大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

逆鱗と質問

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ルト・ゼヴァルナアーク。
苗字でわかると思うけど、このヒト種の大貴族の片割れ、盾の一族である龍人種ドラゴニアン
青い髪がトレードマークで、がっしりとした大柄な身体がなんとも羨ましい。
二つ名持ちであり、《逆鱗》という何ともまた怖そうな名前を持ってる。
俺が知ってる情報は取り敢えずはそれぐらい。かなり情報が少ないんだよな。
なんせ、《勇者》から隔離されてるから、コイツの訓練している姿を見たヤツが少ないのだ。
一応、事前に調べて分かったことと言えば。
百年に一度の天才って言われてること。
あとはほとんど分かっておらず、知ってるっぽい奴の言葉が『あいつは敵に回すな』『俺、二度とルトに喧嘩売らねぇ』『命が惜しいなら絶対にアイツに近寄るな。《力加減》を誤って殺られかねん』などなど。
ちなみに、彼が行った二つ名争奪戦では、戦いを挑んだ生徒ほぼ全員が復帰不可能となり、大量の生徒の補充を余儀なくされたらしい。
そんな先輩だ。二つ名の所から察するに───いや、察するまでもないが───怒らせてはいけない。
短気ヨクナイ。ダメゼッタイ。
一応、煽る様なことは言わないように心がけねば。
「あぁ、私がそうだが。それがどうした?」
青い男改め、ルト先輩がさっきより幾分機嫌が良さそうにそう返す。
「そりゃよかった。えーっと、状況がやっぱり呑み込みにくいんだけど、まず最初に」
ぐるり、と周りを見渡す。
「ここ、ドコ?」
「なんだ、そんな事か。ここは第四訓練所。昨年増設されたこの学校の最上階で、私専用の訓練所だ」
えぇー…ルト先輩専用の訓練所って…えぇー…。《勇者》と隔離したって言うのって無理矢理学校の階層、一個増やしたのかよ…金の出処は…あぁ、この人ね。
「んじゃ次。この手、なんで俺縛られてんの?」
ずっと縛られててかなり痛いのだが。
「そりゃ、アンタが危険だからでしょ」
答えたのは。
「なんだ?小便女」
「その呼び方止めなさい!私はシスティ・ルゼットよ!」
うーん、似合わねぇなぁ…。まぁいいっか。
「んで、危険ってどういう事だ」
「素手で鵺を蹂躙するヤツを危険と称さずにどうしろと?」
あぁ、そゆことか。
「私は別に構わないと言ったのだがな。どうしてもシィがそう言うのでな。すまない、今すぐほどく」
おぉ、なんだか結構優しそうな気配。これなら大丈夫そうか。
「あぁうん、頼む」
そう言うと、先輩は俺の後ろに回り込んで縄を弄り始めた。
「そのままでいいから、質問続けていいか?」
「あぁ、構わないぞ」
「んじゃ、一応最後の質問な」
少し身体を後ろに捻り、先輩の顔を覗きながら。
「俺の銀剣、いつ返してくれるの?」
と、言った途端だった。
バヅン
「ん?」
手が軽くなった。そうか、縄が解けたのか。
そう思って手を前に回そうとした。
ら。
ガッシリと右手が力強く掴まれていた。
誰に?そりゃ当然。
「貴様に?」
《逆鱗》のルト。
「貴様に返す物など、石ころ一つない」
俺が覗き込んだ先輩の目。
その目は縦に割れ、金色の目がこちらを覗き返していた。
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