大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

夜と感覚

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地面の代わりに民家の屋根を蹴って進む。
道には大勢の見知らぬ人々が、様々な屋台を訪れ、笑顔になって出てくる。
そんな眩しい光景をちらりと見、街の中心から離れて行く。
走れば十五分、祭りである今日ならその倍程もかかるような距離を、金剣の力と屋根を飛んで歩くという非常識な技を駆使して、僅か五分で目的地にたどり着く。
街の中心から離れた街の外れ。
それなりに民家の明かりがあるかと思っていたが、そんなものはほとんど無かった。
ついさっきまで騒がしかったあそこが、まるで別の世界の知らない国のように感じた。
「……寂しいモンだな」
『まぁ、マトモな奴らは中心に行ってるだろうしな』
誰に言った訳では無い言葉に、シャルが反応した。
軽く肺から息を抜き、一度、ちらりと街の中心に目をやる。
そこだけ昼間のように輝いていて、そこにいる彼らの喧騒がここまで聞こえてきそうだった。
「なぁ、シャル」
『どうした?』
「お前って、さ」
そこで一度口を閉じる。
しかし、心の中で開かれた口は黙っていてくれない。
──人を殺した事、ある?
『あぁ、もちろん』
答えは、一秒と空かずに返ってきた。
『数え切れない魔族を斬って、殴って、殺して来た。それはもちろん、ヒト種を助けるためにだ。けど、数え切れる程度には人も殺してきた』
「……初めてした時の感覚とかって聞いても?」
ゆっくりと目的地に足を向かわせながら聞く。
明かりのほとんど無いこの場所で、明らかに過剰と言える程に煌々と、光が溢れている建物があった。
それを見た瞬間、俺は俺の予想が当たっていた事を確信した。
だから、こんな事を聞いている。
『……………その時あったのは、ひたすら、身を焦がすどころか、魂を溶かすような熱、怒りだった。簡単に言っちまうと、カッとなって殺った、って感じだったな。……皮肉なことに、初めて血界が…血鎖が発動したのはその時だ』
「…相手は?」
ほとんど舗装されてない、砂利だらけの道を歩く。
もとは舗装されていたのだろうが、何らかの理由で砕かれ、砂利に成り果てたような印象を受けた。
『親、だった。俗に言う、育ての親って奴だ。そいつがまた絵に書いたようなクズでな。ある時、心の底から祈っちまったんだよ。あぁ──』
──どうか、こいつらを殺せるなら…。
『なんてことをね』
「そうか、ありがとう」
ザッ、と俺の足が止まる。
目の前には、ちょうど丸一日前に来た教会。
少しだけ、期待していた。
もしかして、俺の予想が外れているのではないか。
しかし、あまりに強い光がそれを否定している。
中からは、誰かが演説でもぶっこいているらしい声が聞こえている。
内容はよく聞こえないが、かなり盛り上がっているらしいな。
──さて。
金剣を今一度強く握り直し、その力で身体を限界まで軽く、同時に重くする。
ずっ、と地面に足が軽く埋まりかける程に加重した俺の身体は鮮やかにひと回転し。
爆音と共にその扉を蹴破った。
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