大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

暗がりと神父

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…やけに広い空間に出た。
聖女サマを無理矢理帰らせ、ひとまず神父が出ていった方向から教会の外に出てみると、地面を掘って、その下に強引に取って付けたかのような地下へと続く扉があった。
明らかに怪しいのだが、これ以外に手がかりはないし、何より──
──音が聞こえる。
スキルで超強化した聴覚が、に何かいると、誰かいると、そう言っている。
ここしかない。
意を決して、銀剣片手に突っ込んでみたが、そこにはひたすら何も無い、広い空間が存在するだけだった。
こんな地下空間、こんな規模で都市の下に広がってりゃ、そのまま街が下に轟音とともに落下しそうなんだが…なぜか落ちていない。ついでに言うと、柱の類も一切無い。
明かりも無く、常人ならばただただ闇に放り込まれたと錯覚するような、濃い闇。
光無き闇の中で、ただ一つ道標になり得るのは。
──、──、──、──、
「…聞こえた」
微かな何かの呼吸音。
血呪や金剣がない、ただの疾走ダッシュだが、侮るなかれ。紅の森で鍛えた身体能力は、常人を遥かに超えていると自負している。
たしかに筋力も無ければスタミナもないが──それは学校のアイツらと比べれば。
銀の尾を暗闇の中に残しながら走り、緋眼を持ってして捉えたそこには──。
「よぉ神父。逃げてた間に祈りは済ませたか?」
「…おや、よくもあの人数を凌げましたね」
ぬけぬけとそう言う神父。
「お前、どうせアイツらが勝てると思ってなかっただろ。心にもない事言ってんじゃねぇよ」
「そんなつもりは毛頭ありませんでしたよ?彼らはやってくれると信じていましたし──祈ってもいました」
「祈ってる時点で信じてねぇだろ。それに、逃げる時にお前『時間稼ぎは任せましたよ』っていってたじゃねぇか。明らかに勝つことを考えてねぇだろ」
そう指摘すると、神父は「バレていましたか」とだけ言う。
「──どこから、バレていましたか?」
「お前らの存在は知ってた。けど、どこにいるかとか、どれだけいるかとかは、さっぱり分かってなかったんだよ」
溜め息を吐きながら答える。
どうせ既に見つけたのだ。焦る必要はないし、ここで俺の予想を裏付けられるのなら、それでいい。
「お前らが攫った聖女サマな?アレ、俺が泊まってる家にいたんだよ。で、俺はその聖女サマから護衛を一応仰せつかってた。そん時に、お前らがいるって事も聞いてた。出来ればアンタらを潰したい、とかまぁそんな感じ」
「おや、ではもしあなたがその場にいればこの騒動は?」
「あぁ、無かったかもな。けどまぁ、それを今更いっても仕方ないがな」
一度口を閉じ、もう一度口を開く。
口の中には苦い味が広がっていたが──気にせず続けた。
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