大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔力と魔石

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今更すぎて、疑問に思うのも、語るのも最早笑えるようなそもそもの話なのだが。
そもそも、魔力とは一体何なのか。
世間一般的に魔力とは「生命力と同様に、生命活動において発生する利用可能エネルギーの一種」とされている。
平たく言うなら、「生きているだけで生まれる力(使用可)」という訳だ。
そのため、そこらへんの小動物や植物も一応は魔力を持っている。だが、あまりにもその値が低いのと、身体の中に留めることが出来ずにほとんど体外へ流れ出てしまうので、世間的には持っていないとされている。
また、そう言った本来魔力を持たないものが魔力を持つようになると、魔獣になるという研究結果も出ている。
ちなみに生命力は逆。「魔力と同様に、生命活動において発生する利用不可能エネルギーの一種」とかなんとか定義されていたはずだ。もっとも、その生命力も治癒魔法や復元魔法では利用されるので例外は普通にあるのだが。
では、勇者の視点、言うなればひとつ上の視点から魔力というものを見てみよう。
実をいえば、そもそもこの魔力という物がこの世界の物ではない。
かと言って、この世界に組み込まれていなかった物という訳では無い。
世界オルドの本来知覚出来ない裏側の空間に存在する肉の塊のような姿をした醜い狭間の子。こいつらが無限に放つエネルギーが魔力の正体であり、成されなかった可能性なのだ。
だから俺はあの石が魔力を無限に精製し続ける石だと聞いた時、思わずこう言った。
「おちょくってんのか?俺を」
あの石からは狭間の子特有の悪寒がまるでしなかった。だからただ魔力が馬鹿デカい魔石だと思っていたのだ。
「巫山戯てなんていないわよ。だから逆説的に、あの石は生きてる事になるわね。ましてや一端いっぱしに魔法を使うとなればね」
と言ったのはラピュセ。
「生きて…?」
「そうよ。意思がないから魔力を留めることは出来ないけれど、生み出した魔力を片っ端から使う事ぐらいは出来るみたいね。無詠唱のただの放射に近いけれど。でも、ただの魔石は自分から魔法を放つなんて事しないし出来ないわよね」
そう言われて、初めて会った時のアーネを思い出す。怒りながら魔力をバチバチ鳴らし、ひたすら魔法をぶっぱなす。アレと似たような物か。
「…ん?待て、って事はもしかしてあの石、魔力に属性付与してんのか?」
「やっと気づいたわね。えぇそうよ。あれは複数の属性を持ってる」
魔力というのは本来無色透明で、およそ特徴らしい特徴がない癖のないエネルギーだ。それこそ魔石等は自身で魔力を使わずとも魔力が出せるという点の他に、その癖のない魔力を手軽に扱えるという点にも価値がある。
だが、一方で魔力を魔法に変換して使う際は無色の魔力はほとんど役に立たない。理由は単純で、特徴が無さすぎるが故に魔法が上手く世界に働きかけられないのだ。
魔法とはそもそもが「世界に対して間接的に干渉する技」であり、そのイメージの根幹ともなる属性は重要視される。わかりやすい例を言うと、水の魔力で炎を生み出すのは不可能なのと一緒だ。
そしてその属性の付与、色付けとも呼ばれるそれは、魔力を意図して使うようになったヒトや魔族、ごく一部の魔獣にしか使えないものとされていた。
それをただの石が行っているという事実。
「……何属性扱ってるんだ?」
魔法や魔力については常識程度しか知らない俺ですら声が僅かに震えた。
だからきっと、研究者であった彼女達はもっと驚いたのだろう。あるいは既に驚ききって、もう言葉もない状態だからこそ、ここまで冷静なのか。
「全部よ」
なんでもないようにラピュセがそう言う。
「現状観測されている全ての魔法、特殊な魔力を必要とする魔導具、さらに言えば魔法術式のサポートすらある程度行う。喋りはしないけれど、この石には術式補佐のためのある種の頭脳のようなものさえある。現状、私たちはそう結論付けたわ」
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