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本編
約束と亡霊
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話が終わったようなので部屋を出ようとすると、ニコラスが「ちょっと待ちなさい」と声をかけた。
まだ何かあるのかと思ったが、そうでは無いらしい。
ニコラスが懐から取り出したのは薄い二枚のチケット。
「丁度渡すつもりだったんだ、行ってくるといい」
「あら。タイミングが良かったですわね。助かりましたわ」
と言ってアーネがそれを受け取る。
「ほら、行きますわよ。次の開演は三時からですって」
「…あぁ」
そうだった。何かを忘れていたと思っていたが、アーネと一緒に演劇を見る約束をしていたんだった。
アーネに引っ張られてそのまま部屋を出、しばらく支度をするので三十分後に落ち合おうと話して一旦部屋に戻る。
俺も軽く身支度を整えることにするか。
「で、シャル。気分はどうだ?」
『最高だね。面白いモン見れたし、レイヴァーとの賭けにも勝てたし。言うこと無しだ』
「俺達で賭けてたのかよ…」
『暇なんだ、許してくれ。しかし…面倒な事するなぁ、お前』
「あ?面倒な事?」
と言うと、先程の家族会議とやらだろうか。分類的に考えると、俺は家族じゃないと思うんだが、多分あれがエルストイの言ってた家族会議のような気がする。
『あぁ。俺達だったらあの父親を無視してアーネを攫ってただろうが…わざわざあんな問答をするんだな』
「ん…まぁ、考えないでもなかったさ。考えただけだけどな」
『お優しい事で』
「なぁシャル、お前って愛とか恋とか、そういうのしたことある?」
多分適当にはぐらかされるだろうな。そう思って聞いた言葉だったが、意外と悩んでいる様子。どうやら真面目に答えてくれるらしい。
『どうなんだろ。正直言うと、俺だってそういう相手がいなかった訳じゃないが…わかんね』
「…ふぅん」
話は終わったと判断し、適当に相槌を打って時計を見る。時間的に余裕があるし、早く行ってもなんだ。もうしばらく待つか。
そう思っていると、再びシャルが話を続けた。
『けどまぁ、俺が生きててアイツが生きてて、その間に互いに一言もそういう言葉は使わなかったし、何となくで身体求めてたしなぁ…プロポーズとかもなかったけど、ただヤる事ヤるだけの間柄って訳でも無かったし』
「それっぽい言葉とかなかったのか?」
『無ぇな。けどまぁ、それこそ言葉にしなかったが…俺がアイツを信頼していた分、アイツも俺を信頼していたとは思うがな』
「信頼、ね…」
それももしかしたら、俺の誓いに似たものなのかもしれないな。
「なぁシャル、《勇者》って弱くて脆いな」
『あの親父さんに言わせれば、だから《道具》なんじゃねぇの?』
なるほど、替えのきく道具、ね…
なら勇者はそういう呪いのラベルか。
「話していいと思うか?」
『レイヴァーなら絶対ダメだって言うだろうな。聖女に話すのだって反対したかもしれん』
「お前は?」
『勿論ダメだ。だが…さてなぁ、居たり居なかったりするし、運悪くそのタイミングで居ないかもしれんなぁ』
なるほど。白々しいことこの上ないようで。
『それよかほら、じきに時間だぞ。行ったらどうだ』
「そうだな。行くか」
まだ何かあるのかと思ったが、そうでは無いらしい。
ニコラスが懐から取り出したのは薄い二枚のチケット。
「丁度渡すつもりだったんだ、行ってくるといい」
「あら。タイミングが良かったですわね。助かりましたわ」
と言ってアーネがそれを受け取る。
「ほら、行きますわよ。次の開演は三時からですって」
「…あぁ」
そうだった。何かを忘れていたと思っていたが、アーネと一緒に演劇を見る約束をしていたんだった。
アーネに引っ張られてそのまま部屋を出、しばらく支度をするので三十分後に落ち合おうと話して一旦部屋に戻る。
俺も軽く身支度を整えることにするか。
「で、シャル。気分はどうだ?」
『最高だね。面白いモン見れたし、レイヴァーとの賭けにも勝てたし。言うこと無しだ』
「俺達で賭けてたのかよ…」
『暇なんだ、許してくれ。しかし…面倒な事するなぁ、お前』
「あ?面倒な事?」
と言うと、先程の家族会議とやらだろうか。分類的に考えると、俺は家族じゃないと思うんだが、多分あれがエルストイの言ってた家族会議のような気がする。
『あぁ。俺達だったらあの父親を無視してアーネを攫ってただろうが…わざわざあんな問答をするんだな』
「ん…まぁ、考えないでもなかったさ。考えただけだけどな」
『お優しい事で』
「なぁシャル、お前って愛とか恋とか、そういうのしたことある?」
多分適当にはぐらかされるだろうな。そう思って聞いた言葉だったが、意外と悩んでいる様子。どうやら真面目に答えてくれるらしい。
『どうなんだろ。正直言うと、俺だってそういう相手がいなかった訳じゃないが…わかんね』
「…ふぅん」
話は終わったと判断し、適当に相槌を打って時計を見る。時間的に余裕があるし、早く行ってもなんだ。もうしばらく待つか。
そう思っていると、再びシャルが話を続けた。
『けどまぁ、俺が生きててアイツが生きてて、その間に互いに一言もそういう言葉は使わなかったし、何となくで身体求めてたしなぁ…プロポーズとかもなかったけど、ただヤる事ヤるだけの間柄って訳でも無かったし』
「それっぽい言葉とかなかったのか?」
『無ぇな。けどまぁ、それこそ言葉にしなかったが…俺がアイツを信頼していた分、アイツも俺を信頼していたとは思うがな』
「信頼、ね…」
それももしかしたら、俺の誓いに似たものなのかもしれないな。
「なぁシャル、《勇者》って弱くて脆いな」
『あの親父さんに言わせれば、だから《道具》なんじゃねぇの?』
なるほど、替えのきく道具、ね…
なら勇者はそういう呪いのラベルか。
「話していいと思うか?」
『レイヴァーなら絶対ダメだって言うだろうな。聖女に話すのだって反対したかもしれん』
「お前は?」
『勿論ダメだ。だが…さてなぁ、居たり居なかったりするし、運悪くそのタイミングで居ないかもしれんなぁ』
なるほど。白々しいことこの上ないようで。
『それよかほら、じきに時間だぞ。行ったらどうだ』
「そうだな。行くか」
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