大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

突撃と跳躍

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少しでも猶予が出来るようにとニケが速度を上げ続け、ガラガラガタガタと鳴っていた荷車はついに限界直前まで来た。
このままでは間違いなく高壁に着く前に荷車が崩壊する。しかし、一秒でも早く着かなくてはならないというニケの気持ちもよくわかる。
『…おいレィア』
「あんだ?」
小声でそう聞き返す。きっとニケの耳に届く前に、悲鳴のようにすら聞こえる荷車の音でこの声はかき消されるのだろうが。
しかしシャルにはちゃんと聞こえていたようで、聞き返すことはしなかった。
『偶数番の血界を許可する。気を抜くなよ』
「…珍しいな。お前から先に言うなんて。魔族絡みでも狭間の子関係でもないのに」
『流石に今回ばかりは特例だ。ヒトにすら寄生する虫が、もしも俺達に寄生出来たら一番まずい。そのための自己強化系偶数番の許可だ』
どのような手段で寄生するのか全く想像がつかないが、とにかく可能性は少しでも排除したいのだろう。まぁ、仮に乗っ取られたら本当に不味いからな。
いや、もしかしたら俺には効かない可能性が僅かにあるのか。しかしそれに賭けるのはあまりに危険だ。
「了解。気を引き締めていきますか」
そう言った時、荷車を引くニケが声を上げた。
「見えてきました!魔法に注意を!」
「おう!だがな、他人より自分の心配しとけよ!ニケ!」
前方には魔法の光が音と破壊を撒き散らしているのがよく見える。あれだけの魔力を景気よくぶっ放ししているという事は、宿主の魔力が多かったのか、それとも宿主など気にもせず魔法をただ撃ち続けているだけなのか。
もしそうなら、いずれ魔力が枯渇する。いや、むしろ良く持っていた方だろう。
「ニケ!お前はどうすんだ!?残るのか!?」
「下がります!僕の剣ではどうしても彼らを殺してしまうので!」
確かに彼女の剣はヒトを気絶や捕縛するのに絶望的に向いていない。
「賢明な判断だ!んじゃ早く下がれよ!」
そんじゃ、許可も出てるし時間もないし、気兼ねなく。
「あ!それとニケ!」
「はい!?なんでしょうか!?」
第二血界起動──
「この荷車壊してすまん!」
《血呪》!
直後、俺の跳躍のせいでが木っ端微塵になる荷車が後ろに見えた。
『《血鎧》張っとけ一応。何が来てもおかしく──』
突如落ちたのは落雷。空を割る乾いた破裂音と共に俺のすぐ脇を通って落ちた。
「っぶね」
『…なぁ、レィア。ついさっきまで雲なんてあったか?』
「あ?そういや無かっ──」
二発目の雷撃。今度も俺のすぐ横を通って地面に落雷。さらに間髪入れずに三発目──
「いやいやおかしい、って!」
咄嗟に第四血界《血鎧》を発動。落雷が俺に当たるが、当の俺は無傷。
やはり天然の落雷ではなく魔法によるものだったらしい。
「随分と刺激的な歓迎だな。俺じゃなきゃそのまま昇天コースだった──ぞっ、と」
マキナを纏い、ガリガリと地面を削りながら着地。目の前には無差別に魔法を放つ人影。手始めにこいつか。
「さぁ、かかってこい」
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