大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

熱と仕切り部屋

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グローゾフの炎に入ってすぐに俺は後悔した。
流れる空気が目を、肌を焼く。鼻から入った空気が鼻腔を、喉を、肺を焼く。
唇はすぐに乾いてひび割れ、汗は流れるより先に干上がる。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇ。外で待ってたいんだが」
と言うと、ベルは少し考えて首を横に振った。
「すまん、今ちょっとそこまで手ェ離せる状態じゃないんや。せめてあと二つぐらい部屋行ってくれんと」
それはつまり、これのさらに奥、心炎に近い所ということだろう。どう考えてもここより暑い……いや、熱いのは間違いない。
せめてもう少し短く髪を縛るかと思って髪飾りに手をやる。
「熱っつ!?」
思わずそう叫んで髪飾りを落とす。
「……当たり前やけど、金属に触れるなら手袋しぃや。火傷すんで」
「当たり前なのか!?金属に素手で触れると焼肉が出来るってのが当たり前なのか!?」
「まだミディアムより手前やろ。我慢しぃや」
つってもまぁ、ある程度は予測出来ていた話ではあろう。非があるのは俺か。
幸いなことに、咄嗟に手を離したからか、火傷によるダメージはほとんど無い。痛いのは痛いが、そこまで問題は無いだろう。
「ほら、次の部屋行くで」
「わぁったよ」
髪で髪飾りを持ちつつ、さらにもうひとつ扉をくぐる。
そして、心構えはしていたが、当然のようにさらに上がる室温。
「……ゴーグルか何か無い?目が開けらんねぇぐらい熱いんだけど」
「あるけど、目元に布当てんと火傷するで。布も定期的に変えんと焼けるし」
どんな地獄だここ。ここの死因は普通に熱さにやられて死んだんじゃねぇのか?
『なぁ、レィア』
「なんだ?」
「なんや?」
「あ、いや、勘違いだった。気にしないでくれ」
「ん、そうか、そしたら次の部屋もうすぐやし、入ったらそこで待っとってや」
「了解」
小さく小さく「話は後で」とシャルに言って、奥の部屋へ。
「したらここで待っててや。すぐ取ってくる」
俺にもう一つ灯りを渡し、ベルが先へ進む。
ぶっちゃけ見えるから灯り大丈夫なんだけどな。と思いつつ、その姿が彼女の姿が見えなくなってから「なんだ?」と改めて聞く。
『なんか嫌な感じしねぇ?』
なんだその漠然としたセリフ。
「《勇者》の気配なら遠いからまだ大丈夫だし、脱水症状的な意味合いなら少しヤバいかもな。他は……いや、すまん、分からん」
文字通りの意味だが、ここの空気が悪い。暑すぎて感覚と判断が鈍る。次来る事は……ないだろうが、もしあるなら水を持ってこよう。
『そうか、なら俺の勘違いかもしれんな……』
「だと思っとこうぜ。正直な話、ここで何か起きても俺にゃどうしようもねぇ」
熱すぎて剣が握れない。
熱すぎて血が蒸発してしまう。
そう思ったところで、そういや全部金属のマキナの何をどう調整するのだろうかと、ふと思った。
まさかここでマキナを着ろという訳ではあるまい。熱々の鉄板を全身に貼り付けるのと同義だし。
とりあえず、俺が干物になる前にベルが戻ってくることを祈ろうか。
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