大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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人の拳ってあんま頑丈じゃないのな。
素手でアレを殴ってから地味にじんじんと痛い。
それはさておき。
「アーネ、早くしろー」
「待ってくださいまし!男物しかないんですの!それにサイズも…」
「…いや、そりゃ当然だろ…」
今何してるかって?彼女の服を見繕ってる。
都市長をぶん殴った後、速攻で亀が頭につく縛り方と、猿が頭につく物理的な口封じを噛ませた後、ひとまず暫く時間はあるので真っ先に身体を洗わせてもらった。
時間があるとはいえ、いつアレが起きるかどうか分からなかったので、五分あったかどうかという時間で血と臭いを簡単に落としただけだったが。
彼女の身体中に長年染み込んだ臭いは中々取れず、仕方なく諦めたが、それでも最初よりかは圧倒的にマシになった。
で、長くて鬱陶しそうにしていたから、髪もザックリと適当に切ってやった。散髪の経験がある奴なんてこの場にいなかったし、ハサミも周りに無かったから、アーネの短剣でザックザック切ってやっただけだが。
少し短すぎた気がしないでもないが、まぁ問題あるまい。
そしてここで問題発覚。
彼女、ほとんど服を着ていなかったらしい。髪で隠れてわかんなかった。
んでまぁ、切ったらそれがわかった訳で。
一応、ボロ切れみたいな物が引っかかってはいたものの、雑巾とは呼べても間違っても服とは呼べない物だったので。
アーネが彼女の手を引っ掴んで都市長の部屋を即座に発見、そこに入って服を見繕い、今に至る。
ガチャ。
「おう、やっと終わったか。ほら行くぞ」
「…何か言うことはないんですの?」
「あん?」
アーネが手を引く彼女を見る。
やはりサイズが合わなかったのか、ダボダボの男物のシャツと、ジーンズを穿かせていた。
ただ、無理矢理合わせようとした結果か、シャツは袖口などがサイズを合わせるために、ジーンズは股の辺りで両足の部分をちぎったらしく、腕と足をほとんど出していた。
ふむ、七十歳超えてるとか聞いてたけど、趣味は二十、三十歳ぐらいだったのな。見た目がそれだし、持ってた服もそんなもんか。
「いいんじゃねぇの?これから暑くなりそうだし」
「……はぁ」
『今代の…』
何か悪いこと言ったか?アーネの視線が痛い。
「そら、次だ。行くぞ」
「次はどこへ行くんですの?」
「外に出て飯だな。長いこと飯とか食ってなかったんだろ?」
その言葉に彼女は目を僅かに嬉しそうに輝かせる。
うん、ガキはやっぱりそういう顔をしてるのが一番だ。
「長い間って…一体どのぐらいですの?」
地下にいたから彼女は正確なことは分からないらしく、指を折っていき両の指を曲げきったところでこちらをみて首を傾げる。
『別に何もおかしいことじゃないさ。魔族とのハーフなんだろ?魔族は一度腹を満たしたら年単位で食べる必要はなくなる。小さい赤ん坊でも一年は余裕か。ついでに言うなら、そのまま戦う事もな。アイツらはヒト種とは比べ物にならない程の寿命と持続力を持つ、生まれながらの戦闘種族だ。その性質が受け継がれてたんだろ』
さすが勇者の亡霊様、魔族のことは何でも知ってるんだな。
そんでもやっぱり、気に食わねぇ。
「そんだけ食ってなかったんだろ?ならやっぱり、次は飯だな」
そう言って俺は彼女を抱き上げ、本当の外に出た。
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