大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

肉塊と空中都市5

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流石に過去色んな魔獣やら魔族やらと戦ったが、首が消し飛ばされて生き残ってた奴なんか初めて見た。この調子だと心臓も中央にあるかどうか怪しい。
どう決着をつけるか……そう思っていると、突然狭間の子の首が盛り上がり、一秒と経たず真っ赤な頭が生え直す。姿は変わってもその再生能力は変わらないか。
「…クソッタレ」
「挟み撃ちで」
《勇者》がそう言って駆け出し、同時に俺も銀剣を構えて突っ込む。
俺が正面、《勇者》が背面を取っての同時攻撃。
その時、この姿になって初めて狭間の子が口を開いた。
「……あ、あ──…」
理性の無い咆哮とは全く別の、完全に言葉というものを理解し、分かった上での二文字。
それに込められた意味は感嘆か、それともただ単に声が出たことに対する安堵か、あるいはまた別の意味か。
だがいずれにしろ、こいつに知能があるらしい。それだけの情報で背中の悪寒以上に本能が警鐘を鳴らす。
「ッッ!!」
血を纏った銀剣が、血を纏った長剣が、同時に前と後ろから縦に振られ、防御すらしない敵に叩き込まれる。
瞬間、血が舞う。
ただしそれは狭間の子からではなく、俺と《勇者》の持っていた剣──それに纏わせていた血刃から。
「「!?」」
血が吹き飛ばされ、剣はゴムのような皮膚で勢いを殺され、ロクに斬れない。
「なんだこれッ!?」
咄嗟に剣を後ろから蹴飛ばし、強引に振り抜かせるが、それでようやく浅い傷が入るだけ。《勇者》の方は同じ事をすると剣が耐えられないと判断したのか即座に身を翻して下がる。
そして俺は剣を抜いてすぐに空中で身体を捻って、さらにもう一段蹴りを繰り出し、狭間の子を蹴飛ばして飛びながら後ろに下がる。
すると入れ違いでアーネの炎が剣の形を取って三本、俺のつけた傷に突き刺さる。
狭間の子もこれには流石に顔を顰める。
が、しかし。
「ああああああああああああああ!!」
と叫んだ直後、炎が
そしてそれと同時に、腰から四本の触手がぐんと伸び、俺と《勇者》へ一直線に伸びて突き刺そうとしてくる。
「な…?どうなってんだ!?」
操作はまだ乱雑で狙いもバラバラだが、速度と威力は相当なもの。もしも当たればその周りの肉ごと吹き飛ばされてもおかしくはない。
『わからん。俺が戦ったのは灰色でやたらとすばしっこくて攻撃手段が多彩だった。一秒事に激しくなるから、こんなゆっくりと見てる余裕もなかったし』
個体ごとに傾向が違う?あるいはこれは狭間の子が成ったものとは微妙に違う?
分からない。だがこれは普通の狭間の子ともまた違う、ほぼ完全に未知の敵。
おまけにどうやってか血刃を弾き、アーネの魔法も消した。防御性能は相当に高いらしい。
だが一方で攻撃はさほど激しくなく、比較的対処はしやすい。シャルの言っていた狭間の子とはまるで逆。
しかし──一秒事に激しくなるか。
なら有り得そうなのはどんどん攻撃が苛烈になるか、まだまだ硬くなっていくか。
前者であろうと後者であろうと不味いのは間違いない。特に後者であるなら最終的な未来はなぶり殺し。そして《魔王》に取られて終わりという、最も不味い展開が見える。
そもそも時間が無い上に、時間経過で強くなられるのなら答えはひとつしかない。
「速攻撃破…だな」
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