大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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外伝

初陣の話2

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剣で戦うヒトと、魔法を使う魔族。
弓など、遠距離攻撃で仕留める者がいない訳では無いが…そのほとんどが
強化魔法…それが魔族の持つ、特殊な魔法だ。
効果は極めて単純、身体能力の向上だ。
ただ、知覚範囲の拡大、筋力の増大、反応速度の向上など、効果は多岐に渡り、遠距離から弓を射っても、それが当たる前に避けられる。
だが──ここで疑問が生じる。
──弓より遅い剣が当たるのか?
答えは単純。

しかし。
黒鎧部隊の面々はそれを当ててみせる。
どころか。
手を刎ね、脚を断ち、首を落とす。
それは特殊な訓練の賜物──だけではない。
彼等が着込む、名前の由来の一部でもある黒鎧。
その随所に、特殊なギミックが搭載されているのだ。
仕組みは簡単、身体に巡っている魔力、それを強制的に吸い、疑似的に魔族の強化魔法を再現するという特殊な物だ。
それによって彼等は辛うじて魔族と同じ台に立つことが出来る──
──のだが。
その黒鎧部隊において、たった一人。
燃える赤の髪をした少女は、その鎧を拒否した。
──重い。邪魔。
初めは誰もが耳を疑った。むしろ、力が湧いてくるはずだった。
しかし、彼女がその鎧を着込むと、確かに動きが悪くなっていた。どういう訳か、鎧は彼女からは魔力を吸い上げ、疑似強化魔法を作動させていなかった。
最初は鎧の誤作動かと思われたが、そういう訳でもないらしい。
これでは使い物にならない、そう彼女は言われ、周りにも笑われた。
しかし、彼女は笑い返した。
──じゃあ、お前らが黒鎧ソレ、着ろよ。俺は生身でやってやる。何なら、武器も捨ててやるよ。
再びその場の全員が耳を疑った。
彼女はシャツとパンツ一つだけとなり、
──どうした?かかって来いよ。
そう言って挑発する彼女を、全力以上の力で叩き伏せることが出来ると思った一部の者は、嫌々渋々仕方なく、と言ったふりをして彼女に剣を、斧を、あらゆる武器を振るった。
だと言うのに。
その場の全員の予想を裏切り、彼女はそれらを叩き伏してみせた。
それも無傷で。
それを可能にしてみせたのが。
「──なるほどね」
赤い目を、更に紅く、朱く、あかくした彼女が、地面に転がる支隊を眺めながら、少女が呟く。
屋根の上に登って辺りを見渡しながら、彼女が呟く。
やはり武装は最小限であり足、脛、腰、手、胸、肩ぐらいにしか鎧──というよりもはや鉄片──を纏っていない。
これが。
「これぐらいなら、まだ余裕だね」
この時代の、勇者。
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