1,699 / 2,027
本編
名持ちと激突15
しおりを挟む
数度打ち合い、理解した。
この盾なら白虎の爪も牙も受け切れるし、俺の剣なら奴に届く。
それを白虎も理解して、僅かに距離を取って様子見に移った。
俺が攻撃を仕掛けてもいいのだが、それを狙われている気がしたので一旦こちらも様子見。というのも、奴のスキルが未だに分かっていないからだ。
俺の間合いの外であり、あの跳躍を見るに恐らく白虎の間合いの内。俺としては、攻めるならもう少し距離を詰めてから仕掛けたい。
静かな拮抗。互いに次の一手を読み合い、僅かに寄る俺とその分下がる白虎。
しかし、先に仕掛けたのは俺ではなく、様子見を続けていた白虎だった。
獣人種の身体能力を生かし、再度跳躍。そして先程までの重い一撃を重視した攻撃ではなく、手数を重点的にした乱舞。
ヒトならざる膂力故に、本来ならこれをまともに受けることすら困難。その上でヒトとしての技術から死角を意図的に作り、そこから尾による追撃やフェイントも織り交ぜた厄介な攻撃。
剣一本なら防げない。剣二本でも余程の達人でなければ負傷する。剣と盾なら辛うじて防げるだろうが、いずれ押し切られる。
だが、剣二本と大盾という異常とも言えるこのスタンスの俺なら?
攻撃を縫って、逆に一撃入れることも容易い。
「ここッ」
「!」
爪を盾で防ぎ、追撃の尾を左の剣捌き、空いた右の剣で俺を止めようとする、もう片方の爪を弾いて再度左の剣を振るう。
入った。首の横。即死はしないだろうが致命傷は間違いない。
しかし、剣が白虎に触れるか否かという所で突如、身体に電流が走ったような激痛と痺れ。
「ッ、あ!?」
『どうした!?』
全く予想していない不意打ちに動きを止められ、痺れから剣を取り落とす。
「まさか…無意識だったのか」
喋れんのかよ、と言おうとする舌すら引き攣り、その隙に盾ごと思い切りぶん殴られる。辛うじてフィールドから落ちはしないが、ほぼ端まで吹き飛ばされた。
「クッソ!」
やっと動き始めた身体。しかしその身体は先程までとは違い、白虎によって焼かれているのを理解している。
『何が起きた!?』
「雷だ。奴の身体に雷が溜まってる。触れるとこのザマだ」
立ち上がり、こちらへ走ってくる白虎に向けて盾と剣を構える。
『雷…?だが既に何度も触れていただろう』
白虎渾身のタックル。マキナを地面に突き刺し、杭を立てて踏ん張るも、白虎自体の体重ですら恐らく優に百キロを超える。
それが加速をつけて突っ込んで来たのだ。真正面から受ければ、どれだけ踏ん張ろうとヒトの身ではどうしようもない。
それを強引に避ける。盾を僅かに斜めにし、先端を床に突き刺して後ろから全力で押さえる。
ここまでしてなんとか凌ぎ切る。だが。
「くっ、おぉぉ!!」
白虎の雷が俺の盾を通り、鎧を通り、身体を焼く。
マキナに織り込んだ異常に頑丈な髪が大半の雷を受けてるのか、それとも白虎が手加減をしているのか、これが最大出力なのか、いずれにせよなんとか身体が焼けて瀕死とはなっていない。
「クソがッ!」
そう吐き捨ててフィールドの端から抜け出そうとする。
当然白虎はそれを阻止しようと俺に詰める。
今は致命傷とならずとも、こんな雷撃を何度も繰り返せばダメージは蓄積する。俺の身体ももう持たないだろう。
白虎は先程なんと言った?無意識?何が?
