大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

石と来客

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「壊せる」
ラピュセの質問に対し、俺は即座にそう言った。
「もちろん、ただ壊すだけならな。周りの被害を考えなけりゃどうとでもなる」
一番簡単なのは《音狩り》によって真っ二つという方法。もちろん万全を期す必要があるが、そこまで難しくはあるまい。
血をふんだんに使えるなら、俺と相性の悪い第五血界も視野に入れられるだろう。燃費こそ悪いが、その性能は実質的な体外干渉系血界最強。ただただ相手を限界まで握りつぶすというシンプルなその能力は、血界の力で限界を超え、無くなるまで握りつぶすと言う能力へと変質している。当然あの石も消えるまで握り潰されるだろう。
「本当に?完璧な破壊よ?私達には傷一つ付けられないのに」
「あぁ、出来るだろうさ。あの力でね」
そう言って肩をすくめる。研究者としては研究し尽くしたい対象である一方、万が一取り返しのつかないことになったら破壊できる手段を確保しておきたいのだろうか。
「私としてはどういう方法で処理するのか見てみたいのだけれど」
「トップシークレットだ。それにありゃ俺も出来れば使いたくねぇんだ」
あの血界とは相性がかなり悪い。燃費がズバ抜けて悪いしコントロールも大雑把にしかできず、加減もできない。もちろんこの研究者達に《勇者》のデータを取られたくないというのが大半なのだが、単純にこちらの疲労が半端ではないというのも大きい。
話は終わりか?と言って出ようとしたその時、先に扉が無遠慮に開いた。
「む、珍しく先客がおるのう。それも《緋眼騎士》か」
「《臨界点》?なんでお前がここに」
「何故と言われてものぅ、単にこやつにやれと言われた仕事をやってきただけじゃよ」
入ってきたのはフードの小柄な人影。ノックも無しに入ってきた《臨界点》に対し、イーノとディースは若干眉を顰めつつも何も言わず、ラピュセもまた特にこれと言った反応もない。
「帰ってきたという事は、データが揃ったのかしら?」
「いや分からん。我輩もそれなりに一緒に調べたが、そこらの研究員達と何ら変わらん結果しか見いだせん。精々が寒気のようなものがする程度じゃな」
「寒気?それは魔力の質的な意味で?」
「いや…そうでは無いな。あの石の持つ魔力そのものに反応した訳では無い。そもそも寒気でもない気がする。あれは高揚か?感覚的な話で悪いのう」
「構わないわ。むしろあなたのそう言う所に期待して見てもらったのだから」
「…何の話だ?」
首を突っ込むか突っ込まないか迷っていたが、結局突っ込むことにした。
「ヒトの手に余るような物だから、ヒトじゃない存在にあれがどう見えるか聞いてみただけよ」
「あ?」
ヒトじゃない存在?小首を傾げると、《臨界点》が舌打ちをした。
「まさかお前」
「…勘違いするでない。我輩はヒトじゃよ」
「便利ですね。ある程度は当たってますから嘘じゃありませんし」
ディースがそう呟くと、珍しく感情を露わにして《臨界点》が噛み付いた。
「黙れ。ヒトの器に入っただけの虚しい木偶人形が。今すぐこの研究所ごと全て消し飛ばしてやろうか」
「あなたの魔力量、スキルを鑑みてもそれは不可能と断言します」
「はっ、我輩の本気も観測しきれんかった奴がよくほざくのぅ──試してやろうか?」
「研究所、及び研究員への危害を加えるのであれば応戦しますが──ところで、私に勝てた事はありましたか?」
「二人ともそこまで。いい加減にしないとイーノが怒るわよ」
ラピュセがそう言うと、二人から殺気が嘘のように消えていく。
「「チッ」」
「さてレィア君、一つ私からお願いしたいのだけれど」
「…ん?あぁ、何だ?」
「あの石を私達に預けてくれないかしら」
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