大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

炎と義肢3

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魔法が発動した瞬間、クルクルと魔法陣が回って拡張。およそ直径三メートル程の大きさに広がり、そして止まった。
アーネがその中心に立ち、短剣をゆったりと構えながらセラを見つめる。
対するセラも拡張された魔法陣に警戒しつつ、じっとアーネを睨んでいた。
「…自動発動型か?」
《雷光》がちらりと俺を見つつそう聞く。
「知らね。あんなの見たことねぇもん」
アーネとは一年以上同じ班だが、一度としてあんな魔法は見たことは無い。
とはいえ軽く予想はつく。
「今まで班の戦闘で一度も使われなかったって事、今日何人も来てた挑戦者にも一度も使わなかった事、ついでにさっきの発言も含めると」
「近距離専用の魔法か」
例えるなら聖学祭で見せた《炎竜の顎ドラゴ・バイト》のように。
しかしその発言をシャルが否定した。
『ん?あの魔法陣、効果範囲があの円の中しかねぇぞ…?』
「あ…?」
『効果範囲は近距離用なんてもんじゃない。完全にあれは…』
「直径三メートルの円。近距離用よりももっと極端な範囲…なるほど、ありゃ魔法使いの間合いじゃねぇ」
そこまで言って《雷光》も気づく。
「正気か?」
「さぁ、黙って見てりゃ分かんだろ」
セラがついに動いた。
魔法陣に動きがない以上、考えていても仕方がないと判断したか、あるいはアーネをこれ以上休ませるのは良くないと判断したか。
バネは使わず一直線に突撃。アーネも先程の間のうちに魔法の構築を済ませたのか、新しく魔法陣を展開。
自身の周りに二つ魔法陣を置き、そこから雨のような細かい火球を連続で放ち続ける。
「ッ!!」
一発一発は大した威力ではない。圧縮も使われていないただの魔法。
だがそれが火である時点で反射的に誰しも回避するし、防ごうと動きも鈍る。特にセラは顕著だろう。
しかし。
「甘いです!」
義肢の力を最大限活用し、縦横無尽に動いてアーネに動きを読ませない。
「いい方法だ。相手がアーネじゃなけりゃ」
呟いた瞬間、火柱が三本上がった。
「!?」
《雷光》が驚き、咄嗟に顔を防御しようとする程の超火力。それは天井を焼き抜き、この空間の体感温度をぐんと上げる。
「上一級クラスの魔法を三つも同時に!?」
「アーネとセラが斬り合ってた間、何秒あったと思う?十秒もありゃあれぐらい、アーネなら余裕で三つ置けるさ」
後は必要な時に魔力を流して発動させる。
今の魔法はどれもセラに当たらなかったが、当てることが目的ではない。
「この場所は既に罠が複数設置してあるぞ」というアーネの脅し。
確かに縦横無尽に飛び回れば小さな火球を放つ魔法は避けられるだろう。
だがトラップの方を踏めば消し炭になる。
「あ、う…」
それが理解出来た時、取れる選択肢は少なく、幸か不幸かセラにその手段を取るという選択が出来てしまった。
ギッ、と。
踏んでいたステップの向きを真正面のアーネに切り替え、義足の踵に強く重心を乗せる。
「バネ…まぁそうなるよな」
言った瞬間、セラの身体が掻き消える程の加速を得る。
猛然と突き進み、一瞬で間合いを遠距離から近距離、近距離から至近距離へと踏み潰し、セラの間合いへ。
だがそれはアーネによって撃たされたバネだ。
そしてセラもそれは理解している。それでも撃たざるを得なかったバネ。
もしもセラにもう少し余裕があったら気づけていただろう。
足の踏み場が無いほど罠を置ける余裕はないし、かと言ってピンポイントでどこに着地するか、アーネがセラの動きを読んでいるかと聞かれればノーだと言う事に。
つまりあの火柱はブラフ。フェイク。ただのハッタリだと。
あるいは。
そうだと気づいた上で吶喊したのか。
セラが自身の間合いに入った瞬間、ちょうどアーネが敷いた《ストライク・ブレイズ》の上に触れた。
その瞬間、魔法陣がメラリ、と揺らいだ。
「喰らえッ!!」
セラの手には仕込み斧。それを両手で握り、下から上にすくい上げる構え。
「いい動きですわね」
そう言ってアーネが短剣を握り直し、しゃおんと斧を弾いた。
「けれどやっぱり──まだまだ経験が足りませんわね」
しゃおんと鳴らした短剣。その軌跡が空中にピタリと残っている。
赤く熱された鉄のような白橙のそれは、色形は違えど炎を連想させる。
何か不味い。セラと同じ場所ににいれば、誰もがそう思う嫌な光。
それは当たり前のように的中する。
「喰らいなさいな」
短剣の弾く音に一拍ズレて魔法が発動。
白橙の炎痕がセラの身体に刻まれた。
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