雷が発動したのは俺が斬った時と今のタックル。しなかったのはこいつの爪や牙、あと尾を防いでいる時。
俺が攻めた時ではない。可能性として有り得そうなのは──
『白い体毛に触れた時が発動条件か』
あっさりとシャルがそう看破した。
『ってことはもしかしたらあの毛、ただ白いんじゃなくて雷放ってるから白いのか?』
「マジか」
いやでも、一応納得は出来る。爪や牙なら毛には触れていなかったし、尾の攻撃も黒い毛の場所を弾いていたのかもしれない。それなら白虎の発言の意味も分かる。
なら試してみるしかあるまい。
一切の躊躇い無く、一本しかない剣で黒い毛の所を斬る。
雷撃は──ない。
そして代わりに上がるのは血の飛沫。そして白虎の痛そうな悲鳴。
「当たりだ」
この盾なら白虎の爪も牙も受け切れるし、俺の剣なら奴に届く。
それを白虎も理解して、僅かに距離を取って様子見に移った。
俺が攻撃を仕掛けてもいいのだが、それを狙われている気がしたので一旦こちらも様子見。というのも、奴のスキルが未だに分かっていないからだ。
俺の間合いの外であり、あの跳躍を見るに恐らく白虎の間合いの内。俺としては、攻めるならもう少し距離を詰めてから仕掛けたい。
静かな拮抗。互いに次の一手を読み合い、僅かに寄る俺とその分下がる白虎。
しかし、先に仕掛けたのは俺ではなく、様子見を続けていた白虎だった。
獣人種の身体能力を生かし、再度跳躍。そして先程までの重い一撃を重視した攻撃ではなく、手数を重点的にした乱舞。
ヒトならざる膂力故に、本来ならこれをまともに受けることすら困難。その上でヒトとしての技術から死角を意図的に作り、そこから尾による追撃やフェイントも織り交ぜた厄介な攻撃。
剣一本なら防げない。剣二本でも余程の達人でなければ負傷する。剣と盾なら辛うじて防げるだろうが、いずれ押し切られる。
だが、剣二本と大盾という異常とも言えるこのスタンスの俺なら?
攻撃を縫って、逆に一撃入れることも容易い。
「ここッ」
「!」
爪を盾で防ぎ、追撃の尾を左の剣捌き、空いた右の剣で俺を止めようとする、もう片方の爪を弾いて再度左の剣を振るう。
入った。首の横。即死はしないだろうが致命傷は間違いない。
しかし、剣が白虎に触れるか否かという所で突如、身体に電流が走ったような激痛と痺れ。
「ッ、あ!?」
『どうした!?』
全く予想していない不意打ちに動きを止められ、痺れから剣を取り落とす。
「まさか…無意識だったのか」
喋れんのかよ、と言おうとする舌すら引き攣り、その隙に盾ごと思い切りぶん殴られる。辛うじてフィールドから落ちはしないが、ほぼ端まで吹き飛ばされた。
「クッソ!」
やっと動き始めた身体。しかしその身体は先程までとは違い、白虎によって焼かれているのを理解している。
『何が起きた!?』
「雷だ。奴の身体に雷が溜まってる。触れるとこのザマだ」
立ち上がり、こちらへ走ってくる白虎に向けて盾と剣を構える。
『雷…?だが既に何度も触れていただろう』
白虎渾身のタックル。マキナを地面に突き刺し、杭を立てて踏ん張るも、白虎自体の体重ですら恐らく優に百キロを超える。
それが加速をつけて突っ込んで来たのだ。真正面から受ければ、どれだけ踏ん張ろうとヒトの身ではどうしようもない。
それを強引に避ける。盾を僅かに斜めにし、先端を床に突き刺して後ろから全力で押さえる。
ここまでしてなんとか凌ぎ切る。だが。
「くっ、おぉぉ!!」
白虎の雷が俺の盾を通り、鎧を通り、身体を焼く。
マキナに織り込んだ異常に頑丈な髪が大半の雷を受けてるのか、それとも白虎が手加減をしているのか、これが最大出力なのか、いずれにせよなんとか身体が焼けて瀕死とはなっていない。
「クソがッ!」
そう吐き捨ててフィールドの端から抜け出そうとする。
当然白虎はそれを阻止しようと俺に詰める。
今は致命傷とならずとも、こんな雷撃を何度も繰り返せばダメージは蓄積する。俺の身体ももう持たないだろう。
白虎は先程なんと言った?無意識?何が?
雷が発動したのは俺が斬った時と今のタックル。しなかったのはこいつの爪や牙、あと尾を防いでいる時。
俺が攻めた時ではない。可能性として有り得そうなのは──
『白い体毛に触れた時が発動条件か』
あっさりとシャルがそう看破した。
『ってことはもしかしたらあの毛、ただ白いんじゃなくて雷放ってるから白いのか?』
「マジか」
いやでも、一応納得は出来る。爪や牙なら毛には触れていなかったし、尾の攻撃も黒い毛の場所を弾いていたのかもしれない。それなら白虎の発言の意味も分かる。
なら試してみるしかあるまい。
一切の躊躇い無く、一本しかない剣で黒い毛の所を斬る。
雷撃は──ない。
そして代わりに上がるのは血の飛沫。そして白虎の痛そうな悲鳴。
「当たりだ」
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記
スィグトーネ
ファンタジー
ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。
そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。
まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。
全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。
間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。
※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています
※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる