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本編
検査と悲鳴
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さて、部屋に魔法陣は無かったがヴィクター本人の身体、あるいはそのすぐ近くに魔法陣がある可能性が出てきた。
そんな訳で、ヴィクターを早急に調べなくてはならない。何かの拍子に魔法陣が消えたりしたら非常に厄介なんでな。
「──って訳で脱げほら。とっとと」
「あのさぁ、ちょっと話がよく見えないんだけど、もうちょっと説明してくんない?」
現在夜八時過ぎで、場所はヴィクターの部屋。説明は軽くしたのだが、それでもヴィクターは少し混乱しているらしい。そりゃそうか。
「んで何?俺の身体見たいの?別にいいけど……その、そこのアーネちゃんも見てる訳?」
「あ?あぁ。俺じゃ魔法陣見てもよく分かんねぇからな」
「気にしないでくださいまし。男の裸は見慣れてますわ」
「いや、そう言われても健全な一男子としては精神衛生上どうしても…」
「とっとと脱ぐか、俺に剥かれるか、どっちがいい?」
そう言ってようやくヴィクターが服を脱ぎ始める。
どの魔法陣を探してるかは分かるが、アーネならその魔法陣から逆探知が出来ると言っていたのでアーネも連れてきたのだ。
「……ほら、これでいいか?」
そうこうしているうちに、ヴィクターはパンツ一枚になっていた。流石にアーネの前で全裸は嫌らしい。
「とりあえずはな。もしもなかったら生まれたままの姿をしたヴィクターを拝む事になるな…アーネ、服の方頼む」
「わかりましたわ」
「んじゃ、ちょいと触るぞ」
「あはぁんっ」
気色悪い声を上げるヴィクターを無視し、体表を触りつつ緋眼でチェックしていく。
身体の前側だとヴィクター自身が気づく可能性がある。ならばあるなら背面か。脇腹などにはないだろうが…うなじや肩甲骨、膝裏などはまず分からない。その辺を入念にチェックしていく…が、無い。
「んー…?これは…」
「お、おい、なんかあったのか?」
肩甲骨のやや下の方にあったかと思ったが違うわこれ。黒い線が何本かある程度。
「いや、無いな。アーネは?」
「無いですわね…となると」
俺達の視線がヴィクターの下半身に注目される。
「な、お、おい、嘘だろ?せめてこれだけは…」
「安心しろ、前の方は見ねぇ。どうせ描いてないだろうしな」
「そういう問題じゃなくてなぁ!」
がっちりと下着を掴んで離そうとしないヴィクター。これじゃ脱がせることも出来ん…なら。
「あぁそうだ、ケツ側から見てもはみ出るサイズならワンセット全部持ち上げといてくれ。野郎のナニを見て興奮するタチじゃないんでな」
「おまっ!」
ヴィクターの気が一瞬俺に向いたタイミングを狙って、一瞬で手を払って下着をずり下ろす。
「はぁっ!?」
慌てて反応するヴィクターの足を蹴払い、足が浮いた瞬間に下着を抜き去りアーネへパス。心底嫌そうな顔をするが、俺だって今から野郎のケツを触ったりじっくり見たりしにゃならんのだ。逆よりかマシだろう。
「てめぇレィア…後で覚えとけよ」
「お前自分のケツによっぽど自信があるのか?確かにハリはいいが…」
「そこじゃねぇよバカ!うぅくそぅ…」
………。
「アーネ」
「無い、ですわね」
「そうか。ヴィクター、一応前の方も…」
「ねぇよ!そんな魔法陣なんてよ!」
流石にヴィクターが嘘をついている訳ではあるまい。服を全部返し、ごそごそと着替え直すヴィクター。ちなみにアーネは一旦部屋を出てもらってる。
「そうか、悪かったな。今回の件は貸一って事で頼む。何かあったら手を貸す。そうだな…それとついでに、これ、いるか?」
すっと手を差し出すと、ヴィクターがとりあえず手を伸ばす。その手にそっとそれを置いて手を引く。
「ちくしょう…なんだってんだ?」
ヴィクターに渡したのは適当な宝石一つ。澄んだ蒼の輝きを放つ青宝玉。
「こんな場所なら何の役にも立たんだろうが、まぁ、試験が終わって夏休みに入ったら、それを売って金にでもしたらいい。悪かったな」
そう言って俺も部屋を出、アーネと合流する。
「ありましたの?」
「無かったよクソが。あぁでも、背中になんか書いてあったわ。肩甲骨あたりに」
「私もシャツの内側に線を何本か見ましたわね。恐らく、二つを重ね合わせると転移の魔法陣の簡易陣が出来ますわね」
「そうか、あれで充分だったのか」
それを補助する術式だのなんだのがまだありそうだと思っていたのだが、結局無かった。
「で?誰がやったのかわかったのか?」
「予想以上に魔法陣が簡略化されていて誰かまでは…ただ、どこへ向かっているのかはわかりましたわ」
