大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

移動方法と鷲獅子

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あれから二日経った。その間に軽く用意をまとめ、先生達から予定と段取りを聞いて支度を済ませた。その間ユーリアには会わなかったが、さて何しに学校長の所へ行ったのやら。
それさておき、行きは前に一度送ってもらったことのあるトゥーラ先生。前回は黒龍になって王都から聖学まで三十分で送ってくれたが、アレはどうも身体の負担が大きいらしく、今回は別の変身を利用するらしい。その事をトゥーラはしきりに謝っていた。
黒龍になると早いのだが、こちらの負担も尋常ではないので正直助かる。あと鱗の縁が鋭利過ぎて俺の髪ですら切れたし普通に危ねぇ。鞍とかもないし振り落とされかねん。
「それでは行きますね。多分休憩含めて五時間ぐらいで着きます」
「早いな…」
「ありがとうございます。三番目に早い子なんですけどね」
トゥーラの能力は簡単に言うと、想像した生物になる能力。ただしなれる生物には複数の条件があるらしく、それらを全てクリアしなくてはならないとか。
トゥーラの身体が徐々に変化していく。バキパキと骨が折れるような音も聞こえるが大丈夫だろうか。
『すみません、お待たせしました』
「グリフォンか…しかし黒いとは」
上半身は鷲、下半身は獅子の大きな魔獣。しかしトゥーラが変身したのは通常のグリフォンよりも二回り程大きく、そして全身が真っ黒な個体。
『名前もズバリそのまま、ブラックグリフォンって言うんですよ。通常種のグリフォンより身体が一回り大きくて、魔法に対する耐性が高いのが特徴です。群れのボスを担ったりもする、言わばグリフォンの上位種ですね』
と、先生らしく解説してくれるが、こと魔獣に関しては多分俺の方が詳しい。
「知ってる。筋力量と身体がデカいからそこらのグリフォンよりよっぽど手強い。代わりに燃費がすこぶる悪いから、周りのグリフォンに餌を貢がせることもよくある」
『そうなんですよねぇー…だから悪いんですけど、休憩を多めに挟ませて貰いますね』
「乗せてもらう身だ。文句は言わんさ」
さらに余談だが、このブラックグリフォンが群れではなく単体で生活するようになると、余分な筋肉などが絞られ、ギュッと締まった一回り小さいブラックグリフォンが出来る。
こうなった時のブラックグリフォンの事は別種のブラックゲイルという魔獣として扱われる。言うまでもないだろうが滅茶苦茶強い。
『行きますよ。落っこちないよう気をつけてくださいね』
「善処する」
背に乗ると羽の邪魔になるので、トゥーラの胴体に籠をぶら下げ、そこに入る形になる。
だがこの乗り方だと一つ問題がある。というのも、グリフォンという魔獣の飛ぶ動作の問題だ。
『じゃ、気をつけてください。出ます』
「おう」
グリフォンの身体は大きく、それに比例して羽も大きい。だがそれだけでは獅子の下半身が重すぎて飛ぶには足りない。
しかしグリフォンには魔獣らしい特殊な能力があり、グリフォンの足は空気を踏める。と言ってもほんの少し蹴れる程度で、これだけで飛行するのは不可能。
不完全な羽と不完全な能力。この二つを組み合わせてグリフォンは初めて空を飛ぶ。
そしてその際、すなわち離陸に必須なのが、羽に充分な浮力を与え、速度に勢いをつけるための助走だ。
で、俺は胴に括り付けられた籠に入れられていて、クソご丁寧に籠の底にはタイヤが四つついている。
あとは分かるな?
トゥーラが駆け出し、勢いがつく。当然俺の籠もそれに引っ張られ加速。
グリフォンの助走距離はざっと十メートル。身体が大きいブラックグリフォンだと十五メートル。それがなかったのではないかと錯覚する程一瞬の助走。
『出ます!』
ガクンと視界が揺れ、次の瞬間には聖学が遥か下に見えた。数秒でそれも粒のように消え去り、ただただ荒野が広がるだけとなる。
『大丈夫ですかー?』
「…なんとかな」
これを離陸の度に繰り返すのか。龍の方が幾分マシだったかもしれん。
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