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本編
不意打ちと岩
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シャルが警告を発した瞬間、俺の方でも異常が起きていた。
俺の目の前──つまり、地面の方からも何かが飛び出して来た。
「なんっ!?」
それが何かを視認するより先に、後ろに跳ねて避けようとすると、ガクンと膝をつく。同時に、変な負荷がかかって膝が傷んで顔を顰めた。
足が動かない。
まるで、罠にハマってがっちりと固定されたように──
いや、まるで罠ではなく確実にこれは殺すための罠。
「クソッタレが!」
左腰から剣を抜き放ち、地面から出てきた何かを一閃。
そのまま後ろへと身体をひねって黒剣で真後ろを斬り、再度この場からの脱出を図る。
が、後ろを振り返って斬ってから絶句した。
何も無い。何もいない。手応えも当然ない。
じゃあ足はどうなっているのかと見てみると、青白く変色したヒトの指が地面から生え、がっちりと俺の足首を掴んでいるのだ。
「!?」
『上!!』
そこでようやく真上を見た。
見えたのは、視界いっぱいに広がる岩。
一メートルと空いていない空間、固定された足。回避は不可能。
しかし。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
この体勢で強引に構えのようなものをとる。
既に風化しはじめている黒剣を一瞬だけ鞘に入れ、岩をしっかりと目視。
ただの岩、そう、ただの岩だ。
行ける。
「《終々》!!」
剣を抜き、そして斬った。
抜いた黒剣のリーチは恐らく二メートルはあったと思う。もう剣身は溶け消えて無いけど。
そして俺の切り札戦技の発動は確認された。
岩を微塵に切り崩し、一塊の落石ではなく一群の崩落に形を変えた。
しかしこちらも戦技の発動直後の硬直。加えて《終々》はそこからさらに繋ぐ戦技が存在しない。
だが、身体が動かずとも、発動できるものはあるはず。
極端に言うと、身体が動かないからといって、ありとあらゆる動きが止まる訳では無い。
瞬きで瞼や肺は動くし、当然心臓も血流も止まりはしない。
ならきっと。
この力も動いてくれる。
背中からマキナを突き破り、血で編んだ鎖が飛び出す。
大した血の量を使えないのでそこまで太くはないが、三本のしっかりとしたものを作った。
身体の動きが止まっても、流れる血は止まらない。
岩から石へと切り崩された礫を、鎖が全て叩き落とし、さらに足を拘束していた指を叩き潰す。
「っぶねぇ!」
血鎖を解除して後ろに下がり、足元に転がった石片を見て「ん?」と違和感を感じる。
『仕掛けてきた敵がどっかにいる。警戒を怠るなよ』
シャルがそう言っているのを無視し、足元のそれを拾い上げる。
表面は固く、ざらついた石そのもの。
しかしひっくり返してみると──湿っており、未だ生生しいピンク色をしていた。
「──肉?」
そう呟いた瞬間、その言葉を肯定するかのようにピンク色で細い肉の触手が伸びてきた。
「うおっ!?」
思わず放り捨てるが、触手はそれでも俺の方へ伸びてくる。
慌てて黒剣で触手を斬り、石そのものをさらに四分割してようやく止まった。
「…なんだ、今の…?」
岩…にしちゃあまりに生きている。
だが、見た感じも質感も完全に岩だった。
『…なぁレィア。お前、最初に何斬ってたんだ?』
「あ?あぁ、なんか正面から出かかってた何かを咄嗟に斬った。何かは見てねぇな…」
ちょうど先程斬った場所は赤い染みが出来ているが、この距離からではそれぐらいしか分からない。周りに散らばる石片に注意して避けつつ進み、何があったかを確認──しようとして。
地面の中から、俺の身体と同じ大きさの拳が飛び出して来た。
俺の目の前──つまり、地面の方からも何かが飛び出して来た。
「なんっ!?」
それが何かを視認するより先に、後ろに跳ねて避けようとすると、ガクンと膝をつく。同時に、変な負荷がかかって膝が傷んで顔を顰めた。
足が動かない。
まるで、罠にハマってがっちりと固定されたように──
いや、まるで罠ではなく確実にこれは殺すための罠。
「クソッタレが!」
左腰から剣を抜き放ち、地面から出てきた何かを一閃。
そのまま後ろへと身体をひねって黒剣で真後ろを斬り、再度この場からの脱出を図る。
が、後ろを振り返って斬ってから絶句した。
何も無い。何もいない。手応えも当然ない。
じゃあ足はどうなっているのかと見てみると、青白く変色したヒトの指が地面から生え、がっちりと俺の足首を掴んでいるのだ。
「!?」
『上!!』
そこでようやく真上を見た。
見えたのは、視界いっぱいに広がる岩。
一メートルと空いていない空間、固定された足。回避は不可能。
しかし。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
この体勢で強引に構えのようなものをとる。
既に風化しはじめている黒剣を一瞬だけ鞘に入れ、岩をしっかりと目視。
ただの岩、そう、ただの岩だ。
行ける。
「《終々》!!」
剣を抜き、そして斬った。
抜いた黒剣のリーチは恐らく二メートルはあったと思う。もう剣身は溶け消えて無いけど。
そして俺の切り札戦技の発動は確認された。
岩を微塵に切り崩し、一塊の落石ではなく一群の崩落に形を変えた。
しかしこちらも戦技の発動直後の硬直。加えて《終々》はそこからさらに繋ぐ戦技が存在しない。
だが、身体が動かずとも、発動できるものはあるはず。
極端に言うと、身体が動かないからといって、ありとあらゆる動きが止まる訳では無い。
瞬きで瞼や肺は動くし、当然心臓も血流も止まりはしない。
ならきっと。
この力も動いてくれる。
背中からマキナを突き破り、血で編んだ鎖が飛び出す。
大した血の量を使えないのでそこまで太くはないが、三本のしっかりとしたものを作った。
身体の動きが止まっても、流れる血は止まらない。
岩から石へと切り崩された礫を、鎖が全て叩き落とし、さらに足を拘束していた指を叩き潰す。
「っぶねぇ!」
血鎖を解除して後ろに下がり、足元に転がった石片を見て「ん?」と違和感を感じる。
『仕掛けてきた敵がどっかにいる。警戒を怠るなよ』
シャルがそう言っているのを無視し、足元のそれを拾い上げる。
表面は固く、ざらついた石そのもの。
しかしひっくり返してみると──湿っており、未だ生生しいピンク色をしていた。
「──肉?」
そう呟いた瞬間、その言葉を肯定するかのようにピンク色で細い肉の触手が伸びてきた。
「うおっ!?」
思わず放り捨てるが、触手はそれでも俺の方へ伸びてくる。
慌てて黒剣で触手を斬り、石そのものをさらに四分割してようやく止まった。
「…なんだ、今の…?」
岩…にしちゃあまりに生きている。
だが、見た感じも質感も完全に岩だった。
『…なぁレィア。お前、最初に何斬ってたんだ?』
「あ?あぁ、なんか正面から出かかってた何かを咄嗟に斬った。何かは見てねぇな…」
ちょうど先程斬った場所は赤い染みが出来ているが、この距離からではそれぐらいしか分からない。周りに散らばる石片に注意して避けつつ進み、何があったかを確認──しようとして。
地面の中から、俺の身体と同じ大きさの拳が飛び出して来た。
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