大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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外伝

任務の内容

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半年間に及ぶ、過酷と言うのも生ぬるいような訓練を経、彼女は見事な戦士になっていった。
いや、正確には違う。
彼女は生まれつきの戦士だった。
戦士としてはまだ荒削りだった剥き出しの刃を、この半年でより鋭く刃を磨き、研ぎ澄まし、あらゆるものを切り裂ける剣へと昇華させていった。
陰湿な嫌がらせも、堂々とした敵意も、過酷な訓練も乗り越え、鍛え上げられた彼女が初陣を飾ったのは──王都から見て南にある、デリチン広原。
そこに魔族の村があるので、それを潰せという内容の任務だった。
緑鞭りょくべん部隊の情報によると、魔族の数は二十人前後という、ヒト種であれば鼻で笑えるような人数。
しかし、相手が魔族であると言うのなら、話は全く変わってくる。
一言呟けば草木が燃え、指を一振り振れば大地が干上がる、魔法を扱うことにおいては超一流の超戦闘生物。
機人とヒト種にも魔力があることは確認されているが、魔族ほどに扱える種族は存在せず、魔族と比較すれば機人はもちろん、ヒト種も使いこなせているとは言い難かった。
故に、魔族一人が暴れた結果、村がひとつ潰れるなどは良くある話であり、それが二十人もいると言う話は、軽く軍を動かさざるを得ない程の脅威であった。
だが。
「出向いてもらうのは、新人のお前達十二人と、副隊長である私だけだ」
上司がそう発言し、周りがザワザワどよどよと反応する。
三日後に迫った作戦の概要を伝えると言われて集まった彼女と他の同期に伝えられたのは、およそ不可能と言わざるを得ないような内容だった。
「静かに。これは決定事項であり、変わることは無い。しかし、質問は受け付けよう。何かあるか」
厳つい上官がそう言うと、シン…と一瞬だけ静まり返るが、赤い髪の少女が手を静かに上げる。
「──発言を許可する」
じろりと小さな背を見下ろし、低い声で副隊長が許可を出した。
「はい。何故そんな無謀と言えるような突撃を敢行するのでしょうか。正直、意味がわかりません。勝機はどれほどあるのでしょうか」
少女がそう言うと、副隊長は一瞬だけ思案するように目を閉じ、すぐに開いてその質問に答えを返した。
「他の部隊で、副隊長以上に昇進する際、ほとんどの場合に必須となる条件は何か分かるか?」
「魔族と機人、どちらも単独討伐が可能であること、複数回、一定以上の難易度の任務を遂行する事、他の部下からの信頼が厚い事。この三つの内、二つは最低限クリアしなければならないと聞きました」
「うむ。だが、黒鎧では違う。条件は一つ、それを満たしさえすれば後は問題無い」
視線を少女から離し、全体を見渡した副隊長は、全体に聞こえるようにして続きを話す。
「それは、魔族と機人を単独で複数体同時に討伐出来ることである!!」
「「「──!!」」」
その言葉は、周りの空気が孕んでいた諦めと言う空気を吹き飛ばし、変わって畏怖を帯びさせた。
「そして──故に、お前達は最低限、単独で魔族、あるいは機人を倒せるようになってもらう。今回の任務は任務ではない。半年前にやり残した試験、その最後だと思え」
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