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本編
整理と精神統一
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それから更に二、三日過ぎて、ようやくアーネの体調が良くなって来た。身体の痛みもかなり引いて来たようで、自力で立って歩けるようにもなった。
で、俺の方はスキルを使わなくても普通に出歩けるようになったし、先生から運動の許可も出た。右目は見えなくなってしまったが、その辺はこの数日で慣れた。大体はシャルもいるし、一時は向こうで隻眼状態で戦闘すらこなしたのだ。日常生活ぐらい訳ない。
そんな訳で保健室から解放され、自室に戻る。アーネも一緒に自室に戻ろうとしたが、流石にもう少し様子を見るからと先生に止められていた。とはいえ、あの調子ならもう数日で戻って来れるだろう。
ちなみにだが、まだアーネに彼女の母の名前について聞いていない。単純に聞くタイミングを逃した。
まぁ、彼女が部屋に帰って来てからでもいいだろう。
一週間ちょっとぶりの自室。そのベッドに倒れ込み、顔を埋めながら息を吸うと、幾分薄まったとは言え、まだ俺とアーネの匂いが混ざったいつもの匂いがした。
「あー…」
色々あった。
空中都市を墜した。三大魔侯が二体死んだ。陽光楽園を壊滅状態まで持っていった。片目が潰れた。《腐死者》は生き残った。《魔王》が発動した。奴らには歯が立たなかった。《英雄》に助けられた。その弟子になる約束をした。任務失敗の罰を受けることになった。アーネの秘密に憶測を立てた。
そして俺は結局、弱かった。
絶対的、普遍的な一つの基準としての強弱というのは非常に難しいが、何かを対象として比較した時の強弱程分かりやすいものも無い。
そしてあの場で俺は明らかに弱者で、奴らは強者だった。
それ以上でもそれ以下でもそれ以外の何者でもない。
あれに俺は勝てるのか?
《腐死者》の力の底は見えず、《魔王》に至っては手加減した上で本調子ではなかった様子。
もしも十全に準備が整った状態で《腐死者》か《魔王》と当たっていたら。当然一度はそう考えた。
もしそうなら、きっと《腐死者》は倒せた。それを理解していた──あるいは、その可能性を視野に入れていたからこその塔での敵配置だろう。そういう意味では、俺達に勝ち目は無かった。
たかがヒト、いかに特殊ユニットであるとはいえ、ベースがヒトの《勇者》。そうタカをくくらず、不可避の戦闘を押し付けた。《腐死者》に油断という文字はなく、確実に俺達の力を削いだ。
ならどうするか。
もっと強くなるしかない。
比較の強弱ではなく、絶対的、普遍的な『強い』へ。
全てを投げ打ってでもその強さの頂へ手を伸ばす。この身を研ぎ上げ、ただ一振の剣とする。魔剣、聖剣、神剣をも超える《勇の刃》に。
「……それがモノとしての…って事なんだろうな」
たとえ腕を捥がれても。
たとえ瞳を潰されても。
たとえ足を絶たれても。
たとえ喉を絞められても。
絶対に殺す。そう在れる事のなんと楽な事か。
でも。
その喉で言葉を交わしたい。
その足で彼女に歩み寄りたい。
その瞳で彼女を見つめたい。
その腕で彼女を抱き締めたい。
生きて、ヒトとしてその場にいたいのだ。
俺はあくまで《勇気ある者》として在りたいのだ。
「強くなりてぇな。強くなるために」
自分でそう言ってふっ、と笑う。
「強くなるか。俺達の為に」
もう一度深呼吸をして、ベッドから立ち上がる。
そして部屋の扉まで一直線に歩き、ガチャリと扉を開ける。
「!」
「よう。何用だ?」
「あ、いや、その」
扉の前にいたのはいかにもどん臭そうな男子。どっかで見たことあるような無いような……あぁ、もしかして。
