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本編
訓練とタッグ2
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「くっ!」
落ち着け。
今、俺に迫っている危機は二つ。
喉元に迫る片手剣。
背後から来る長剣。
後ろに避けるも前に避けるも不味い。
横に飛び抜けるのは体勢的に無理。
ならば。
「ちぃッ!」
ぴっ、と音を残して繰り出されたのは俺の蹴り。
膝を少し上げてから真上に向けて垂直に蹴り抜かれたつま先は、硬質な音を立てて女子ちゃんの片手剣…ではなく、その剣を握る指を正確に蹴り抜いた。
「痛ッ!」
思わず落とす女子ちゃん。これで一つは解決!あと一つは──。
肩越しにちらりと後ろを見ると、男子くんが繰り出したのは大上段から縦に切り裂くような一撃。
しかも。
『戦技か!』
真っ赤に光り輝く刀身は、尋常ならざる威力を秘めているのが視界に微かに映るだけでもよく分かる。
避けられるか?いや、体勢が悪い。
銀剣は?自由!
なら!
「アアッ!」
右手で握った銀剣を即座に逆手に持ち替え、手首の捻りだけで背後の長剣と打ち合わせる。
そんな事では戦技は止められない。一瞬の拮抗の後、剣が弾かれる。
しかし、俺が欲しいのは戦技を止める威力ではなく、体勢を整える刹那の空白。
弾かれた銀剣と一緒に、敢えて前に吹き飛ばされる。
体勢を整え、相手の方を向くと。
「チイィ!!」
生まれたはずの空白を即座に埋める女子ちゃん。
「《剛砕》!」
銀剣の大振りな一撃をまともに受け、女子ちゃんが後ろへ大きく吹き飛ぶ。
ざわざわと周りがざわめく。この訓練で、俺が回避行動を取ったのも、戦技を使ったのもこれが初めてだった。
彼らはそれ程までに強い、と俺が証明してしまった。
お陰で、『あいつらならやれるんじゃないか?』みたいな空気が生まれてしまった。
…クソ、まさかこんなに苦戦するとは思ってなかった。
他の班ぐるみでかかってきたアイツらの何倍も強い!
『今代の、緋眼を使え』
確かに緋眼を使えば相手の動き、風の動き、筋肉の動き、それら一つひとつを読むことで、先の先の先を見ることすら出来るだろう。
だが。
「断る」
小さく、誰にも聞こえないように呟く。
それじゃあダメだ。
それじゃあ、あいつらを越えたのは《勇者》のレィアになっちまう。
あいつらに応えて越えるべき壁なのは《緋眼騎士》のレィアじゃなきゃ。
だから──。
「俺も全力を尽くそうか」
銀剣を左手に持ち替え、空いた右手が胸元に伸びる。
「「!!」」
それに気づいた男子くん、女子ちゃんが地面を蹴って俺に近づく。
特に、男子くんは爆発の勢いを利用して、今にも俺に斬りかからんとしている。
だが。
俺の方が早い。
キンッ、と澄んだ音が小さく響き、それは俺の手の中で形を変え、大きさを変え、重さを変えて、銀剣と対の形をとる。
握り締めた途端、身体がふっ、と軽くなる。
あぁ──。
「最ッ高の気分だ」
男子くんが繰り出した、勢いの乗った一撃。
それを右の金剣だけで抑え込む。
さて。
鍔迫り合いのまま、男子くんの耳元に唇を近づけ、そっと囁く。
「越えられない壁、ってのをみせてやるよ」
落ち着け。
今、俺に迫っている危機は二つ。
喉元に迫る片手剣。
背後から来る長剣。
後ろに避けるも前に避けるも不味い。
横に飛び抜けるのは体勢的に無理。
ならば。
「ちぃッ!」
ぴっ、と音を残して繰り出されたのは俺の蹴り。
膝を少し上げてから真上に向けて垂直に蹴り抜かれたつま先は、硬質な音を立てて女子ちゃんの片手剣…ではなく、その剣を握る指を正確に蹴り抜いた。
「痛ッ!」
思わず落とす女子ちゃん。これで一つは解決!あと一つは──。
肩越しにちらりと後ろを見ると、男子くんが繰り出したのは大上段から縦に切り裂くような一撃。
しかも。
『戦技か!』
真っ赤に光り輝く刀身は、尋常ならざる威力を秘めているのが視界に微かに映るだけでもよく分かる。
避けられるか?いや、体勢が悪い。
銀剣は?自由!
なら!
「アアッ!」
右手で握った銀剣を即座に逆手に持ち替え、手首の捻りだけで背後の長剣と打ち合わせる。
そんな事では戦技は止められない。一瞬の拮抗の後、剣が弾かれる。
しかし、俺が欲しいのは戦技を止める威力ではなく、体勢を整える刹那の空白。
弾かれた銀剣と一緒に、敢えて前に吹き飛ばされる。
体勢を整え、相手の方を向くと。
「チイィ!!」
生まれたはずの空白を即座に埋める女子ちゃん。
「《剛砕》!」
銀剣の大振りな一撃をまともに受け、女子ちゃんが後ろへ大きく吹き飛ぶ。
ざわざわと周りがざわめく。この訓練で、俺が回避行動を取ったのも、戦技を使ったのもこれが初めてだった。
彼らはそれ程までに強い、と俺が証明してしまった。
お陰で、『あいつらならやれるんじゃないか?』みたいな空気が生まれてしまった。
…クソ、まさかこんなに苦戦するとは思ってなかった。
他の班ぐるみでかかってきたアイツらの何倍も強い!
『今代の、緋眼を使え』
確かに緋眼を使えば相手の動き、風の動き、筋肉の動き、それら一つひとつを読むことで、先の先の先を見ることすら出来るだろう。
だが。
「断る」
小さく、誰にも聞こえないように呟く。
それじゃあダメだ。
それじゃあ、あいつらを越えたのは《勇者》のレィアになっちまう。
あいつらに応えて越えるべき壁なのは《緋眼騎士》のレィアじゃなきゃ。
だから──。
「俺も全力を尽くそうか」
銀剣を左手に持ち替え、空いた右手が胸元に伸びる。
「「!!」」
それに気づいた男子くん、女子ちゃんが地面を蹴って俺に近づく。
特に、男子くんは爆発の勢いを利用して、今にも俺に斬りかからんとしている。
だが。
俺の方が早い。
キンッ、と澄んだ音が小さく響き、それは俺の手の中で形を変え、大きさを変え、重さを変えて、銀剣と対の形をとる。
握り締めた途端、身体がふっ、と軽くなる。
あぁ──。
「最ッ高の気分だ」
男子くんが繰り出した、勢いの乗った一撃。
それを右の金剣だけで抑え込む。
さて。
鍔迫り合いのまま、男子くんの耳元に唇を近づけ、そっと囁く。
「越えられない壁、ってのをみせてやるよ」
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