1,540 / 2,028
本編
友人と確認
しおりを挟む
翌日、俺が目覚めたと聞いて、ユーリアがすっ飛んで来た。
「君が何かしているとは知っていたが、まさか瀕死になって帰ってくるとは思いもしていなかったぞ!」
と言いつつ、特段心配しているような口ぶりではない。どちらかと言うと、バカやった友人をドヤしている感じだ。
「…ん?帰ってくる?担ぎ込まれたとかじゃなくて?」
「え?自分の足で歩いてきていただろう?鎧まで纏って」
「…あー、おー、なるほどぉ?そうだな」
最後のタイミングでマキナに血がかかったのだろうか。別にあれだけ派手にやっていれば何らおかしくは無いか。
「しかし俺の治療が出来たって事はアーネが居た訳だろ?どうやって連れてきた?」
「あぁそれか。君は『アーネ・ケイナズを頼む』とだけ言って倒れたものな。ほら、この前リューズニルに行った時にいた兵士を覚えているか?瞬間移動の。彼にお願いして、ゼランバまで飛んで行ってもらった」
なるほど。彼なら容易にアーネを連れてくることが出来るだろう。しかしマキナ、ナイス判断だ。
「で、アーネはすぐ帰ったのか」
「何でも、ゼランバの方でやらなくてはならない事があるらしくてな。君の治療を終え次第、すぐにまたゼランバに戻ったよ」
その辺の事情も多分書いてあったんだろうなぁ…書いた部分を入れ忘れてるけど。
「ふーん…そういや、聖女サマってあれ以降来たのか?」
「いや、来てない。何かあったか?」
「いや何も?」
なるほどなぁ。大体分かった。
「ところでレィア、少し聞きたいのだが、身体の調子は…?」
「生活する分にゃ問題はねぇな。ただ、しばらく激しい運動は禁物だ。肺は繋がってるが鎖骨がまだ少し、って感じだ」
安心しろという意味を込めて笑って言うが、ユーリアは顔を顰めて聞いてきた。
「…鎖骨と肺をやられて、しかも生きて帰ってくるなんて相当だぞ…?誰にやられた?」
「そいつは悪いが言えねぇなぁ」
「とはいえ、何とか生きて帰ってこれたという事は、その相手も捕まったんだろう。ありがとうレィア」
「お前は俺が正しい事をしたって疑いもしねぇんだな」
そう言うと、ユーリアは大真面目な顔で「間違ったことをしたと確信を持って言うのか?」と聞いてきた。それを笑って流し、
「あぁそうだ、一個訂正だ。そいつは別に捕まってねぇ」
「………とすると、もしかして殺…」
「んにゃ、殺せてもねぇなぁありゃ。多分大した怪我もしてねぇ。足折れたぐらいか。騒ぎから逃げただけだろうな、あいつも」
瀕死の俺にトドメを刺し、それを見られてヒトに捕まる可能性。
瀕死の俺を放置し、その場から逃げ、やがて俺が死ぬに任せる。
天秤にかけて後者を選んだ訳だ。
《勇者》の本質はヒトの味方。俺を殺した罪で捕らえられた場合、余程のことが無ければ手を上げる事すら出来ないだろう。
「ま、それでもしばらくは大人しくするだろうさ。多分」
「多分って…本当に大丈夫なのか?」
「普通なら無害だしな。俺と敵対してるってだけで」
「どういう関係なんだそれ…」
「どういう関係…?うーん…」
言われて考える。
「そもそも初対面だし、名前も知らんしなぁ…」
「それでそんな深手を負うような事になるのか…?」
「強いて言うなら…兄妹?が一番近いか」
「兄妹が一番近い…?君にはそう言う縁者はいなかったと記憶しているが…厳密に言うと?」
「血を分けた存在?」
「兄妹じゃないか」
「産みの親が違うんだがな」
「腹違いか。なるほど拗れる訳だ」
…ふむ、どうもこれ以上言っても話がこんがらがるだけのようだ。
『お前分かってやってるだろ。情報そのものはかなりスレスレだから気をつけろよ』
おっと、シャルに釘を刺されてしまった。
「あ、そうだユーリア」
「何だレィア」
「俺、明日か明後日あたりにここ出るわ。例の件よろしく」
そろそろ、この家から出るかな。
「君が何かしているとは知っていたが、まさか瀕死になって帰ってくるとは思いもしていなかったぞ!」
と言いつつ、特段心配しているような口ぶりではない。どちらかと言うと、バカやった友人をドヤしている感じだ。
「…ん?帰ってくる?担ぎ込まれたとかじゃなくて?」
「え?自分の足で歩いてきていただろう?鎧まで纏って」
「…あー、おー、なるほどぉ?そうだな」
最後のタイミングでマキナに血がかかったのだろうか。別にあれだけ派手にやっていれば何らおかしくは無いか。
「しかし俺の治療が出来たって事はアーネが居た訳だろ?どうやって連れてきた?」
「あぁそれか。君は『アーネ・ケイナズを頼む』とだけ言って倒れたものな。ほら、この前リューズニルに行った時にいた兵士を覚えているか?瞬間移動の。彼にお願いして、ゼランバまで飛んで行ってもらった」
なるほど。彼なら容易にアーネを連れてくることが出来るだろう。しかしマキナ、ナイス判断だ。
「で、アーネはすぐ帰ったのか」
「何でも、ゼランバの方でやらなくてはならない事があるらしくてな。君の治療を終え次第、すぐにまたゼランバに戻ったよ」
その辺の事情も多分書いてあったんだろうなぁ…書いた部分を入れ忘れてるけど。
「ふーん…そういや、聖女サマってあれ以降来たのか?」
「いや、来てない。何かあったか?」
「いや何も?」
なるほどなぁ。大体分かった。
