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本編
波動界と剣3
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振り下ろされた拳に、咄嗟に防御を固めるが、一体どれだけの意味があるのか。
歯を食いしばり、両腕は少なくとも持っていかれる。そう覚悟した時にふと気づいた。
ゼクターの視線が、俺ではなくその僅か横を見ていることに。
何故そんな所を今見ているのか。疑問の答えはすぐに出た。
「《フレイム・ショット》」
轟、と。俺の背後から火球が飛び出した。
それ自体の大きさはさほどでもない。目の端に映ったサイズはざっと見て握り拳より大きい程度。俺でも知っているような有名な汎用炎魔法の初歩。
だが、そこに込められた魔力はただの《フレイム・ショット》ではおよそ考えられない量。
魔族であるゼクターまでもが目を見開き、拳の軌道を変更。炎の魔法に全力で叩き込む。
「オォッ!!」
拳から十センチ程離れた位置で火球が何かに衝突。一瞬だけ拮抗するが、すぐに渦に呑まれて消えた。
俺は魔法なんか使えない。そして炎の魔法。
「……アーネ?」
「随分と荒い起こし方ですわね。いくら私でもすぐに目が覚めるような」
そう言って、彼女が身動ぎをするので髪を開く。
「大丈夫…なのか?」
「大丈夫な訳がありませんわ。けれど、寝ている暇も無いですわよね?」
少々ふらつくようで、足取りがやや危なっかしい。しかしそれも最初だけで、すぐにしゃんと立って歩く。
「……お前、ヒトか?」
ゼクターがアーネにそう問いかける。
「それ、重要ですこと?少なくとも魔族では無いですし、あなたの敵である。それだけで充分だと思いますけれど」
そう言って、アーネは指をパチンと鳴らす。
途端に彼女の身体の表面を炎が這い回り、アーネの姿を包み込む。
「アーネ!?」
何が起きたか全く理解出来ない。だが、俺がそう声を上げた時は既に業火に取り込まれ、彼女の姿は全く見えない。
「なるほど…これがそういう訳ですの」
不意に業火の中から声がした。
そして炎が消え、中から何事も無かったようにアーネが姿を現す。
「大体分かりましたわ。これが貴方の力…その一端なんですわね」
「どういう──」
そこまで言って、不意に気づく。
アーネの身体から、薄らと《勇者》と同質の気配がするということに。
「ひとまず安心してくださいまし。魔法は使えますし、目立った不調はありませんわ」
「けどお前──」
「なるほど。そうか、そちらも《勇者》を増やす手段を見つけた、という報告があったのは誤りではなかったようだな」
沈黙を貫いていたゼクターがそう口を開く。
「だが、いくら《勇者》が増えようと俺の魔術をそう易々と貫けると思うなよ」
「あら、《勇者》ですって。貴方とお揃いですわね」
「言ってる場合じゃねぇ、絶対アイツに触れんなよ!!」
言った直後に拳が俺とアーネの間に割って入った。
歯を食いしばり、両腕は少なくとも持っていかれる。そう覚悟した時にふと気づいた。
ゼクターの視線が、俺ではなくその僅か横を見ていることに。
何故そんな所を今見ているのか。疑問の答えはすぐに出た。
「《フレイム・ショット》」
轟、と。俺の背後から火球が飛び出した。
それ自体の大きさはさほどでもない。目の端に映ったサイズはざっと見て握り拳より大きい程度。俺でも知っているような有名な汎用炎魔法の初歩。
だが、そこに込められた魔力はただの《フレイム・ショット》ではおよそ考えられない量。
魔族であるゼクターまでもが目を見開き、拳の軌道を変更。炎の魔法に全力で叩き込む。
「オォッ!!」
拳から十センチ程離れた位置で火球が何かに衝突。一瞬だけ拮抗するが、すぐに渦に呑まれて消えた。
俺は魔法なんか使えない。そして炎の魔法。
「……アーネ?」
「随分と荒い起こし方ですわね。いくら私でもすぐに目が覚めるような」
そう言って、彼女が身動ぎをするので髪を開く。
「大丈夫…なのか?」
「大丈夫な訳がありませんわ。けれど、寝ている暇も無いですわよね?」
少々ふらつくようで、足取りがやや危なっかしい。しかしそれも最初だけで、すぐにしゃんと立って歩く。
「……お前、ヒトか?」
ゼクターがアーネにそう問いかける。
「それ、重要ですこと?少なくとも魔族では無いですし、あなたの敵である。それだけで充分だと思いますけれど」
そう言って、アーネは指をパチンと鳴らす。
途端に彼女の身体の表面を炎が這い回り、アーネの姿を包み込む。
「アーネ!?」
何が起きたか全く理解出来ない。だが、俺がそう声を上げた時は既に業火に取り込まれ、彼女の姿は全く見えない。
「なるほど…これがそういう訳ですの」
不意に業火の中から声がした。
そして炎が消え、中から何事も無かったようにアーネが姿を現す。
「大体分かりましたわ。これが貴方の力…その一端なんですわね」
「どういう──」
そこまで言って、不意に気づく。
アーネの身体から、薄らと《勇者》と同質の気配がするということに。
「ひとまず安心してくださいまし。魔法は使えますし、目立った不調はありませんわ」
「けどお前──」
「なるほど。そうか、そちらも《勇者》を増やす手段を見つけた、という報告があったのは誤りではなかったようだな」
沈黙を貫いていたゼクターがそう口を開く。
「だが、いくら《勇者》が増えようと俺の魔術をそう易々と貫けると思うなよ」
「あら、《勇者》ですって。貴方とお揃いですわね」
「言ってる場合じゃねぇ、絶対アイツに触れんなよ!!」
言った直後に拳が俺とアーネの間に割って入った。
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