大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

捕縛と移送

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「これで…全部か?」
ぶん投げたマキナは老人に当たる直前で開き、金属の網を張って老人を捕縛した。
やはり背骨のあたりに寄生虫らしき魔力が見えたので、この老人が当たりだろう。
こんな爺さんが魔法部隊にいるのかと少し驚いたが、経験という点では間違いなくトップクラスなんだろうな。
『あぁ多分な。相手が魔法部隊だってのは楽でいいねぇ。なんせ俺達と相性がいい』
「まぁな。楽だったのは間違いないが…」
問題はこの後。魔法使いから杖や指輪を取り上げれば、魔力を体外で収束させる手段が無くなるので魔法は放てなくなる。
一応これで無力化は出来るし、万が一、素手でも戦える場合にも備えて手足は俺の髪で縛ってある。
だが問題はこれで解決する訳では無い。
「レィアさん!…まさかもう終わって」
「俺を舐めんな。多分この爺さんでひとまず終わりだ」
「…!グライブ殿!?」
「誰でもいい。ともかく隔離した奴らの場所教えろ。今から処理する」
「処理…その、殺す訳では無いですよね?」
「はぁ?馬鹿抜かせ。殺さないために俺に頼んだんだろうが。中に入った虫を引きずり出す」
そう言うと、ニケは明らかにほっとしたように「こちらです」と俺を案内し始める。
『出来るのか?そんな事』
「さぁ。俺もそうやる事じゃないし、自分の身体でやったぐらいだしな」
『…そんなことがあったのか。俺、その話知らんぞ』
あれはいつだったか。森で魔獣と戦った時に、針のようなものを撃たれて身体を掠めた時のことだ。
その魔獣は特に苦戦することも無く倒せたのだが、俺の身体を掠めた針は、奴の持つ卵の様なものだったらしく、夜になって俺の脇腹が猛烈に痛み始めた事が一度あった。
痛みに涙しながら脇腹を裂いて、血が流れないよう調整して、途中でナナキが血の臭いで起きそうになったのを誤魔化して、およそ一時間の格闘の末、ようやく細長い針金のような卵を取り出したのだった。
「まぁ、あんまり話してて楽しいモンじゃないしな」
「ここです」
「……ここは…」
都市の外れの一軒家。あまり大きくはないが、手入れはしっかりと行き届いており、誰がどう見ても誰かが住んでいる家。
「僕らが住んでる家ですね。今は誰もいないので、ちょうどいいかと思って」
「アゼロスはどうした?」
「今は避難してます。今頃は都市中央の噴水公園で僕の同僚が守ってるはずです」
お前は行かなくていいのかと一瞬思ったが、そもそも今は俺と一緒に特別行動中だったか。
「ならとりあえず、風呂場を貸してくれ。どうせ汚れるなら、片付けが楽な場所の方がいい」
何気なくそう言うと、ニケは苦笑しながら、
「すみません、僕の家、お風呂場ないんですよ」
と言った。
そういや、風呂は普通公衆浴場だったな。十五号室に長いこといたせいですっかり忘れてた。
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