「ところでレィア、少し聞きたいのだが、身体の調子は…?」
「生活する分にゃ問題はねぇな。ただ、しばらく激しい運動は禁物だ。肺は繋がってるが鎖骨がまだ少し、って感じだ」
安心しろという意味を込めて笑って言うが、ユーリアは顔を顰めて聞いてきた。
「…鎖骨と肺をやられて、しかも生きて帰ってくるなんて相当だぞ…?誰にやられた?」
「そいつは悪いが言えねぇなぁ」
「とはいえ、何とか生きて帰ってこれたという事は、その相手も捕まったんだろう。ありがとうレィア」
「お前は俺が正しい事をしたって疑いもしねぇんだな」
そう言うと、ユーリアは大真面目な顔で「間違ったことをしたと確信を持って言うのか?」と聞いてきた。それを笑って流し、
「あぁそうだ、一個訂正だ。そいつは別に捕まってねぇ」
「………とすると、もしかして殺…」
「んにゃ、殺せてもねぇなぁありゃ。多分大した怪我もしてねぇ。足折れたぐらいか。騒ぎから逃げただけだろうな、あいつも」
瀕死の俺にトドメを刺し、それを見られてヒトに捕まる可能性。
瀕死の俺を放置し、その場から逃げ、やがて俺が死ぬに任せる。
天秤にかけて後者を選んだ訳だ。
《勇者》の本質はヒトの味方。俺を殺した罪で捕らえられた場合、余程のことが無ければ手を上げる事すら出来ないだろう。
「ま、それでもしばらくは大人しくするだろうさ。多分」
「多分って…本当に大丈夫なのか?」
「普通なら無害だしな。俺と敵対してるってだけで」
「どういう関係なんだそれ…」
「どういう関係…?うーん…」
言われて考える。
「そもそも初対面だし、名前も知らんしなぁ…」
「それでそんな深手を負うような事になるのか…?」
「強いて言うなら…兄妹?が一番近いか」
「兄妹が一番近い…?君にはそう言う縁者はいなかったと記憶しているが…厳密に言うと?」
「血を分けた存在?」
「兄妹じゃないか」
「産みの親が違うんだがな」
「腹違いか。なるほど拗れる訳だ」
…ふむ、どうもこれ以上言っても話がこんがらがるだけのようだ。
『お前分かってやってるだろ。情報そのものはかなりスレスレだから気をつけろよ』
おっと、シャルに釘を刺されてしまった。
「あ、そうだユーリア」
「何だレィア」
「俺、明日か明後日あたりにここ出るわ。例の件よろしく」
そろそろ、この家から出るかな。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜
雪野 結莉
恋愛
魔物を倒す英雄となる運命を背負って生まれた侯爵家嫡男ルーク。
しかし、赤ん坊の時に魔獣に襲われ、顔に酷い傷を持ってしまう。
英雄の婚約者には、必ず光の魔力を持つものが求められる。そして選ばれたのは子爵家次女ジーナだった。
顔に残る傷のため、酷く冷遇された幼少期を過ごすルークに差し込んだ一筋の光がジーナなのだ。
ジーナを誰よりも大切にしてきたルークだったが、ジーナとの婚約を邪魔するものの手によって、ジーナは殺されてしまう。
誰よりも強く誰よりも心に傷を持つルークのことが死してなお気になるジーナ。
ルークに会いたくて会いたくて。
その願いは。。。。。
とても長いお話ですが、1話1話は1500文字前後で軽く読める……はず!です。
他サイト様でも公開中ですが、アルファポリス様が一番早い更新です。
本編完結しました!
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ボッチ英雄譚
3匹の子猫
ファンタジー
辺境の村で生まれ育ったロンは15才の成人の儀で「ボッチ」という聞いたこともないジョブを神様から授けられました。
ボッチのジョブはメリットも大きいですが、デメリットも大きかったのです。
彼には3人の幼馴染みと共に冒険者になるという約束がありましたが、ボッチの特性上、共にパーティーを組むことが難しそうです。彼は選択しました。
王都でソロ冒険者になることを!!
この物語はトラブルに巻き込まれやすい体質の少年ロンが、それらを乗り越え、いつの日か英雄と呼ばれるようになるまでを描いた物語です。
ロンの活躍を応援していきましょう!!
どこにでもある異世界転移~第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!
ダメ人間共同体
ファンタジー
第三部 今最後の戦いが始る!!・・・・と思う。 すべてのなぞが解決される・・・・・と思う。 碧たちは現代に帰ることが出来るのか? 茜は碧に会うことが出来るのか? 適当な物語の最終章が今始る。
第二部完結 お兄ちゃんが異世界転移へ巻き込まれてしまった!! なら、私が助けに行くしか無いじゃ無い!! 女神様にお願いして究極の力を手に入れた妹の雑な英雄譚。今ここに始る。
第一部完結 修学旅行中、事故に合ったところを女神様に救われクラスメイトと異世界へ転移することになった。優しい女神様は俺たちにチート?を授けてくれた。ある者は職業を選択。ある者はアイテムを選択。俺が選んだのは『とても便利なキッチンセット【オマケ付き】』 魔王やモンスター、悪人のいる異世界で生き残ることは出来るのか?現代に戻ることは出来るのか?
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる