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本編
赤靴と銀甲2
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《血呪》
心の中でそう叫び、スイッチを入れる。
同時にマキナを全身に装着するよう起動。血呪の黒い紋様を隠す。
「早いナ。その鎧が切り札カ?」
余裕の女──ピィの足を蹴払い、その勢いのまま立つ。
しかしピィは足払いを軽く跳躍し回避。着地と同時に立ち上がり中の俺の額に踵を突き刺すような蹴りを放ってくる。
正面からヒールを受けたマキナは凄まじい音と共に破損。俺の額に当たることは無かったが、マキナの鎧に穴が空いた。
「ちっ。硬いナ」
そのまま引っ掛けて転ばそうとしたが、相手が足を引き戻す方が早い。
なんとか立ち上がり、相手を真正面から見据える。
間合いは蹴りを多用する上に身長が高い相手の間合い。加えてこちらの間合いは──あぁいや。
馬鹿正直に真正面から戦う必要は無いか。
「《血瞬》」
歯と歯の隙間から絞り出すように声を出し、ほんの一瞬の加速を得る。
血呪との併用、それも狭い室内での使用は自殺行為と同義。壁にぶつかって即死してもおかしくないのだが、奇跡的に血瞬は成功した。
方向は斜め四十五度上。狭い職員室の中でも、まだ空間的にゆとりのある天井へ向けての跳躍。
発動と同時に血瞬を切ったのに、受身を取るのが精一杯の超加速。むしろ血呪がなかったら身体の強度的に持たなかったかもしれない。
なんにせよ、凄まじい勢いで跳躍した俺は天井に衝突する直前、辛うじて反応してダメージを和らげるために受身。そこから即座に建て直し、ピィへ向けて真下に落下する。
「!?」
驚いたのはピィだろう。突如目の前の相手が消え、何かがぶつかる音が上でしたと思ったら、消えた相手が鎧を纏ったまま上から落下してくるのだ。
「……!」
即座に相手が回避を取る。蹴りで相殺するには真上という位置はあまりに不利。だから回避。なるほど合理的だ。
回避ができればの話だが。
「ナッ…!?」
ピィが目を見開いて自身の両耳を触る。
そこには細い白銀の髪が輪を作り、彼女の耳に引っかかっているはずだ。そしてその先は俺の頭、つまり髪に繋がっている。
射程三メートルオーバー。拳より蹴りより長い、俺特有の髪というリーチ。
もしも回避などしていれば、髪が耳を引きちぎっていただろう。
「ク…!」
「くらえ…」
上からただただ落下して来た俺を、相手は回避出来ず──いや、回避をせず。
真っ向から受けた。
ピィの身体を真っ二つに割るようにして落ちる俺に対し、ピィはただ手を広げただけ。
そしてピィに触れた瞬間、片っ端からその身体を彼女は崩していく。
間違っても俺の攻撃のせいではない。バラバラ、ザラザラと崩れるが、血も何も流れない。
代わりに辺りに撒き散らされるのはパズルのピース。最初に俺の拳を受け止めた時に見たあのパズルのピースだ。
「そういう能力か…?」
ピィの能力は恐らく身体をパズルピースのような欠片にバラす能力。そうなれば、ほとんど物理攻撃が効かないと同意義ではないか。どうする。
そう思った瞬間、喉が焼けるような熱を持った。
続いて喉元を掻きむしりたくなるような異物感と自分ではない別の温度を感じ、おぞましくなって喉の部分の装甲を引き剥がした。
それを引っ掴んで思い切り引き抜くと、ずぅるぅと何かが抜けた。
俺はそれを床に投げ捨ててから、それが何だったかに気づいた。
それは赤い血で濡れた五センチ程度の親指だった。
心の中でそう叫び、スイッチを入れる。
同時にマキナを全身に装着するよう起動。血呪の黒い紋様を隠す。
「早いナ。その鎧が切り札カ?」
余裕の女──ピィの足を蹴払い、その勢いのまま立つ。
しかしピィは足払いを軽く跳躍し回避。着地と同時に立ち上がり中の俺の額に踵を突き刺すような蹴りを放ってくる。
正面からヒールを受けたマキナは凄まじい音と共に破損。俺の額に当たることは無かったが、マキナの鎧に穴が空いた。
「ちっ。硬いナ」
そのまま引っ掛けて転ばそうとしたが、相手が足を引き戻す方が早い。
なんとか立ち上がり、相手を真正面から見据える。
間合いは蹴りを多用する上に身長が高い相手の間合い。加えてこちらの間合いは──あぁいや。
馬鹿正直に真正面から戦う必要は無いか。
「《血瞬》」
歯と歯の隙間から絞り出すように声を出し、ほんの一瞬の加速を得る。
血呪との併用、それも狭い室内での使用は自殺行為と同義。壁にぶつかって即死してもおかしくないのだが、奇跡的に血瞬は成功した。
方向は斜め四十五度上。狭い職員室の中でも、まだ空間的にゆとりのある天井へ向けての跳躍。
発動と同時に血瞬を切ったのに、受身を取るのが精一杯の超加速。むしろ血呪がなかったら身体の強度的に持たなかったかもしれない。
なんにせよ、凄まじい勢いで跳躍した俺は天井に衝突する直前、辛うじて反応してダメージを和らげるために受身。そこから即座に建て直し、ピィへ向けて真下に落下する。
「!?」
驚いたのはピィだろう。突如目の前の相手が消え、何かがぶつかる音が上でしたと思ったら、消えた相手が鎧を纏ったまま上から落下してくるのだ。
「……!」
即座に相手が回避を取る。蹴りで相殺するには真上という位置はあまりに不利。だから回避。なるほど合理的だ。
回避ができればの話だが。
「ナッ…!?」
ピィが目を見開いて自身の両耳を触る。
そこには細い白銀の髪が輪を作り、彼女の耳に引っかかっているはずだ。そしてその先は俺の頭、つまり髪に繋がっている。
射程三メートルオーバー。拳より蹴りより長い、俺特有の髪というリーチ。
もしも回避などしていれば、髪が耳を引きちぎっていただろう。
「ク…!」
「くらえ…」
上からただただ落下して来た俺を、相手は回避出来ず──いや、回避をせず。
真っ向から受けた。
ピィの身体を真っ二つに割るようにして落ちる俺に対し、ピィはただ手を広げただけ。
そしてピィに触れた瞬間、片っ端からその身体を彼女は崩していく。
間違っても俺の攻撃のせいではない。バラバラ、ザラザラと崩れるが、血も何も流れない。
代わりに辺りに撒き散らされるのはパズルのピース。最初に俺の拳を受け止めた時に見たあのパズルのピースだ。
「そういう能力か…?」
ピィの能力は恐らく身体をパズルピースのような欠片にバラす能力。そうなれば、ほとんど物理攻撃が効かないと同意義ではないか。どうする。
そう思った瞬間、喉が焼けるような熱を持った。
続いて喉元を掻きむしりたくなるような異物感と自分ではない別の温度を感じ、おぞましくなって喉の部分の装甲を引き剥がした。
それを引っ掴んで思い切り引き抜くと、ずぅるぅと何かが抜けた。
俺はそれを床に投げ捨ててから、それが何だったかに気づいた。
それは赤い血で濡れた五センチ程度の親指だった。
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