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本編
名持ちと激突 終
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今更言うまでもない話だが。
今回の戦いに関して、ルールが何種類が存在した。
場外となった場合、五秒以内に戻らなくては敗北となる。
フィールドのかなり端の方で闘っていたこと。
煌覇の余波でフィールドと場外の境目が砕け、曖昧になっていたこと。
必死でそれどころでは無かったこと。要因はいくらでも挙げられる。
だが誰がなんと言おうと、明らかに俺の負け。
「そうか」
意外にも、すとん、と答えが落っこちてきた。
なら大人しくスっ込むとしよう。身体も無茶してあちこち痛むし。
「じゃあな。頑張れよ《白虎》。ウチの《雷光》は強いぞ」
マキナを解除し、ヒラヒラと手を振って去ろうとすると、白虎が後ろから俺を呼び止めた。
「この勝負、本来なら君の勝ちだ。最後の君に僕は手も足も出なかった…」
「そんな評価貰えて嬉しいね。無茶した甲斐があったってもんだ」
「だから僕は次の勝負を棄権しようと思う」
「好きにしろよ。俺に言う必要は何処にもないだろ」
だがな、と言って少しだけ後ろを振り返る。
先程とは違うヒトの優しい目。愚直なまでに真っ直ぐな人柄を感じた。
「何がどうあれ、勝ったのはお前だ。だったらあの勝負に勝ってみせた者に相応しいと思わせる勝負をしてもいいと思うぜ」
そう言って、答えも聞かずにフィールドから出る。
「勿体ないことをしたな」
「あぁ。足元にさえ気をつけときゃ勝ってた。だが向こうも俺に勝てた訳じゃないってのは分かってる…おっとと」
ふらりとバランスを崩し、壁に寄りかかる。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。今から医務室向かう。むしろお前の方だ。あれぐらいの敵なら倒せるか?」
「何のことだ?」
「とぼけんな。前の襲撃以来、お前の雷の出力下がってんだろ。それにやたらと疲れやすくなってる」
最初に気づいたのはシャル。
雷に勢いが無いと言い、緋眼でじっくり見てようやくそう言われればと気づいた。
「……いつ気づいた」
「この前聖学でやってた合同訓練の時。技のキレが悪くなってたしな」
「そういう所に気づくのも《器用》の能力なのか?」
「さぁ、どうだろうな。で、行けんのか」
「ここまでお膳立てされて負ける訳にはいかんだろう。任せろ」
「そうか。じゃあ任せた」
そう言って足を医務室の方へと再び向ける。
『体調は』
「最悪。肋二箇所ぐらいザックリ突き刺さってる。あと白虎の雷で全身がなんか色々おかしい」
と言いつつも意識はあるし歩けるし話せる。特別痛覚切ったりとかしてないんだけどな。
「こんちゃーす」
と言いつつ医務室に入ると、昨日とは違う癒し手のヒトがいた。確か昨日西学側の方にいたヒトか。
「おや、君は確か聖学の…もう終わったのかい?」
「あぁ。ちょっと体調悪くてな。ベッド借りていいか?」
「構わないよ。そのままお姉さんが診てやろう」
「あー…いや、ベッドだけでいい。どうせじきに専門医が来てくれる」
「ふむ?どこか身体が弱かったりするのかな?しかし安心したまえ。《癒し手》とは教会が定めた試験を合格した極々一部の者にしか与えられない称号。そこらの医者やヒーラーよりずっと腕はいいよ?というか、これ以上ないぐらい極めたから癒し手になれるんだけどね」
「いや、いい」
再度そう否定しつつベッドに転がると、ちょうど足音が聞こえ始める。
「もう来てくれたらしいしな」
「失礼しますわ!」
そう言って、アーネがノックとほぼ同時に部屋に入ってくる。
「よぉアーネ。悪い、怪我した」
「観てれば充分以上に分かりますわ!とっとと服を脱ぎなさい!」
「はは、悪いな」
