大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

研究所と剣

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五分で向かうと言って向かった先は第二訓練所。持ちっぱなしだった合鍵を使って勝手に入ると、長身で白衣を着た赤いヒールが目立つ女が一人、中央に立っていた。
「早かったナ」
「急いで来たんだよ。あの金切り声でまた叫ばれると頭が痛くなる」
「あぁ…まぁ…否定はしなイ」
以前聞いた独特の片言言葉で喋るのは、ピィと呼ばれていた研究員。
夏の長期休暇に入る前、こいつの相方…という訳ではあるまいが、背丈の低いちんちくりんの研究員に「休みが明けたら武器を見せろ」と言われ、適当に受け答えしたのが原因だ。休みが明けたらとかなんとか言っておいて、うっかりその事を忘れた結果、先程のキンキン金切り声のメッセージに繋がるわけだ。
「道は?」
「ほレ」
と言ってピィが壁を触ると、壁に穴が空く。
毎度思うのだが、この壁とかどうなってんだろうな。
「行くゾ」
ピィを先頭に歩くこと数分。五分とせずに正面に白い扉が見えた。
「入るゾ」
と言ってノックも無しに入るピィと、直後に中から聞こえる金切り声。
「…うるせぇな」
思わずそう呟くと、中から「あんたもとっとと入りなさい!」と叫び声が聞こえた。
渋々入ると扉が勢いよく閉まる。鍵はかかってないようだが、心臓に少々悪い。
ピィの姿が無いが、どこかの隙間にでも入っているのだろうか。あの女は狭い所が好きだった気がするが。
「あんた遅いのよ。休み明けたら来るってんだから待ってたけど来る気配もまるで無いじゃない」
と、こちらを見もせずに女研究員は文句を言う。
部屋の中は以前よりスッキリとしていて整理がされている。いや、どちらかと言うと純粋に物が少ないだけか。
「片付けたのか」
「部屋を変えただけよ。歩いた距離と向きで違う部屋だと分かるでしょう」
覚えてるかよンな事。いや、覚えられるけど。でもあんな状況と精神状態で把握出来るか。
「ラピュセは俺がここに来てる事知ってんのか?」
「さぁ、どうでしょうかしらね。知っててもおかしくないけれど、まだ何もしてこないなら放っておくつもりでしょ。私も別にあんたのことを隠してるつもりは無いし」
何?隠して欲しかったの?と言う女に対し、面倒事は避けたいだけだと返す。
「ま、あんたの周りには勝手に厄介事、面倒事が転がり込んでくるものね。見たわよ、つい三日前のセラ・フィクマとの戦闘」
「だろうな」
それこそ隠そうとは思っていなかったし。
そう思っていると、ようやく女研究員がこちらを向いた。かと思えば、何かをよこせと手を出した。
「見せなさい、その武器」
本当にコイツは…まぁいいが。
そう思い、俺は敢えて金剣をこいつの手のひらに乗っける。
次の瞬間、女研究員がガクンと椅子から転げ落ち、地面に這いつくばる。
その拍子に金剣を落とし、身体の自由が効くようになった彼女は、何事もなかったかのように立ち上がって椅子に座り直す。
「…大丈夫か?」
「大丈夫よ。大した損害じゃないわ」
「でもお前かなり強く顎打って」
「大丈夫よ。問題ないわ」
「結構赤く」
「大丈夫よ。これぐらいなら」
「………。」
「大丈夫よ」
「何も言ってないぞ」
と言って金剣を拾い直し、適当にテーブルの上に置く。ついでに銀剣もだ。
「あんたが居ないとロクにこの剣一本を動かすことすら出来ないのは本当に不便ね…マジックアームの出力も馬鹿にならない事になるし、どう言う仕組みなのかしら」
「理屈抜きでそういうモンを押し付けるって物だからな。どれだけ調べても分かるまいさ」
そう言うと、ギロリとこちらを睨む視線。俺としては解明されてもされなくても大差はないから構わんのだがな。
耳長種エルフ龍人種ドラゴニアンの宝剣…それがこんな姿になっているとはね。後で部屋を変えて抜いて貰うわよ。いいわね?」
「構わんさ。ただ、二時間以内にしてくれ。夕飯を食いに行きたい」
肩を竦めてそう言うと、もう一度睨まれた。
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