開けた部屋に入ると、確かに先日来た時と全く変わりのない、複雑怪奇な紋様と呪文が渦巻く、目眩のするような部屋。
「一週間世話してくれてありがとうな、シュライネさん」
「いえ、私も久々のお客人で嬉しかったです」
その言葉に若干の疑問を覚えて振り返ると、そこにシュライネの姿は無い。
代わりにいるのは、蒼い髪の少女。
「よお、一週間ぶり」
手を挙げてそう挨拶すると、アンジェはかなり険しい顔をして、「ねぇ」と声を掛けた。
「誰か私の術式に介入した奴いるでしょ。誰?」
ふむ、少しばかり機嫌が悪いらしい。
「あー、手先も魔法も器用な槌人種が知り合いにいてな」
俺はそう彼女に説明し始めた。
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