1,537 / 2,028
本編
目覚めと置き手紙
しおりを挟む
気がつくと俺はユーリアの家に借りている部屋のベッドに寝かされていた。
生き残ったか。ならまずは現状把握。
窓からの光は薄く、恐らくは夜。時計を確認すると、針が二時となっている。
さらにその下の日付を確認すると、あの日から三日過ぎている。結構寝ていたようだ。
マキナなテーブルの上に置いてあるが、魔力は無いだろう。
次は身体か。とりあえずは血が足りないと言った事は無さそうだが…と上をはだけてみると、ガチガチに包帯が巻かれている。まぁそうなるか。
「ん?」
ふと気づいた。巻き方に見覚えがある。とはいえ、特段変わった巻き方でもないし、気にすることでもないか。
左手は…動くには動くが、これは動かさない方が良い奴だな。どうも治りかけらしい。下手に動かすと、また鎖骨が逝ってしまいそうだ。
髪で軽く補強して立ち上がる。ふらつく感覚は無いし、足の方に問題もない。少し声を出したり、息を大きく吸ったりしても違和感はない。肺の血も取り除かれているか。
問題は左腕…というか鎖骨だな。これのせいで激しい運動は暫く厳禁となる。
どうするかな…と一人思案に耽りそうになるが、ふとここでテーブルのマキナの下、何か紙が一枚置いてあるのに気づく。
拾い上げて見てみると、起きて体調が良くなったら、何時でもいいから執務室に来いとの事。また、教会にも報告の必要があるので、昼間のうちに報告しに来て欲しいとの事。
「面倒な…」
とはいえ、あれだけの騒ぎを起こしたのだ。報告せにゃならんだろう。
マキナを手に取り血を塗ると、しばらくして起動する。特に意味は無いが、とりあえず待機状態にしておくのは重要だ。
左手が使えない事と空腹である事以外はまるで問題がないので、コップ一杯の水を飲んでから、とりあえず言われた通りに執務室へ向かう。
と言っても夜中の二時なんだが。流石にルプセルも寝ているだろうと思って、しかしそれでも一応来た言い訳程度は出来るかと、小さく小さくノックする。
「誰かね?」
マジか。起きてた。
「レィア・シィルです」
「入りなさい」
許可が出たので扉を静かに開き、中へ入る。
執務室の中は相変わらず光源が無く、しかし不思議なことに暗くはない。はっきりとルプセルの顔が見えるし、その眉間に刻まれた深い皺も良く見えた。
ルプセルは俺を一度見、深く息を吐いた。
「まずはこちらから一つ詫びよう。王都という私達が守る地で、君という客人が生死の狭間を彷徨うという事はあってはならない事だ。それについては申し訳ないと思っている」
最初にルプセルはそう言った。
「しかし、それ故に君が起こした騒動について、私は取り締まらねばならない。まずは君の報告を聞いてから処罰を決める。君には出来るだけ真実を話して欲しい」
生き残ったか。ならまずは現状把握。
窓からの光は薄く、恐らくは夜。時計を確認すると、針が二時となっている。
さらにその下の日付を確認すると、あの日から三日過ぎている。結構寝ていたようだ。
マキナなテーブルの上に置いてあるが、魔力は無いだろう。
次は身体か。とりあえずは血が足りないと言った事は無さそうだが…と上をはだけてみると、ガチガチに包帯が巻かれている。まぁそうなるか。
「ん?」
ふと気づいた。巻き方に見覚えがある。とはいえ、特段変わった巻き方でもないし、気にすることでもないか。
左手は…動くには動くが、これは動かさない方が良い奴だな。どうも治りかけらしい。下手に動かすと、また鎖骨が逝ってしまいそうだ。
髪で軽く補強して立ち上がる。ふらつく感覚は無いし、足の方に問題もない。少し声を出したり、息を大きく吸ったりしても違和感はない。肺の血も取り除かれているか。
問題は左腕…というか鎖骨だな。これのせいで激しい運動は暫く厳禁となる。
どうするかな…と一人思案に耽りそうになるが、ふとここでテーブルのマキナの下、何か紙が一枚置いてあるのに気づく。
拾い上げて見てみると、起きて体調が良くなったら、何時でもいいから執務室に来いとの事。また、教会にも報告の必要があるので、昼間のうちに報告しに来て欲しいとの事。
「面倒な…」
とはいえ、あれだけの騒ぎを起こしたのだ。報告せにゃならんだろう。