「どこにって…魔力がか?」
「えぇ、シエルの身体ですの」
アーネは力強くそう言いきった。
そんな訳で、ヴィクターを早急に調べなくてはならない。何かの拍子に魔法陣が消えたりしたら非常に厄介なんでな。
「──って訳で脱げほら。とっとと」
「あのさぁ、ちょっと話がよく見えないんだけど、もうちょっと説明してくんない?」
現在夜八時過ぎで、場所はヴィクターの部屋。説明は軽くしたのだが、それでもヴィクターは少し混乱しているらしい。そりゃそうか。
「んで何?俺の身体見たいの?別にいいけど……その、そこのアーネちゃんも見てる訳?」
「あ?あぁ。俺じゃ魔法陣見てもよく分かんねぇからな」
「気にしないでくださいまし。男の裸は見慣れてますわ」
「いや、そう言われても健全な一男子としては精神衛生上どうしても…」
「とっとと脱ぐか、俺に剥かれるか、どっちがいい?」
そう言ってようやくヴィクターが服を脱ぎ始める。
どの魔法陣を探してるかは分かるが、アーネならその魔法陣から逆探知が出来ると言っていたのでアーネも連れてきたのだ。
「……ほら、これでいいか?」
そうこうしているうちに、ヴィクターはパンツ一枚になっていた。流石にアーネの前で全裸は嫌らしい。
「とりあえずはな。もしもなかったら生まれたままの姿をしたヴィクターを拝む事になるな…アーネ、服の方頼む」
「わかりましたわ」
「んじゃ、ちょいと触るぞ」
「あはぁんっ」
気色悪い声を上げるヴィクターを無視し、体表を触りつつ緋眼でチェックしていく。
身体の前側だとヴィクター自身が気づく可能性がある。ならばあるなら背面か。脇腹などにはないだろうが…うなじや肩甲骨、膝裏などはまず分からない。その辺を入念にチェックしていく…が、無い。
「んー…?これは…」
「お、おい、なんかあったのか?」
肩甲骨のやや下の方にあったかと思ったが違うわこれ。黒い線が何本かある程度。
「いや、無いな。アーネは?」
「無いですわね…となると」
俺達の視線がヴィクターの下半身に注目される。
「な、お、おい、嘘だろ?せめてこれだけは…」
「安心しろ、前の方は見ねぇ。どうせ描いてないだろうしな」
「そういう問題じゃなくてなぁ!」
がっちりと下着を掴んで離そうとしないヴィクター。これじゃ脱がせることも出来ん…なら。
「あぁそうだ、ケツ側から見てもはみ出るサイズならワンセット全部持ち上げといてくれ。野郎のナニを見て興奮するタチじゃないんでな」
「おまっ!」
ヴィクターの気が一瞬俺に向いたタイミングを狙って、一瞬で手を払って下着をずり下ろす。
「はぁっ!?」
慌てて反応するヴィクターの足を蹴払い、足が浮いた瞬間に下着を抜き去りアーネへパス。心底嫌そうな顔をするが、俺だって今から野郎のケツを触ったりじっくり見たりしにゃならんのだ。逆よりかマシだろう。
「てめぇレィア…後で覚えとけよ」
「お前自分のケツによっぽど自信があるのか?確かにハリはいいが…」
「そこじゃねぇよバカ!うぅくそぅ…」
………。
「アーネ」
「無い、ですわね」
「そうか。ヴィクター、一応前の方も…」
「ねぇよ!そんな魔法陣なんてよ!」
流石にヴィクターが嘘をついている訳ではあるまい。服を全部返し、ごそごそと着替え直すヴィクター。ちなみにアーネは一旦部屋を出てもらってる。
「そうか、悪かったな。今回の件は貸一って事で頼む。何かあったら手を貸す。そうだな…それとついでに、これ、いるか?」
すっと手を差し出すと、ヴィクターがとりあえず手を伸ばす。その手にそっとそれを置いて手を引く。
「ちくしょう…なんだってんだ?」
ヴィクターに渡したのは適当な宝石一つ。澄んだ蒼の輝きを放つ青宝玉。
「こんな場所なら何の役にも立たんだろうが、まぁ、試験が終わって夏休みに入ったら、それを売って金にでもしたらいい。悪かったな」
そう言って俺も部屋を出、アーネと合流する。
「ありましたの?」
「無かったよクソが。あぁでも、背中になんか書いてあったわ。肩甲骨あたりに」
「私もシャツの内側に線を何本か見ましたわね。恐らく、二つを重ね合わせると転移の魔法陣の簡易陣が出来ますわね」
「そうか、あれで充分だったのか」
それを補助する術式だのなんだのがまだありそうだと思っていたのだが、結局無かった。
「で?誰がやったのかわかったのか?」
「予想以上に魔法陣が簡略化されていて誰かまでは…ただ、どこへ向かっているのかはわかりましたわ」
「どこにって…魔力がか?」
「えぇ、シエルの身体ですの」
アーネは力強くそう言いきった。
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