「生徒会?」
「あ、はい。その、学校長がお呼びです」
「……あぁ。わかった。すぐ行く」
そうか。俺の処遇が決まったか。
で、俺の方はスキルを使わなくても普通に出歩けるようになったし、先生から運動の許可も出た。右目は見えなくなってしまったが、その辺はこの数日で慣れた。大体はシャルもいるし、一時は向こうで隻眼状態で戦闘すらこなしたのだ。日常生活ぐらい訳ない。
そんな訳で保健室から解放され、自室に戻る。アーネも一緒に自室に戻ろうとしたが、流石にもう少し様子を見るからと先生に止められていた。とはいえ、あの調子ならもう数日で戻って来れるだろう。
ちなみにだが、まだアーネに彼女の母の名前について聞いていない。単純に聞くタイミングを逃した。
まぁ、彼女が部屋に帰って来てからでもいいだろう。
一週間ちょっとぶりの自室。そのベッドに倒れ込み、顔を埋めながら息を吸うと、幾分薄まったとは言え、まだ俺とアーネの匂いが混ざったいつもの匂いがした。
「あー…」
色々あった。
空中都市を墜した。三大魔侯が二体死んだ。陽光楽園を壊滅状態まで持っていった。片目が潰れた。《腐死者》は生き残った。《魔王》が発動した。奴らには歯が立たなかった。《英雄》に助けられた。その弟子になる約束をした。任務失敗の罰を受けることになった。アーネの秘密に憶測を立てた。
そして俺は結局、弱かった。
絶対的、普遍的な一つの基準としての強弱というのは非常に難しいが、何かを対象として比較した時の強弱程分かりやすいものも無い。
そしてあの場で俺は明らかに弱者で、奴らは強者だった。
それ以上でもそれ以下でもそれ以外の何者でもない。
あれに俺は勝てるのか?
《腐死者》の力の底は見えず、《魔王》に至っては手加減した上で本調子ではなかった様子。
もしも十全に準備が整った状態で《腐死者》か《魔王》と当たっていたら。当然一度はそう考えた。
もしそうなら、きっと《腐死者》は倒せた。それを理解していた──あるいは、その可能性を視野に入れていたからこその塔での敵配置だろう。そういう意味では、俺達に勝ち目は無かった。
たかがヒト、いかに特殊ユニットであるとはいえ、ベースがヒトの《勇者》。そうタカをくくらず、不可避の戦闘を押し付けた。《腐死者》に油断という文字はなく、確実に俺達の力を削いだ。
ならどうするか。
もっと強くなるしかない。
比較の強弱ではなく、絶対的、普遍的な『強い』へ。
全てを投げ打ってでもその強さの頂へ手を伸ばす。この身を研ぎ上げ、ただ一振の剣とする。魔剣、聖剣、神剣をも超える《勇の刃》に。
「……それがモノとしての…って事なんだろうな」
たとえ腕を捥がれても。
たとえ瞳を潰されても。
たとえ足を絶たれても。
たとえ喉を絞められても。
絶対に殺す。そう在れる事のなんと楽な事か。
でも。
その喉で言葉を交わしたい。
その足で彼女に歩み寄りたい。
その瞳で彼女を見つめたい。
その腕で彼女を抱き締めたい。
生きて、ヒトとしてその場にいたいのだ。
俺はあくまで《勇気ある者》として在りたいのだ。
「強くなりてぇな。強くなるために」
自分でそう言ってふっ、と笑う。
「強くなるか。俺達の為に」
もう一度深呼吸をして、ベッドから立ち上がる。
そして部屋の扉まで一直線に歩き、ガチャリと扉を開ける。
「!」
「よう。何用だ?」
「あ、いや、その」
扉の前にいたのはいかにもどん臭そうな男子。どっかで見たことあるような無いような……あぁ、もしかして。
「生徒会?」
「あ、はい。その、学校長がお呼びです」
「……あぁ。わかった。すぐ行く」
そうか。俺の処遇が決まったか。
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