大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

朝食と試作

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「いくらか地下は暖かいとはいえ、流石に汗だくで寝れば風邪を引いてもおかしくないんじゃぞ?体調管理ぐらいはしっかりしておけ?」
「わかってるよ。こっちも時間をあまり無駄にはしたくないしな」
昨日のように修練所で一晩明かし、適当に寝てヴァルクスが俺を起こす。そして昨日行ったように、また同じ店で朝食を摂る。
今日はベルが先に来ており、不機嫌そうな顔をしながら、頬杖をついて待っていた。
「やっと来たんか。そっちの進捗は?」
「始眼の継続時間が三秒ぐらい伸びた。お前は?」
「は?三秒ぽっちか?まぁええわ。ほれ」
と言って渡されたのは、ベルに預けたマキナの破片……じゃねぇなこれ。マキナによく似た、何かの金属片。
直径五センチの球を真上から押し潰して出来たようなそれは、一目見て何かの魔導具であると分かるような魔力を持っていた。
「なんだこれ」
「お望みの眼ェや。とりあえず作った」
「これが?」
眼球と言うには平た過ぎるし、瞳も無い。ただの金属の欠片。これでどうやって物を見るというのか。
「それをアンタの空いた目ん所に入れればええわ。中で膨らんで本物の目みたいになる。ただ、まだ試作品やし視界悪いわ」
ほー、と言いつつ、つまんで目に入れようとして、少し躊躇う。
「なんや」
「いや、なんつーか。自分で自分の目を潰すみたいな感じになってちょっと怖いんだよな」
「何言っとんねん。アンタそっちの目ぇん所カラやろ」
何が怖いって、よく見えてないのが怖い。こんなモン入れて大丈夫なんだよな?
「しゃーない、ウチが入れて……うわグロ。やっぱ無理」
結局ヴァルクスに入れてもらった。
すると、眼窩の奥をなにか冷たいものがひたひたと触れるような感覚がして、急に光が流れ込んできた。
「どうじゃ、見えるかの?」
「お、おぉ?おぉ……」
「なんやその反応」
「いや、確かに見えるんだが……なんか視界にブレっつーかズレが……」
と言いかけると、速攻でベルが舌打ちをする。
「やっぱか。アカンな」
「どういう事だ?」
「試作品言うたやろ?未完成なんやそれ。アンタが何か見ようとしたらそれと同じ方向くようになってるんやけど、連動速度が遅いんやって」
「どのぐらいだ」
「コンマ二秒ぐらいやろな。流石に使いもんにならんし、一回回収するわ。片目でも生活には困っとらんみたいやし、完成品をマキナと一緒に返すわ」
と言ってベルが顔に手を伸ばす。
それをひょいと避け、「ちょい待った」と静止をかける。
「……なんや」
「これはこれで一回持っときたい。ちょいと試したい事もあるしな」
「……未完成のクソみたいな作品を周りのヤツらに晒したくないんやけど」
「だったら修行の時だけに使う。それならいいだろ?」
と言うと、ベルは悩みながらも渋々頷いた。
「で、試したい事って何なん?」
「大したことじゃない。義眼をはめても始眼に影響があるかどうかってそんだけだよ」
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