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本編
西学と聖学 終
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剣を振る。
何かにぶつかり、その感覚が返ってくる。
剣を振る。
西学の生徒を斬り、その手応えが返ってくる。
剣を振る。
西学の生徒がつけている、仮面と校章を叩き割り、その感触が知らせている。
まだ行ける、と。
──もっと高みへ。
『四方は敵に囲まれ、その大剣じゃあ満足に剣を振れない。超一級品だが、ここまで密着されると振り抜く前に敵に当たる…正直、失敗だったかもな…』
それでも隙間を縫って飛んでくる魔弾。
密着していても確実に胴へ打ち込まれる打撃。
限りな零に近い距離で振るわれる、刃の短く、しかし鋭いナイフ。
そのどれもが、明らかに仮面と校章を狙っていない。
痛ぶって…殺す気か?
魔弾はほとんど《千変》の欠片で弾くか回避し、打撃は受け流し、ナイフは全て躱す。
「は…ははっ…」
『…今代の?』
「はははははッ!!」
『おい、どうした?』
殺す気…か。
なら──。
「死ぬ気は出来てから来てるんだよなァ!?」
煌覇が撃てないのなら、手動で外せばいい。
俺は鍵を外しにかかる。
剣を振り、周りの生徒を寄せつけないようにしながら。
それでも打撃を撃つ生徒は隙を見つけて接近し、ナイフ使いはそれと連携して迫る。
「『この身にあるは不屈の信念!!』」
それは、絶対に折れない心の誓い。
「『この手にあるはその証!!』」
それは、死ぬ時まで絶対に離さない物への信頼。
「『望むは証の姿なり!!』」
それは、鍵を外す定められた文言。
「『その姿は彼の者の剣、盾である!!』」
ガシャコン、と。
敵を斬る感覚とはまた別の、手に馴染んだ感覚が伝わる。
即座に左手で銀剣の刃の部分を掴んでそのまま横に引き抜き、銀盾に変形させる。
「『彼の者の盾となりて』、起動…」
面積が約二倍に開いたところで、その盾を髪で支える。
「くっ!!」
巨大な盾はそれだけで接近しようとする打撃手の生徒を封じ込めた。
背後からの一撃が無いだけでかなり違うからな。
残るは──。
「お前だ」
ナイフ使いへと接近、黒剣を振りかぶり、鋭く斬りつける。
「ジャザ!!下がれ!!」
──見つけた。
やはり数が多いこっちにいたか。
シャル、どこだ?
『右斜め後ろ。やや小さめの槍兵だ』
俺が探していたのは、さっきから号令を出していた誰か。
そいつを潰せば──この連携に綻びが生まれるのではないか?
斬りつけた黒剣は空を斬ったが、俺の狙いはもはやお前には無い。
「そ、っ、ち、かァァァァァァァ!!」
空を斬った剣を振り抜いた瞬間、そのままシャルが言っていた方向──右斜め後ろに黒剣を投げる。
「──!?くっ!」
しかし、ランサーは即座にそれを弾き、他の生徒の中に紛れてしまう。
仮面が同じ為、どれが司令官か分からない──!!
「いや…ありがとう、レィアさん」
!!
…やっとか。
いつの間にか俺の目の前に、見たことのある背中があった。
「遅かったな…ウィル」
「少し手間取っちゃって…ごめんね。大変だったでしょ?…誰が司令官だった?」
「あぁ。一対十以上だぞ?俺はもう疲れた。あとは任せる」
そう言って、俺は銀盾に黒剣を仕舞って胸元へ入れ、《千変》も片付けて地面にへたりこむ。
魔弾はもう来ないのだから。
「槍兵…ランサーだ」
あぁ畜生、今回だけだ。
次は──次こそはお前の横に立つ。
そして追い抜く。
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
囲いの外からは、《逆鱗》の雄叫びが。
そして、光が輝いた後、音もなく沈んでいく生徒…《雷光》もか。
「わかったよ。──後は任された」
内側と外側から攻められた西学生徒達は、今までの連携は何だったのかと言いたくなるほど簡単に瓦解していった。
恐らく、早々に司令官が潰れたのだろう。
「お疲れ様、レィアさん」
「あぁ、疲れたよ。本当に」
こちら側の勝利を知らせる笛が鳴り、俺はようやく気を抜くことが出来た。
何かにぶつかり、その感覚が返ってくる。
剣を振る。
西学の生徒を斬り、その手応えが返ってくる。
剣を振る。
西学の生徒がつけている、仮面と校章を叩き割り、その感触が知らせている。
まだ行ける、と。
──もっと高みへ。
『四方は敵に囲まれ、その大剣じゃあ満足に剣を振れない。超一級品だが、ここまで密着されると振り抜く前に敵に当たる…正直、失敗だったかもな…』
それでも隙間を縫って飛んでくる魔弾。
密着していても確実に胴へ打ち込まれる打撃。
限りな零に近い距離で振るわれる、刃の短く、しかし鋭いナイフ。
そのどれもが、明らかに仮面と校章を狙っていない。
痛ぶって…殺す気か?
