大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

落下と底

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「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ガリガリガリガリ!!と、凄まじい勢いで壁を削りながら落下。
やべぇ、この高さは死ぬ。直感でそう感じ、直後に俺は許可も取らずに血界を発動していた。
「第二血界──《血呪》!」
身体を巡る黒の紋様が身体そのものを強化し、尋常では有り得ない強度へと変貌させる。
発動が完了した直後、ダァン!!と膝に悪そうな着地を決める。普通なら骨折は当たり前みたいな感じの落ち方と距離だったが、実際は捻挫すらしていない。血呪の効果強すぎない?

「…遠っ」
上を見上げると、まだ暗い夜の空に浮かぶ月が少しだけ見えた。穴は思ったよりかは浅かったようだが、充分深い。
距離的には大体二十メートル…いや、三十メートル程か。やはり高い。こんな所から奴は地上のアーネが放つ魔力を察知して出てきたのか。とんでもねぇ奴だ。
「………出れるな」
大銀剣を双剣にし、血呪の腕力にものを言わせて胸元に収納。上を見上げながら俺はそう呟いた。
やろうと思えば全力で飛べば多分何とかなる。というかマキナをバラして空中に足場を作って、そのまま登って行けば出れる。
『出るのか?』
「どうすっかな」
そう言って視線を走らせるのは穴の奥。丁度直角に…というほど急ではないが、穴が横に伸び始めたのはこの辺りかららしく、緩やかな下り坂のトンネルになっていた。
夜もかなり更けている。それなりに大きな戦闘も乗り越えた。寝たい。と思う反面、奥に何があるのか知りたい、と言う好奇心もある。
誰かによって塞がれた穴。となると当然、その誰かはこの穴のことを隠蔽しようとしたはずなのだ。誰かは分からないが、隠す価値はあった穴だ。
『帰って寝とけばどうだ、とは一応言っとく。疲れた身体での探索は危ないぞ』
「………それもそうか」
そう言ってマキナを宙に浮かべ始める。破壊した蓋どうすっかな。隠したい奴がまた隠すだろうし、ほっときゃいいか。
『お?やけに素直じゃねぇの。珍しいな』
別に。疲れてるのは確かだし、帰って寝たいのもその通り。明日になってもウィルが帰ってこないならどうせ入ることになるし、なら別に今急いで進む必要も無い。だから帰って寝る。
幸いな事に、先に入っていったのは『あの』ウィルだ。そう簡単にはやられたりしないだろう。
そう判断し、マキナに足をかけた所で──猛獣の雄叫びのような声が聞こえた。
『なんだ!?』
「あれは──」
一度だけ間近で聞いたことのある声。
ウィルのスキルである《狂化きょうか》の発動時に聞いた声。
それが絶えず、まるで暴れ回っているようにトンネル内で反響する。
「マキナ、音源がどの辺か特定できるか?」
『そのような・機能は・搭載・されておりません』
「ダメ元だ。気にすんな」
大体なんでも出来るから聞いてみたけど、流石にそんな能力はないらしい。
『大体百メートル…いや、もうちょい?そんぐらい先だわ。割と近いな』
「いやお前がわかるのかよ」
びっくりだわ。
『反響してるから確証はないけど、大体まぁこんなもんぐらいで思っといてくれ。これぐらいならどの《勇者》も出来るぞ』
本当に勇者って化物揃いだよな…っと、そんなこと言ってる場合じゃねぇか。
『行くのか?』
当然。予定は変わるものだ。
マキナから足をおろし、俺は走り出した。
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