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本編
早朝と目的地
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そして翌朝…というか七時間後。
およそ六時間の睡眠を経て起床した俺は、昨晩のうちに纏めておいた荷物を引っ掴んで、そのまま宿屋を出た。
行先はこの前呼び出された宿舎の方。何となくそこにはいないだろうと思いつつ、しかし行く宛てもないのでそこへ向かう。
ただ、そうしながらニケにメッセージも飛ばす。多分ガロンの指揮下に魔法部隊はない。当然ガロンの部下であるニケと魔法部隊は関係がないだろう。
だが、関係が無いとはいえ何か知ってるはず。どこに魔法部隊の宿舎があるかとか、なんならあの隊長のいる場所を直に知ってる可能性も無くはないだろう。
『あ!レィアさん!?』
「ようニケ。繋がって良かった。実はここを出る前にちょいとお前さんに聞きたいことがあってな」
『すいませんそれどころじゃないです出来たらすぐに来てください!』
「……あん?」
珍しく切羽詰まった声。メッセージは使用者の声しか飛ばさないため、周りの音などは聞こえないが、彼女の呼吸音なら聞こえる。
かなり荒れていて、息も浅い。まるで全速力で走ったあとのように。
『突然僕の同僚が暴れ始めて──うわっ!?』
「お前の同僚が…?」
意味がわからん。でも、つい最近の心当たりならある。
「あぁ、虫か」
『多分はい!余裕ないんで切ります!』
と言って切れた。
「………。」
『どうする?明らかに奴の手だと思うが』
「まぁ、十中八九は間違いないだろうが…さて、このタイミングでやった理由と、その相手がなんでニケの同僚なのかって所が分かんねぇなぁ」
そう言って足をさらに早める。あぁいや、面倒だ、人が邪魔で仕方がない。
「ふっ」
跳躍、そして屋根の上に着地。
プクナイムの家々の屋根は非常に頑丈で、それでいて斜面が少ない。つまりとても走りやすい。明らかにそんな事想定はされてないだろうが、次々と屋根を飛び移って駆けていく。
そして、この高さなら直接宿舎が見える。今は特に黒煙が上がっていたり、一角が崩れていたりと言った状況ではないが、耳に集中してみると金属同士がぶつかり合う甲高い音が聞こえる。
「こりゃ…不味いな」
ニケが応戦しているとすれば、彼女の能力は室内向きではない。加えて、優しいアイツは同僚を傷つける事を嫌って本気を出せないだろう。
一方相手は先日の魔法部隊の奴らと同じならば半ば暴走状態。同僚であることなど歯牙にもかけず全力を出すだろう。
と。
「ん…詠唱?」
耳に聞こえてきたのは微かな声。ニケのものでは無い。女性のやや高めの声でその魔法は紡がれていく。
音は拾えるが、単語の意味が理解できない。同じ言語であるのは間違いないのだが、頭の中で変換できずに耳からつるりと抜けて行く。
ただ反応したのは、俺ではなくシャル。
『あ?』
と一言上げ、しばらく黙る。
どうした、と声をかけようとしたら、シャルが再び口を開いた。
『神仰系?だがアレンジがかなり…いやまて、射程がシャレにならん…おいレィア!』
「あぁ!?」
『突っ込め!全力であの魔法を止めろ!あと五秒もせずに完成すんぞ!』
「はぁ!?」
普通に走れば恐らくあと一分。それを五秒まで縮めろと。無茶を言いなさる。
いや、だがまぁ。
「………。」
開け放たれた窓が、宿舎にあいていた。
そして今気づいた事だが、声はそこから聞こえるらしい。
そこからここまで、物差しで引けるような、綺麗な一直線のラインが見えた。
「使うぞ──」
そう言うだけ言って、足を撓める。
起動するのは第二と第六の血界。第二だけだと速度が足りない。第六だけだと着地が出来ない。