魔弾はほとんど《千変》の欠片で弾くか回避し、打撃は受け流し、ナイフは全て躱す。
「は…ははっ…」
『…今代の?』
「はははははッ!!」
『おい、どうした?』
殺す気…か。
なら──。
「死ぬ気は出来てから来てるんだよなァ!?」
煌覇が撃てないのなら、手動で外せばいい。
俺は鍵を外しにかかる。
剣を振り、周りの生徒を寄せつけないようにしながら。
それでも打撃を撃つ生徒は隙を見つけて接近し、ナイフ使いはそれと連携して迫る。
「『この身にあるは不屈の信念!!』」
それは、絶対に折れない心の誓い。
「『この手にあるはその証!!』」
それは、死ぬ時まで絶対に離さない物への信頼。
「『望むは証の姿なり!!』」
それは、鍵を外す定められた文言。
「『その姿は彼の者の剣、盾である!!』」
ガシャコン、と。
敵を斬る感覚とはまた別の、手に馴染んだ感覚が伝わる。
即座に左手で銀剣の刃の部分を掴んでそのまま横に引き抜き、銀盾に変形させる。
「『彼の者の盾となりて』、起動…」
面積が約二倍に開いたところで、その盾を髪で支える。
「くっ!!」
巨大な盾はそれだけで接近しようとする打撃手の生徒を封じ込めた。
背後からの一撃が無いだけでかなり違うからな。
残るは──。
「お前だ」
ナイフ使いへと接近、黒剣を振りかぶり、鋭く斬りつける。
「ジャザ!!下がれ!!」
──見つけた。
やはり数が多いこっちにいたか。
シャル、どこだ?
『右斜め後ろ。やや小さめの槍兵だ』
俺が探していたのは、さっきから号令を出していた誰か。
そいつを潰せば──この連携に綻びが生まれるのではないか?
斬りつけた黒剣は空を斬ったが、俺の狙いはもはやお前には無い。
「そ、っ、ち、かァァァァァァァ!!」
空を斬った剣を振り抜いた瞬間、そのままシャルが言っていた方向──右斜め後ろに黒剣を投げる。
「──!?くっ!」
しかし、ランサーは即座にそれを弾き、他の生徒の中に紛れてしまう。
仮面が同じ為、どれが司令官か分からない──!!
「いや…ありがとう、レィアさん」
!!
…やっとか。
いつの間にか俺の目の前に、見たことのある背中があった。
「遅かったな…ウィル」
「少し手間取っちゃって…ごめんね。大変だったでしょ?…誰が司令官だった?」
「あぁ。一対十以上だぞ?俺はもう疲れた。あとは任せる」
そう言って、俺は銀盾に黒剣を仕舞って胸元へ入れ、《千変》も片付けて地面にへたりこむ。
魔弾はもう来ないのだから。
「槍兵…ランサーだ」
あぁ畜生、今回だけだ。
次は──次こそはお前の横に立つ。
そして追い抜く。
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
囲いの外からは、《逆鱗》の雄叫びが。
そして、光が輝いた後、音もなく沈んでいく生徒…《雷光》もか。
「わかったよ。──後は任された」
内側と外側から攻められた西学生徒達は、今までの連携は何だったのかと言いたくなるほど簡単に瓦解していった。
恐らく、早々に司令官が潰れたのだろう。
「お疲れ様、レィアさん」
「あぁ、疲れたよ。本当に」
こちら側の勝利を知らせる笛が鳴り、俺はようやく気を抜くことが出来た。
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