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本編
肉塊と穴
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メキメキ、みちみち、ぐちりぐちりと。
異音を立てつつ、拳一つ分の穴を通って数メートル級の肉塊が強引に外へと出てくる。
そしてある程度出る度に俺の剣が肉塊を切り裂き、ごろりと地面に転がる。
「おあ、ああおあお、ぉぉぉぁぁあぁああおああおおおぉ…」
「相変わらずのバケモンっぷりだな」
斬った肉片がそう呻くのを見つつ、俺を顔を顰めた。
『…ざっくりとした工程だが、ソーセージとかって確かこんな感じで肉を押し出してあの形作ってんだよな…』
「やめろ。食えなくなる」
あれ好きなんだ。
「しかしどんだけいんだ?無限に出てくる気さえするんだが」
出てきた肉塊を適当なサイズにカットし、それが再結合する前に第五で握り潰して消す。それをかれこれ十回以上繰り返した。
一応は神が由来である《勇者》の力なので、第五である必要は無く、第三などで狭間の子を切り刻んでもそのうち活動は止まるのだが、相手の生命力は非常に──いや、異常に高い。
僅かに生き残っていた肉塊達が再集合されると最も厄介なので、確実に第五を使っているわけだ。
しかしあまりに消費が悪い。効率も悪い。すぐに終わるかと思ったら全く終わる気配がない。
時間も無いし、腹を括るしかないか。
「吶喊する」
『アーネとか呼ばなくていいのか?』
「…マキナ、メッセージと位置だけ飛ばしとけ。先に入る」
『了解しました』
ここに来るまで結構な血の量を使ったが、血海などで誤魔化したりもしているので、マキナの貯蔵は半分以上残ってる。
行くか。
第一血界を発動し、下から上へ押し上がってくる肉塊を、上から下へと押し返し始める。
中がどうなっているかなどはまるで分からないが、どうも下に空間があるらしいので、そこへ直に押し入って殲滅した方が早そうだと思ったのだが…まぁ抵抗されるわな。より一層力強く押し上げてきた。
「むぅ…」
思わずそう呻いて出力を上げる。いや、それでも決定的に威力が足りん。
元々第一血界は魔法を弾き返すという血界。物理的な威力も形状的な理由で一応あるし、普通に殴り殺せもするが、決して高くはない。
ならいっそ、この上から偽銀剣の《煌覇》でも叩き込むか。
そう思った瞬間、シャルが『なぁ』と声をかけてきた。
『なんか地面…盛り上がってね?』
「あ?」
どういう意味だ?そう言う前に意味を理解した。
ギチギチ、めりめり、みしりみしりと肉塊が出てくる力が強すぎるのだろう。
地面が少しずつ押し上げられ、ひび割れ、割れ砕けて来ている。
「あぁ、お、ああおあおあぉ、ぉああおぁ…ああおおお…」
「不味い」
そう言って即座に大跳躍しながら後ろに下がる。
そして俺が地面から足を離したまさにその瞬間、空中都市の地面が耐えきれずに割れた。
「おああ!あぁぉあああ!「おあぉ「ああああおぁぁあああああ!あああぉ「おぁぁあお、あぉぉあああああ、おおおぉ」」」」
「デカっ!?」
サイズはおよそ十数メートル。骨も内臓もない肉だけの異形の化物が、唯一のヒトらしい器官である口を開いて口々に叫び回る。
流石にあのサイズの狭間の子は見たことがない。前に見た山羊みたいな狭間の子よりもデカい。
近くの建物の上に着地し、さてどうするかと考えようとした瞬間。
目も耳も鼻もないのっぺりとした顔──らしき何かが、ふと。
真っ直ぐにこちらを向いた。
「──あ」
直後、凄まじい勢いでこちらへ向かって突進してきた。
異音を立てつつ、拳一つ分の穴を通って数メートル級の肉塊が強引に外へと出てくる。
そしてある程度出る度に俺の剣が肉塊を切り裂き、ごろりと地面に転がる。
「おあ、ああおあお、ぉぉぉぁぁあぁああおああおおおぉ…」
「相変わらずのバケモンっぷりだな」
斬った肉片がそう呻くのを見つつ、俺を顔を顰めた。
『…ざっくりとした工程だが、ソーセージとかって確かこんな感じで肉を押し出してあの形作ってんだよな…』
「やめろ。食えなくなる」
あれ好きなんだ。
「しかしどんだけいんだ?無限に出てくる気さえするんだが」
出てきた肉塊を適当なサイズにカットし、それが再結合する前に第五で握り潰して消す。それをかれこれ十回以上繰り返した。
一応は神が由来である《勇者》の力なので、第五である必要は無く、第三などで狭間の子を切り刻んでもそのうち活動は止まるのだが、相手の生命力は非常に──いや、異常に高い。
僅かに生き残っていた肉塊達が再集合されると最も厄介なので、確実に第五を使っているわけだ。
しかしあまりに消費が悪い。効率も悪い。すぐに終わるかと思ったら全く終わる気配がない。
時間も無いし、腹を括るしかないか。
「吶喊する」
『アーネとか呼ばなくていいのか?』
「…マキナ、メッセージと位置だけ飛ばしとけ。先に入る」
『了解しました』
ここに来るまで結構な血の量を使ったが、血海などで誤魔化したりもしているので、マキナの貯蔵は半分以上残ってる。
行くか。
第一血界を発動し、下から上へ押し上がってくる肉塊を、上から下へと押し返し始める。
中がどうなっているかなどはまるで分からないが、どうも下に空間があるらしいので、そこへ直に押し入って殲滅した方が早そうだと思ったのだが…まぁ抵抗されるわな。より一層力強く押し上げてきた。
「むぅ…」
思わずそう呻いて出力を上げる。いや、それでも決定的に威力が足りん。
元々第一血界は魔法を弾き返すという血界。物理的な威力も形状的な理由で一応あるし、普通に殴り殺せもするが、決して高くはない。
ならいっそ、この上から偽銀剣の《煌覇》でも叩き込むか。
そう思った瞬間、シャルが『なぁ』と声をかけてきた。
『なんか地面…盛り上がってね?』
「あ?」
どういう意味だ?そう言う前に意味を理解した。
ギチギチ、めりめり、みしりみしりと肉塊が出てくる力が強すぎるのだろう。
地面が少しずつ押し上げられ、ひび割れ、割れ砕けて来ている。
「あぁ、お、ああおあおあぉ、ぉああおぁ…ああおおお…」
「不味い」
そう言って即座に大跳躍しながら後ろに下がる。
そして俺が地面から足を離したまさにその瞬間、空中都市の地面が耐えきれずに割れた。
「おああ!あぁぉあああ!「おあぉ「ああああおぁぁあああああ!あああぉ「おぁぁあお、あぉぉあああああ、おおおぉ」」」」
「デカっ!?」
サイズはおよそ十数メートル。骨も内臓もない肉だけの異形の化物が、唯一のヒトらしい器官である口を開いて口々に叫び回る。
流石にあのサイズの狭間の子は見たことがない。前に見た山羊みたいな狭間の子よりもデカい。
近くの建物の上に着地し、さてどうするかと考えようとした瞬間。
目も耳も鼻もないのっぺりとした顔──らしき何かが、ふと。
真っ直ぐにこちらを向いた。
「──あ」
直後、凄まじい勢いでこちらへ向かって突進してきた。
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