マキナを手に取り血を塗ると、しばらくして起動する。特に意味は無いが、とりあえず待機状態にしておくのは重要だ。
左手が使えない事と空腹である事以外はまるで問題がないので、コップ一杯の水を飲んでから、とりあえず言われた通りに執務室へ向かう。
と言っても夜中の二時なんだが。流石にルプセルも寝ているだろうと思って、しかしそれでも一応来た言い訳程度は出来るかと、小さく小さくノックする。
「誰かね?」
マジか。起きてた。
「レィア・シィルです」
「入りなさい」
許可が出たので扉を静かに開き、中へ入る。
執務室の中は相変わらず光源が無く、しかし不思議なことに暗くはない。はっきりとルプセルの顔が見えるし、その眉間に刻まれた深い皺も良く見えた。
ルプセルは俺を一度見、深く息を吐いた。
「まずはこちらから一つ詫びよう。王都という私達が守る地で、君という客人が生死の狭間を彷徨うという事はあってはならない事だ。それについては申し訳ないと思っている」
最初にルプセルはそう言った。
「しかし、それ故に君が起こした騒動について、私は取り締まらねばならない。まずは君の報告を聞いてから処罰を決める。君には出来るだけ真実を話して欲しい」
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜
雪野 結莉
恋愛
魔物を倒す英雄となる運命を背負って生まれた侯爵家嫡男ルーク。
しかし、赤ん坊の時に魔獣に襲われ、顔に酷い傷を持ってしまう。
英雄の婚約者には、必ず光の魔力を持つものが求められる。そして選ばれたのは子爵家次女ジーナだった。
顔に残る傷のため、酷く冷遇された幼少期を過ごすルークに差し込んだ一筋の光がジーナなのだ。
ジーナを誰よりも大切にしてきたルークだったが、ジーナとの婚約を邪魔するものの手によって、ジーナは殺されてしまう。
誰よりも強く誰よりも心に傷を持つルークのことが死してなお気になるジーナ。
ルークに会いたくて会いたくて。
その願いは。。。。。
とても長いお話ですが、1話1話は1500文字前後で軽く読める……はず!です。
他サイト様でも公開中ですが、アルファポリス様が一番早い更新です。
本編完結しました!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ボッチ英雄譚
3匹の子猫
ファンタジー
辺境の村で生まれ育ったロンは15才の成人の儀で「ボッチ」という聞いたこともないジョブを神様から授けられました。
ボッチのジョブはメリットも大きいですが、デメリットも大きかったのです。
彼には3人の幼馴染みと共に冒険者になるという約束がありましたが、ボッチの特性上、共にパーティーを組むことが難しそうです。彼は選択しました。
王都でソロ冒険者になることを!!
この物語はトラブルに巻き込まれやすい体質の少年ロンが、それらを乗り越え、いつの日か英雄と呼ばれるようになるまでを描いた物語です。
ロンの活躍を応援していきましょう!!
どこにでもある異世界転移~第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!
ダメ人間共同体
ファンタジー
第三部 今最後の戦いが始る!!・・・・と思う。 すべてのなぞが解決される・・・・・と思う。 碧たちは現代に帰ることが出来るのか? 茜は碧に会うことが出来るのか? 適当な物語の最終章が今始る。
第二部完結 お兄ちゃんが異世界転移へ巻き込まれてしまった!! なら、私が助けに行くしか無いじゃ無い!! 女神様にお願いして究極の力を手に入れた妹の雑な英雄譚。今ここに始る。
第一部完結 修学旅行中、事故に合ったところを女神様に救われクラスメイトと異世界へ転移することになった。優しい女神様は俺たちにチート?を授けてくれた。ある者は職業を選択。ある者はアイテムを選択。俺が選んだのは『とても便利なキッチンセット【オマケ付き】』 魔王やモンスター、悪人のいる異世界で生き残ることは出来るのか?現代に戻ることは出来るのか?
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる