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本編
交戦と混戦4
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今俺に分かっている情報は少ない。そして時間も無い。
辛うじて分かっている事は、西学は仲間、魔族は敵、半魔は……どうだ、少なくとも魔族と敵対しているらしい。
ちら、と視線を横にやると、少し離れた位置でディエルトが腕組みをして、指でトントンとリズムを取りながら、女半魔を眺めている。心なしか口元には笑みすら浮かんでいるようだ。
一方、魔族側こと《腐死者》は、女半魔と至近距離で激しい攻防を繰り広げている。
だがもう一人のフードの魔族は何もせず、ただ突っ立っているだけ。
何も言わず、何もせず。ただ大きな花の蕾のすぐ側で微動だにしない。
「あの花を斬りゃいいんだな?」
確認すると、《白虎》が頷いた。
そりゃそうだろう。あの中から、五感が狂うほど強く危険信号が放たれている。
一時は弱まっていたものの、時が経つにつれて回復してきたのだろう。溢れんばかりの魔力が、生命力が。いや、もっともっと単純な『力』が集まってきている。
あの花が開けば《魔王》が現れ、辛うじて保たれているこの均衡が壊される。そう確信する。
「オーケー。お前ら、ここに来るまでで大分疲れたろ。アーネを守る事だけに注力してくれ」
「はぁ?アンタ何言ってんの?私らもまだまだ闘える──」
「そりゃ知ってる。けど、それを踏まえた上で言ってんだ。ちょいと下がっててくれ」
「相手はただの魔族じゃ無いのよ?」
「知ってる。だから邪魔になるんだよ」
「……ふざけてんの?私らが足手まといだって言うの?」
「ンなの一言も言ってねぇだろ。その場しのぎの連携は、穴が目立つからやりたくねぇんだよ」
くいくい、と指で合図して《勇者》をこちらに寄らせ、貸していたマキナを返せと催促する。
知らない奴が見れば、ゴミにしか見えないような破片を回収し、それを軽く放り投げ、落ちてくるそれを銀剣の柄頭で潰すように叩く。
すると、銀剣の柄頭同士がくっつき、一本の双刃になる。
「けどまぁその上で、援護出来たらしてくれ」
くるくると銀双刃を回しながらそう言い、《勇者》の方を向く。
「共闘」
「こいつらと?」
「魔族以外と」
「正気か?」
「冗句は言わん」
《勇者》が何か言いかけ、口を閉じ、もう一度口を開いて、さらに閉じた。
なんとか言ったのはたった一言。
「背を預ける」
「任された」
そう言うと、《勇者》はポケットから何か小さい物を俺に放り投げた。
反射的に髪で掴むと……宝石だろうか。ざっと一センチほどの赤い、鮮やかなそれは、元は楕円に近い形をしていたのだろうが、真ん中から綺麗に真っ二つに斬られていた。
「持ってろ。無くすなよ」
「分かった」「ちょっと待──」
俺がそう言った瞬間、《勇者》が駆け出した。
一瞬だけ《白虎》の静止を聞くか迷ったが、既に状況は動き始めている。
一拍遅れて俺が走り、《勇者》の後を追う。
「《──来たれ、塵芥に帰す濁流》」
《腐死者》が何かの詠唱を完成させ、発動。
「《デッド・スパイラル》」
コン、と一度、杖で床を叩いた。
その瞬間、丸い拳大の何かが《腐死者》の周りをふわふわと浮き始めた。
『ッ!?避けろッ!』
それを見たシャルが声を上げる。
だが。
「ぁ?」
何かが浮いたと視認し、シャルの声を聞いた次の瞬間、俺の目の前に、それが既に来ていた。
辛うじて分かっている事は、西学は仲間、魔族は敵、半魔は……どうだ、少なくとも魔族と敵対しているらしい。
ちら、と視線を横にやると、少し離れた位置でディエルトが腕組みをして、指でトントンとリズムを取りながら、女半魔を眺めている。心なしか口元には笑みすら浮かんでいるようだ。
一方、魔族側こと《腐死者》は、女半魔と至近距離で激しい攻防を繰り広げている。
だがもう一人のフードの魔族は何もせず、ただ突っ立っているだけ。
何も言わず、何もせず。ただ大きな花の蕾のすぐ側で微動だにしない。
「あの花を斬りゃいいんだな?」
確認すると、《白虎》が頷いた。
そりゃそうだろう。あの中から、五感が狂うほど強く危険信号が放たれている。
一時は弱まっていたものの、時が経つにつれて回復してきたのだろう。溢れんばかりの魔力が、生命力が。いや、もっともっと単純な『力』が集まってきている。
あの花が開けば《魔王》が現れ、辛うじて保たれているこの均衡が壊される。そう確信する。
「オーケー。お前ら、ここに来るまでで大分疲れたろ。アーネを守る事だけに注力してくれ」
「はぁ?アンタ何言ってんの?私らもまだまだ闘える──」
「そりゃ知ってる。けど、それを踏まえた上で言ってんだ。ちょいと下がっててくれ」
「相手はただの魔族じゃ無いのよ?」
「知ってる。だから邪魔になるんだよ」
「……ふざけてんの?私らが足手まといだって言うの?」
「ンなの一言も言ってねぇだろ。その場しのぎの連携は、穴が目立つからやりたくねぇんだよ」
くいくい、と指で合図して《勇者》をこちらに寄らせ、貸していたマキナを返せと催促する。
知らない奴が見れば、ゴミにしか見えないような破片を回収し、それを軽く放り投げ、落ちてくるそれを銀剣の柄頭で潰すように叩く。
すると、銀剣の柄頭同士がくっつき、一本の双刃になる。
「けどまぁその上で、援護出来たらしてくれ」
くるくると銀双刃を回しながらそう言い、《勇者》の方を向く。
「共闘」
「こいつらと?」
「魔族以外と」
「正気か?」
「冗句は言わん」
《勇者》が何か言いかけ、口を閉じ、もう一度口を開いて、さらに閉じた。
なんとか言ったのはたった一言。
「背を預ける」
「任された」
そう言うと、《勇者》はポケットから何か小さい物を俺に放り投げた。
反射的に髪で掴むと……宝石だろうか。ざっと一センチほどの赤い、鮮やかなそれは、元は楕円に近い形をしていたのだろうが、真ん中から綺麗に真っ二つに斬られていた。
「持ってろ。無くすなよ」
「分かった」「ちょっと待──」
俺がそう言った瞬間、《勇者》が駆け出した。
一瞬だけ《白虎》の静止を聞くか迷ったが、既に状況は動き始めている。
一拍遅れて俺が走り、《勇者》の後を追う。
「《──来たれ、塵芥に帰す濁流》」
《腐死者》が何かの詠唱を完成させ、発動。
「《デッド・スパイラル》」
コン、と一度、杖で床を叩いた。
その瞬間、丸い拳大の何かが《腐死者》の周りをふわふわと浮き始めた。
『ッ!?避けろッ!』
それを見たシャルが声を上げる。
だが。
「ぁ?」
何かが浮いたと視認し、シャルの声を聞いた次の瞬間、俺の目の前に、それが既に来ていた。
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