アーネがさっとカーテンを閉め、その間にスルスルと服を脱いでいく。さて、今度は全治にどのぐらいかかるかね。
今回の戦いに関して、ルールが何種類が存在した。
場外となった場合、五秒以内に戻らなくては敗北となる。
フィールドのかなり端の方で闘っていたこと。
煌覇の余波でフィールドと場外の境目が砕け、曖昧になっていたこと。
必死でそれどころでは無かったこと。要因はいくらでも挙げられる。
だが誰がなんと言おうと、明らかに俺の負け。
「そうか」
意外にも、すとん、と答えが落っこちてきた。
なら大人しくスっ込むとしよう。身体も無茶してあちこち痛むし。
「じゃあな。頑張れよ《白虎》。ウチの《雷光》は強いぞ」
マキナを解除し、ヒラヒラと手を振って去ろうとすると、白虎が後ろから俺を呼び止めた。
「この勝負、本来なら君の勝ちだ。最後の君に僕は手も足も出なかった…」
「そんな評価貰えて嬉しいね。無茶した甲斐があったってもんだ」
「だから僕は次の勝負を棄権しようと思う」
「好きにしろよ。俺に言う必要は何処にもないだろ」
だがな、と言って少しだけ後ろを振り返る。
先程とは違うヒトの優しい目。愚直なまでに真っ直ぐな人柄を感じた。
「何がどうあれ、勝ったのはお前だ。だったらあの勝負に勝ってみせた者に相応しいと思わせる勝負をしてもいいと思うぜ」
そう言って、答えも聞かずにフィールドから出る。
「勿体ないことをしたな」
「あぁ。足元にさえ気をつけときゃ勝ってた。だが向こうも俺に勝てた訳じゃないってのは分かってる…おっとと」
ふらりとバランスを崩し、壁に寄りかかる。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。今から医務室向かう。むしろお前の方だ。あれぐらいの敵なら倒せるか?」
「何のことだ?」
「とぼけんな。前の襲撃以来、お前の雷の出力下がってんだろ。それにやたらと疲れやすくなってる」
最初に気づいたのはシャル。
雷に勢いが無いと言い、緋眼でじっくり見てようやくそう言われればと気づいた。
「……いつ気づいた」
「この前聖学でやってた合同訓練の時。技のキレが悪くなってたしな」
「そういう所に気づくのも《器用》の能力なのか?」
「さぁ、どうだろうな。で、行けんのか」
「ここまでお膳立てされて負ける訳にはいかんだろう。任せろ」
「そうか。じゃあ任せた」
そう言って足を医務室の方へと再び向ける。
『体調は』
「最悪。肋二箇所ぐらいザックリ突き刺さってる。あと白虎の雷で全身がなんか色々おかしい」
と言いつつも意識はあるし歩けるし話せる。特別痛覚切ったりとかしてないんだけどな。
「こんちゃーす」
と言いつつ医務室に入ると、昨日とは違う癒し手のヒトがいた。確か昨日西学側の方にいたヒトか。
「おや、君は確か聖学の…もう終わったのかい?」
「あぁ。ちょっと体調悪くてな。ベッド借りていいか?」
「構わないよ。そのままお姉さんが診てやろう」
「あー…いや、ベッドだけでいい。どうせじきに専門医が来てくれる」
「ふむ?どこか身体が弱かったりするのかな?しかし安心したまえ。《癒し手》とは教会が定めた試験を合格した極々一部の者にしか与えられない称号。そこらの医者やヒーラーよりずっと腕はいいよ?というか、これ以上ないぐらい極めたから癒し手になれるんだけどね」
「いや、いい」
再度そう否定しつつベッドに転がると、ちょうど足音が聞こえ始める。
「もう来てくれたらしいしな」
「失礼しますわ!」
そう言って、アーネがノックとほぼ同時に部屋に入ってくる。
「よぉアーネ。悪い、怪我した」
「観てれば充分以上に分かりますわ!とっとと服を脱ぎなさい!」
「はは、悪いな」
アーネがさっとカーテンを閉め、その間にスルスルと服を脱いでいく。さて、今度は全治にどのぐらいかかるかね。
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