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本編
ルールと部屋
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部屋を出、ユーリアは開口一番「良かったな」と俺に言ってきた。
「父に気に入られたらしいぞ。出て行けと言われなくて少々安心した」
「ここまでして泊まれる保証は無かったのか」
「あぁ。以前父に説明した上で友人を家に泊めようとしたのだが、父が友人を一度連れて来いと言うので連れて行ったら、有無を言わさずに追い出された」
「おぉう…」
勝手に誘拐された上、その後やっぱ帰れとなっていたら、正面俺もリアクションに困る。
「はは、そう言うな。正直私も君が父に追い出されるとは思ってなかったぞ。追い出された友人も、無理矢理私に付きまとって入ってきた図々しい輩だったしな」
すげぇな、大貴族の家に泊まりこもうとする図々しい誰かさん。良くもまぁやろうと思ったもんだ。
「ところでひとつ、最優先で聞きたいんだがいいか?」
「うん?構わんぞ」
「お前の親父さんっていつから剣を握ってるんだ?」
「本人曰く、五つの時に見せられた父の短剣…要は私の祖父だな。それがきっかけで、以来ずっと身体を鍛えて来たらしい」
俺の質問は予想されていたのだろう、ユーリアの口から澱みなくルプセルについて語られる。
「本格的に剣を握ったのは十歳の時、誕生日に贈られた鉄の剣だったらしい。それからひたすら兵士として都市の防衛や警備として都市に貢献し、働きぶりから耳長種の部隊に組み込まれ、そこで母と会って結婚、今に至るというのがざっくりとした経歴らしい」
「………ん?つまりお前の親父さんってヒト…?」
「あぁそうだ。言ってなかったか?」
初耳だ。あるいは言われていても覚えていない。だとしたら、あの耳はどういうことなのだろうか。耳長種と交わったら身体に変化が起こるのか…?
…とりあえず、友人の父親についての考察は後回しだ。俺には聞いておかにゃならん事があるだろう。
「そうか。分かった。で、さっき言ってたんだが、禁則事項ってのは何だ」
やっぱりこう、大貴族の家だから結構気にしなくちゃならんしきたりとか、入っちゃならん部屋とかあるんだろう。
「あぁ、簡単に言うと、王城への立ち入りと大聖堂への立ち入りの禁止だな。当然と言えば当然だが。あとはこれをつけておいてくれ」
そう言って渡されたのは、銀の剣の意匠を施された腕輪。
受け取ると、思ったよりは軽い。とはいえ、叩くと中は空洞ではないらしい。
「剣の一族の客人である証だ。それをつけておかないと不審者扱いだからな。気をつけろ」
「ほい了解。ところでこの剣の意匠って」
明らかに見覚えのある形、細部まで作り込まれたそれは、剣に彫り込まれた小さな文字までしっかりと読める程精巧に作られている。
もっとも、読める程とは言ったものの、解読出来るかどうかは別の話だが。
「当然そうだ。前も言ったと思うが、耳長種は魔力で物を見る。間違ってもそれを使うなよ?」
「おっけ。んじゃ部屋への案内と屋敷の説明頼むな」
「あぁ。まずは君の部屋を先に案内すべきだな」
「父に気に入られたらしいぞ。出て行けと言われなくて少々安心した」
「ここまでして泊まれる保証は無かったのか」
「あぁ。以前父に説明した上で友人を家に泊めようとしたのだが、父が友人を一度連れて来いと言うので連れて行ったら、有無を言わさずに追い出された」
「おぉう…」
勝手に誘拐された上、その後やっぱ帰れとなっていたら、正面俺もリアクションに困る。
「はは、そう言うな。正直私も君が父に追い出されるとは思ってなかったぞ。追い出された友人も、無理矢理私に付きまとって入ってきた図々しい輩だったしな」
すげぇな、大貴族の家に泊まりこもうとする図々しい誰かさん。良くもまぁやろうと思ったもんだ。
「ところでひとつ、最優先で聞きたいんだがいいか?」
「うん?構わんぞ」
「お前の親父さんっていつから剣を握ってるんだ?」
「本人曰く、五つの時に見せられた父の短剣…要は私の祖父だな。それがきっかけで、以来ずっと身体を鍛えて来たらしい」
俺の質問は予想されていたのだろう、ユーリアの口から澱みなくルプセルについて語られる。
「本格的に剣を握ったのは十歳の時、誕生日に贈られた鉄の剣だったらしい。それからひたすら兵士として都市の防衛や警備として都市に貢献し、働きぶりから耳長種の部隊に組み込まれ、そこで母と会って結婚、今に至るというのがざっくりとした経歴らしい」
「………ん?つまりお前の親父さんってヒト…?」
「あぁそうだ。言ってなかったか?」
初耳だ。あるいは言われていても覚えていない。だとしたら、あの耳はどういうことなのだろうか。耳長種と交わったら身体に変化が起こるのか…?
…とりあえず、友人の父親についての考察は後回しだ。俺には聞いておかにゃならん事があるだろう。
「そうか。分かった。で、さっき言ってたんだが、禁則事項ってのは何だ」
やっぱりこう、大貴族の家だから結構気にしなくちゃならんしきたりとか、入っちゃならん部屋とかあるんだろう。
「あぁ、簡単に言うと、王城への立ち入りと大聖堂への立ち入りの禁止だな。当然と言えば当然だが。あとはこれをつけておいてくれ」
そう言って渡されたのは、銀の剣の意匠を施された腕輪。
受け取ると、思ったよりは軽い。とはいえ、叩くと中は空洞ではないらしい。
「剣の一族の客人である証だ。それをつけておかないと不審者扱いだからな。気をつけろ」
「ほい了解。ところでこの剣の意匠って」
明らかに見覚えのある形、細部まで作り込まれたそれは、剣に彫り込まれた小さな文字までしっかりと読める程精巧に作られている。
もっとも、読める程とは言ったものの、解読出来るかどうかは別の話だが。
「当然そうだ。前も言ったと思うが、耳長種は魔力で物を見る。間違ってもそれを使うなよ?」
「おっけ。んじゃ部屋への案内と屋敷の説明頼むな」
「あぁ。まずは君の部屋を先に案内すべきだな」
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