大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
326 / 2,027
本編

片付けと質問

しおりを挟む
そういう訳でルトはユーリアに引きずられていき、俺の銀剣を、あの召喚魔法…だったか?ほら、あの《ナイト・オーダー》とかいう魔法。あれを使ってわざわざ使って運んでもらった。
ちなみにルトは一応生きてた。あれで死なないなら、殺しても死にそうになさそうだな…。
軽く俺もユーリアからお叱りを受けたが、その後にユーリアが「さて…」と言いながらルトの首根っこを掴んで自室に入って行った時に見えた横顔から察するに、俺への説教なんてメじゃないぐらいの説教が待ってそうだ。
まぁ、同情はしないが。一切。
で、今は。
「なんでっ…!私がっ…!貴女がっ…!散らかした部屋をっ…!片付けてるんですのーーーーー!!」
とまぁ、若干推測のつくように、アーネが部屋を片付けてる真っ最中。
「そりゃ仕方ない。俺はボロボロの身体で戦技アーツ撃っちまって結構身体にキてるから、お前しか動けないだろ」
上半身を起こしつつ、アーネの質問に答えてやる。
「そもそも貴女が煌覇こうはなんて撃たなければ良かったんじゃありませんの!?」
ははっ、アーネ…。
「いいか?アーネ。アレの恐ろしさは体験してない者には理解できない。というか筆舌に尽くしがたい。俺は男で相手も男、しかも顔を少し蒸気させつつ、どこぞの乙女よろしく視線をキョロキョロさせて『好きだ婚約してくれ』。オマケに相手はガタイが良くてこっちは怪我人てロクに動けないんだぞ?もし俺が怪我をしてなかったら煌覇こうはだけじゃ留まらなかったな」
「貴女…仮にも先輩を殺す気でしたの…?」
「馬鹿言え」
ばふっ、と身体をベッドに沈める。
「殺す気だった、じゃなくて今後ああいう事があるなら絶対に殺してみせる!」
マジでアレは鳥肌ものだ。悪寒でブルブルだ。多分、過去に出会ったどんな魔獣よりも怖かった。いや、絶対。
「馬鹿なことを言うんじゃありませんの!!」
あー、糞、なんて言うかな…伝わりにくいか…?
…そうか。
要はアーネが嫌いな人物が告白してきたと置き換えればいいのか。
「よし分かった、想像してみろ」
「なんですの?」
吹っ飛んだ椅子を片付けつつ、アーネが反応を返す。
「お前の身体が一切動かない状態で、目の前に俺が顔赤くしてモジモジと、そりゃもう女々しくして──おい、顔が既に女々しいとか言うツッコミはいらんぞ?──好きです付き合って下さい、なんて言ってきたら…どうする?」
すると、その質問をした瞬間、アーネがフリーズした。
そのまま十秒…二十秒…三十秒。
流石に不審がって声をかけてみる。
「おーい?アーネ?」
「そっ!そそそそ!そそっ!そんな事!当然拒否しますわ!!」
「だろう?」
よし、何とか伝わった様だ。
そう思って、俺はゆっくりと目蓋を下ろした。
…そういや、眠りに落ちる直前、アーネが何やらゴニョゴニョ言ってたっぽいが、ほとんど聞き取れなかった。
確か「お付き合いじゃなくてもっと──」みたいな事が聞こえた…気がする。
多分気のせいだが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記

スィグトーネ
ファンタジー
 ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。  そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。  まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。  全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。  間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。 ※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています ※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...