1,454 / 2,027
本編
片付けと要求
しおりを挟む
ニケが戻ってきたのはおよそ二十分程してから。思った以上にかかったようだが、連れてきた治癒師の腕は充分だった。
「綺麗な断面ですね…これなら傷も残らないでしょう」
とはその治癒師の言葉。中には女性もいたので、傷が残らなさそうだと聞いて少し安心した。
さて。
この日はこの後、特に何も起こらずに夜が訪れ、耽け、そして明けた。
朝になって、昨日と同じようにニケからメッセージがあり、宿舎へ向かうと、ガロンとニケが出迎えて、昨日の状況を説明してくれた。
俺とニケが森で別れた後、ニケは俺が言ったように、原因は何者かが糸で操っている訳ではなく、中に虫が入っているからだと説明。
それを聞いたガロンは、即座に魔法部隊に連絡を取り、都市の外に居た魔獣を殲滅した。
しかし、混戦中の場所にはどうしても魔法を撃ち込むことが出来なかったため、対応が遅れた。俺が虫を引きずり出した三人はその時にやられたらしい。
また、本人達の証言によると、「意識があっても身体が言うことを聞かず、ヒトに向けて魔法を放つと、えも言われぬ快感が背筋を走った」との事だ。
ちなみに全員、記憶は朧気だがあるようで、虫を引きずり出される時はただただ絶望的なまでの恐ろしさを感じていたという。なんか漠然としてんな。
何はともあれ、魔獣の侵攻も一気に減って落ち着いた。昨晩は一体も現れなかったらしいし、寄生虫はほぼほぼ滅ぼしたと見ていいだろう。仮に残っていたとしても、今までのような大群で襲ってくるのでさえなければ、対処のしようはあるだろう。
事態はひとまず収束に向かっていった。
「ところでだ」
ガロンが声を上げた。
「あん?どうした」
「君はニケ君と取引したらしいな。なんでも、暴れた魔法部隊の鎮圧に手を貸してくれたとか」
「あ?あぁ。まぁな」
鎮圧っつーか…なんて言うんだあれ。捕まえて虫をぶっこ抜いただけなんだが。
「その報酬は、一体何を望むんだ?」
「あん?」
はて…あぁ、そういえば要求を言っていなかったかもしれないな。
「そんな大したモンじゃない。一年ぐらい前の妖精種の都市長の行方を知りたい。と言うか、今の居場所を知りたい」
「………何故それを?」
「いや何、俺の友達がちょいとその都市長といざこざがあってね。都市に来てた理由も一年前の都市長に会って話したかったからだな」
「……分かった。では、近日中に──」
「あぁ、悪いが…俺ももう数日したらこの都市から出ていかにゃならん。明日だ、明日、会わせてくれ」
無茶を言っている自覚はあるが、これぐらい求めても…まぁ、いいよな。
「綺麗な断面ですね…これなら傷も残らないでしょう」
とはその治癒師の言葉。中には女性もいたので、傷が残らなさそうだと聞いて少し安心した。
さて。
この日はこの後、特に何も起こらずに夜が訪れ、耽け、そして明けた。
朝になって、昨日と同じようにニケからメッセージがあり、宿舎へ向かうと、ガロンとニケが出迎えて、昨日の状況を説明してくれた。
俺とニケが森で別れた後、ニケは俺が言ったように、原因は何者かが糸で操っている訳ではなく、中に虫が入っているからだと説明。
それを聞いたガロンは、即座に魔法部隊に連絡を取り、都市の外に居た魔獣を殲滅した。
しかし、混戦中の場所にはどうしても魔法を撃ち込むことが出来なかったため、対応が遅れた。俺が虫を引きずり出した三人はその時にやられたらしい。
また、本人達の証言によると、「意識があっても身体が言うことを聞かず、ヒトに向けて魔法を放つと、えも言われぬ快感が背筋を走った」との事だ。
ちなみに全員、記憶は朧気だがあるようで、虫を引きずり出される時はただただ絶望的なまでの恐ろしさを感じていたという。なんか漠然としてんな。
何はともあれ、魔獣の侵攻も一気に減って落ち着いた。昨晩は一体も現れなかったらしいし、寄生虫はほぼほぼ滅ぼしたと見ていいだろう。仮に残っていたとしても、今までのような大群で襲ってくるのでさえなければ、対処のしようはあるだろう。
事態はひとまず収束に向かっていった。
「ところでだ」
ガロンが声を上げた。
「あん?どうした」
「君はニケ君と取引したらしいな。なんでも、暴れた魔法部隊の鎮圧に手を貸してくれたとか」
「あ?あぁ。まぁな」
鎮圧っつーか…なんて言うんだあれ。捕まえて虫をぶっこ抜いただけなんだが。
「その報酬は、一体何を望むんだ?」
「あん?」
はて…あぁ、そういえば要求を言っていなかったかもしれないな。
「そんな大したモンじゃない。一年ぐらい前の妖精種の都市長の行方を知りたい。と言うか、今の居場所を知りたい」
「………何故それを?」
「いや何、俺の友達がちょいとその都市長といざこざがあってね。都市に来てた理由も一年前の都市長に会って話したかったからだな」
「……分かった。では、近日中に──」
「あぁ、悪いが…俺ももう数日したらこの都市から出ていかにゃならん。明日だ、明日、会わせてくれ」
無茶を言っている自覚はあるが、これぐらい求めても…まぁ、いいよな。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記
スィグトーネ
ファンタジー
ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。
そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。
まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。
全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。
間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。
※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています
※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる