大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

北と過去

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『ほー、アイツも色々抱えてんだな』
「みたいだな。で、今度は北へ行けってか」
全く、何故こんなことをせにゃならんのか。
『夜は自由時間なんだろ?なら、ちょっとぐらい息抜きをしとけ』
本当にそれだけの意味なのだろうか。何か裏があるような気がする。まぁ、だとしても全く察せないので、とりあえず言う通りにぶらつく。
「で?北には何があったんだ?」
『んー?んー……何があったっけな』
おい。
『正直言って、俺が知ってる王都って遷都する前のイメージが強いからな。軍部も俺がいたから少し覚えてるだけで』
「うん?セント?」
何それ。字が思い浮かばず、ハテナを飛ばしながら首を傾げる。
『そ、遷都。要は主要な都市が移動する事だ。……あれ、言ってなかったっけ?昔はここに王都は無かったって』
「初耳だ。多分な。じゃあ前の王都はどこにあったんだ?つか、なんで移動させたんだよ」
『もっと南だっけな。あれ、西だっけ?』
「全然覚えてねぇじゃねぇか」
『うっせーな、その辺全部アベルに任せてたから、方角ってモンが全然わかんねぇんだよな、俺』
方角ぐらいは一般常識の範疇だろう。他の亡霊だって教えていそうなものだが……
『で、移動した理由だっけ。ンなもん機人と魔族に目をつけられたからに決まってんだろ』
「そりゃ分かるが……でもハナから三種族の戦争だろ?元から王都を何度も移動させてたのか?」
『いや?そんなこと簡単に出来るかよ。一応元からあった都市に移動した形にはなるが、それだって並大抵の事じゃないしな』
「でも目をつけられたからって……ハナから三種族の戦争だろ?いくら目をつけられたって言っても、今まで全く防衛してなかった訳じゃないだろうし……」
そう言うと、微妙な沈黙が生まれる。
『正直言うと、ある時期まで俺達ヒトってのはガン無視されてたんだよ。それがある作戦をキッカケに、ヒトがちゃんと敵として認識された。結果、想像以上に苛烈な攻撃にヒトは慌てて逃げた。その逃げた先がこの王都さ』
「え?でも《勇者》って魔族とか機人と戦うために生まれたんだろ?」
『そうだ。勿論、ヒトも魔族や機人にちょっかいを出てた。時折《勇者》が生まれ、それなりの打撃を与えもした。けど、それ以上に魔族は機人を、機人は魔族を危険視していた。その結果、ヒトは中途半端な安寧を得、相手と自分との力の差を認識を誤認した。ヒトは無視できない損害を与え、本気で奴らに「ヒトを先に潰さなくてはならない」と思わせてしまった。最終的には、情けない姿で逃げる羽目になったのさ』
「へぇ、でもなんで今の王都は五十年も逃げずに──あぁ」
なるほどね。そういう事か。
「《聖女》、ね……」
『そういう事なんだろうな』
相手の攻めを無視するほどの強固な守り。ヒトの新しい特殊ユニット。
それのお陰で、どうにか拒絶した均衡を保っている訳か。
「ん、ここが関所だな」
『なーんもねぇのな。面白くねぇ』
「面白くねぇ、じゃねぇ。お前のせいで街の外れまで歩かされる俺の身になってみろ」
『じゃあ無視すりゃいいじゃん』
「まぁそうなんだが……」
まぁ、歩き回って昔の話を聞くのも悪かないんだよな。
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