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本編
馬車と御者
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ガラガラと馬車の車輪が騒がしく回る。
クードラル先生のスレイプニル程じゃないが、それなりの速度で流れる外の風景は、外が街などだったら中々楽しめただろう。…まぁ、まだ荒野だから、ほとんど風景なんか変わらねぇけど。
馬車の中には俺とアーネ、シエルの三人とその荷物だけ。俺とシエルの荷物は比較的少なく、二人で一つのバッグで済んだが、アーネの荷物が異常に多い。
部屋でどうしたもんかと相談したあの日から二日。結局、アーネの案に乗ることとなった。
長期休暇は一ヶ月以上あるので、その間ずっとどこかの宿屋に泊まるというのは金銭的にかなり厳しい。当然、野宿も不可。
となると、アーネの案が一番助かるという訳で、その話に俺とシエルが二人揃ってアーネの家に夏季休暇中お世話になる流れとなった。
「にしても…今更だが、お前ん家に二人も押しかけて大丈夫なのか?」
文字どおり不毛な外の景色から目を外し、アーネの方に向く。
「えぇ、大丈夫ですわ。私の家はかなり広いですし、お金も潤沢にありますもの。一応、メッセージは飛ばしてあるので、大丈夫かと思いますわ」
しれっと金持ちとかアピールしてきたぜコイツ。まぁ、個人の持ち物で本が結構な冊数があったから、それなりの金持ちなんだろうとは少しばかり察しがついていたが。
それに、この馬車(御者つき。地味に感動した)を出しているのはアーネの家らしいし。娘のために迎えの馬車を寄越す親…うーん、中々金持ちそうだよな。他の生徒…ラウクムくんとかは徒歩で帰るとか言ってたし。
ちなみにリーザとクアイちゃんは手続きを済ませ、学校に残るらしい。ユーリアはルト先輩の背中に乗って飛んで帰るとか。
「んで、お前ん家ってどこにあんの?」
馬車で二日程かかると言われたが…中々遠い。
「北の第二都市ゼランバですわ」
「ゼランバぁ?ゼランバって言ったら…あぁ、鉱山があるんだっけか」
「…よく知ってますわね」
「今まで外の事を知らなかった分、必死こいて調べたんだよ」
北は確か第五都市まであったはずだが、その中で第二都市というと、かなり王都に近い。
ものの流通もかなり良く、住みやすい都市らしい。
「てことはなんだ?お前ん家って鍛冶屋かなんか?」
「いえ、そういう訳ではないのですけど…」
そこで何故か言葉を濁すアーネ。
「…………おかあさん」
「うん?どうした?シエル」
俺が胡座した上に座り、ずっと外を見ていたシエルがくいくいと可愛らしく俺の外套の裾を引っ張る。
シエルに言われて外を見ると同時に、御者台にいた御者が慌てて馬車の中に入りつつ、俺達にこう言う。
「アーネ様!ご学友様!魔獣です!」
「…おーおー、ありゃあ…犬か?」
「…………おおかみ」
なるほど、んじゃあ外に出て──。
「絶対に外に出ず、何かにしっかりしがみついてて下さい!!」
へっ?と声を出す前に。
強烈な衝撃が走る。
クードラル先生のスレイプニル程じゃないが、それなりの速度で流れる外の風景は、外が街などだったら中々楽しめただろう。…まぁ、まだ荒野だから、ほとんど風景なんか変わらねぇけど。
馬車の中には俺とアーネ、シエルの三人とその荷物だけ。俺とシエルの荷物は比較的少なく、二人で一つのバッグで済んだが、アーネの荷物が異常に多い。
部屋でどうしたもんかと相談したあの日から二日。結局、アーネの案に乗ることとなった。
長期休暇は一ヶ月以上あるので、その間ずっとどこかの宿屋に泊まるというのは金銭的にかなり厳しい。当然、野宿も不可。
となると、アーネの案が一番助かるという訳で、その話に俺とシエルが二人揃ってアーネの家に夏季休暇中お世話になる流れとなった。
「にしても…今更だが、お前ん家に二人も押しかけて大丈夫なのか?」
文字どおり不毛な外の景色から目を外し、アーネの方に向く。
「えぇ、大丈夫ですわ。私の家はかなり広いですし、お金も潤沢にありますもの。一応、メッセージは飛ばしてあるので、大丈夫かと思いますわ」
しれっと金持ちとかアピールしてきたぜコイツ。まぁ、個人の持ち物で本が結構な冊数があったから、それなりの金持ちなんだろうとは少しばかり察しがついていたが。
それに、この馬車(御者つき。地味に感動した)を出しているのはアーネの家らしいし。娘のために迎えの馬車を寄越す親…うーん、中々金持ちそうだよな。他の生徒…ラウクムくんとかは徒歩で帰るとか言ってたし。
ちなみにリーザとクアイちゃんは手続きを済ませ、学校に残るらしい。ユーリアはルト先輩の背中に乗って飛んで帰るとか。
「んで、お前ん家ってどこにあんの?」
馬車で二日程かかると言われたが…中々遠い。
「北の第二都市ゼランバですわ」
「ゼランバぁ?ゼランバって言ったら…あぁ、鉱山があるんだっけか」
「…よく知ってますわね」
「今まで外の事を知らなかった分、必死こいて調べたんだよ」
北は確か第五都市まであったはずだが、その中で第二都市というと、かなり王都に近い。
ものの流通もかなり良く、住みやすい都市らしい。
「てことはなんだ?お前ん家って鍛冶屋かなんか?」
「いえ、そういう訳ではないのですけど…」
そこで何故か言葉を濁すアーネ。
「…………おかあさん」
「うん?どうした?シエル」
俺が胡座した上に座り、ずっと外を見ていたシエルがくいくいと可愛らしく俺の外套の裾を引っ張る。
シエルに言われて外を見ると同時に、御者台にいた御者が慌てて馬車の中に入りつつ、俺達にこう言う。
「アーネ様!ご学友様!魔獣です!」
「…おーおー、ありゃあ…犬か?」
「…………おおかみ」
なるほど、んじゃあ外に出て──。
「絶対に外に出ず、何かにしっかりしがみついてて下さい!!」
へっ?と声を出す前に。
強烈な衝撃が走る。
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