足と心臓に刻印が入ったことを感じた瞬間、俺は地面を──もとい天井を蹴った。
およそ六時間の睡眠を経て起床した俺は、昨晩のうちに纏めておいた荷物を引っ掴んで、そのまま宿屋を出た。
行先はこの前呼び出された宿舎の方。何となくそこにはいないだろうと思いつつ、しかし行く宛てもないのでそこへ向かう。
ただ、そうしながらニケにメッセージも飛ばす。多分ガロンの指揮下に魔法部隊はない。当然ガロンの部下であるニケと魔法部隊は関係がないだろう。
だが、関係が無いとはいえ何か知ってるはず。どこに魔法部隊の宿舎があるかとか、なんならあの隊長のいる場所を直に知ってる可能性も無くはないだろう。
『あ!レィアさん!?』
「ようニケ。繋がって良かった。実はここを出る前にちょいとお前さんに聞きたいことがあってな」
『すいませんそれどころじゃないです出来たらすぐに来てください!』
「……あん?」
珍しく切羽詰まった声。メッセージは使用者の声しか飛ばさないため、周りの音などは聞こえないが、彼女の呼吸音なら聞こえる。
かなり荒れていて、息も浅い。まるで全速力で走ったあとのように。
『突然僕の同僚が暴れ始めて──うわっ!?』
「お前の同僚が…?」
意味がわからん。でも、つい最近の心当たりならある。
「あぁ、虫か」
『多分はい!余裕ないんで切ります!』
と言って切れた。
「………。」
『どうする?明らかに奴の手だと思うが』
「まぁ、十中八九は間違いないだろうが…さて、このタイミングでやった理由と、その相手がなんでニケの同僚なのかって所が分かんねぇなぁ」
そう言って足をさらに早める。あぁいや、面倒だ、人が邪魔で仕方がない。
「ふっ」
跳躍、そして屋根の上に着地。
プクナイムの家々の屋根は非常に頑丈で、それでいて斜面が少ない。つまりとても走りやすい。明らかにそんな事想定はされてないだろうが、次々と屋根を飛び移って駆けていく。
そして、この高さなら直接宿舎が見える。今は特に黒煙が上がっていたり、一角が崩れていたりと言った状況ではないが、耳に集中してみると金属同士がぶつかり合う甲高い音が聞こえる。
「こりゃ…不味いな」
ニケが応戦しているとすれば、彼女の能力は室内向きではない。加えて、優しいアイツは同僚を傷つける事を嫌って本気を出せないだろう。
一方相手は先日の魔法部隊の奴らと同じならば半ば暴走状態。同僚であることなど歯牙にもかけず全力を出すだろう。
と。
「ん…詠唱?」
耳に聞こえてきたのは微かな声。ニケのものでは無い。女性のやや高めの声でその魔法は紡がれていく。
音は拾えるが、単語の意味が理解できない。同じ言語であるのは間違いないのだが、頭の中で変換できずに耳からつるりと抜けて行く。
ただ反応したのは、俺ではなくシャル。
『あ?』
と一言上げ、しばらく黙る。
どうした、と声をかけようとしたら、シャルが再び口を開いた。
『神仰系?だがアレンジがかなり…いやまて、射程がシャレにならん…おいレィア!』
「あぁ!?」
『突っ込め!全力であの魔法を止めろ!あと五秒もせずに完成すんぞ!』
「はぁ!?」
普通に走れば恐らくあと一分。それを五秒まで縮めろと。無茶を言いなさる。
いや、だがまぁ。
「………。」
開け放たれた窓が、宿舎にあいていた。
そして今気づいた事だが、声はそこから聞こえるらしい。
そこからここまで、物差しで引けるような、綺麗な一直線のラインが見えた。
「使うぞ──」
そう言うだけ言って、足を撓める。
起動するのは第二と第六の血界。第二だけだと速度が足りない。第六だけだと着地が出来ない。
足と心臓に刻印が入ったことを感じた瞬間、俺は地面を──もとい天井を蹴った。
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