大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

帰りのアテと体調

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「三日間…か」
『三日で身体を作り直すぅ?無理だろ』
だよなぁ…。
ようやく起きやがったシャルと話しながら、しかし行き着く結末は『無理』というオチ。
「せめて森ならな…」
『森?どこのだよ』
「紅の森とかっていうトコ。昼夜問わず普通に魔獣が進行してきてた」
『人外魔境じゃねぇか』
「俺の出身地だけどな。…言わなかったっけ?」
『…そういや聞いたことがあるような無いような…』
まぁいいか。
今、部屋には俺だけしかいない。
父親さんもモーリスさんもおらず、メイドさんやら執事さんたちもいないらしく、気配すらない。
ベルは一応置いたままなので、呼べばすぐに飛んでくるのだろうが、意味も無く呼ぶ必要はないだろう。
『…ん?メッセージで片道三日?それならもっと時間あるだろ』
「あ?」
『普通に学校から迎えを来させるんだろ?なら、メッセージが着いてからもう何日かかかって迎えが来るだろ』
…あー。
こいつ、今さっき起きたから頭回ってねぇな?
『生憎、俺達《亡霊》には寝ぼけるなんて感覚はないぞ』
「ヒント、プクナイム」
『うん?……ダメだ、ギブ』
「はえぇよ」
考えてねぇだろ。
「半日で飛んできたドラゴン便があっただろうが」
『ドラゴン便って…あぁ、あの青い…』
「そういうこと。多分、あの変態ストーカーは対立してる学校長殿にちゃんと目なり耳なり仕込んでるだろうし、実際それはプクナイムの時にほぼ実証されたしな。流石、大貴族殿の御曹子ってのはやることなす事がキッチリかっちり細かく詰めてるんだろうな」
『その癖、お前から剣を奪おうとした時は計画性もクソも無かったな』
「そりゃ《逆鱗》だからな。触れちゃならん所を触れば見境ないだろうよ」
さて、喋っていても身体は元に戻らない。
帰りの心配はほぼ無くなったので、身体の諸々をチェックしつつ、服も着替える。
部屋に置いてあった大きな鏡の前で上半身裸となり、身体の関節が無理なく動く範囲を確認する為、身体を捻ったり伸ばしたりと様々な動きをしてみる。
『身体が強ばってんなぁ…』
「これは…不味いな」
場所にもよるが、全体的に二割から三割ほど可動範囲が狭くなっている気がする。
しかも、たったこれだけで身体に薄らとまとわりつく疲労感。
筋力の衰えも無視出来ない。
こんな状態なのに、いつもの感覚で剣を振ろうものなら、その狂いが大きすぎて目を回すぞ。
「…三日で筋力を増しながら柔軟性を伸ばしつつ、その上で戦闘のカン的なものを補う方法ってある?」
『ない。筋力を増せば柔軟性が失われるし、柔軟性を伸ばしていれば筋力が充分に戻らない。カンに至っては実戦経験だからな。今そんなことすれば死ぬぞ』
デスヨネー。
「………はぁ」
ひとまず俺は部屋から出、髪の中にある残金を確認しつつ歩き始める。
さて、目的地まで体力が持つかね?
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