大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

血と操作

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今必要なものは集中力。四つの血の糸を常に維持し続けた上で、切り離しても血海を発動出来る程の、だ。
普通なら血海を発動する際、自身で対象の血に自分の血を入れ、触れる必要がある。理由は単純に精度の問題だ。そうしないと血海を上手くコントロール出来ない。
しかし俺ならば。自分の身体を、一部を、意のままに操れる俺ならば。血に直に触れる必要は無い。血で血に触れるだけでいい。それだけで血海は完成する。
そして今、ウィルの身体はそのスキルの反動で至る所から血が出ている。俺の血を流し込むのは比較的容易だろう。
『来るぞ』
シャルの声。しかしそれに反応するより早く、ウィルが動いていた。
普段の彼からは想像もつかないような叫び。獰猛、という言葉が最も似合う──いや、もっと言うならば…なるほど、『狂っている』か。
ウィルの剛剣と俺の金剣が真正面からぶつかり合う。
「っ、ぎぃ…!」
「Cooofuuu──」
っかしいだろコイツ!右腕一本だからっても多重バフ状態の俺と真正面から鍔迫り合いするとか!
「クソがッ!」
剣を翻し顔へ一発拳を叩き込む。手応えはあった。鼻がひしゃげたか。しかし反応はない。
痛みがないのか、気にしていないのか、はたまた痛みを感じる事が出来ていないのか。
怪我はさせたくないんだが、痛覚で起きる気配はないと再確認したかったため致し方ない。
まぁなんにせよ──一本目。ウィルの右腕の根本、よりやや下の位置には赤い血のリングが巻かれていた。
「一個目ぇ!縛りやがれ!」
俺が叫んだ瞬間、緩く巻かれていたそれが収縮。ウィルの腕を締め付ける。
それでもウィル本人にダメージはなさそうに見える。しかし俺には感覚でわかる。血海は既に発動している。数分で腕の痺れ、そしてじきにロクに動かなくなる。
「!」
殴った反動でまだ宙に浮いている俺に、ウィルの盾が襲いかかる。
剣で逸ら──いや、空中でこの体勢だと無理か。しかも剣は今、殴るために上に投げた。手元にはない。
ならば。
「くっ!」
豪と迫る盾の表面に軽く触れる。そしてそこを取っ掛りに、盾を下へ押すようにして身体を反作用で上に。
浮いたのは僅かだが、回避する分にはなんとかなる。
マキナから火花を散らせる程のギリギリ回避だが、振り抜いた無防備な腕がちょうどよく俺の目の前に来た。
「二つ目っ!!」
一つ目と同じように二つ目を縛り、ついでとばかりに顔の側面を蹴って離脱。残るは足か。
落ちてきた金剣を空中で掴み、ウィルの次の攻撃に備える。ここに来てようやく右腕がおかしいことに気づいたのか、ウィルが僅かにたじろぐ。
しかしそれもすぐに振り切り、動きにくくなった右手を横に振り向く。
だからきっとそれは、ウィルにとっても想定外の動き。
予想以上に弱まっていた腕の力は、握っていた剣をしっかりと掴んでいると錯覚させたのだろう。
ウィルの剛腕が振り抜かれ、同時に超速で剣が俺目掛けて投げられた。
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