大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,288 / 2,027
本編

タッグと緊急変更

しおりを挟む
この戦闘が始まるまでの五分間の猶予。
その時、俺とユーリアが話していた内容はざっくり分けて二つ。
一つは互いの知りうる限りでメンバーのスキルを開示すること。と言っても、そもそもスキルなんか大っぴらに誰かに言うものでもないし、互いにそこまでの数は無いのだが、少数でも知っているということその物が重要な時もある。
そしてもうひとつが、互いにどう言う動きをするかという相談。
「とりあえず別々にやってみるか。そっちの方が実力出せるだろ?」
「そうだな。だが師匠、正直な所、私はそこまで上手くないのだが。十五対二だぞ?無理があると思うんだが」
「師匠はやめろ。そうなりゃお前だって魔法なり何なり対処出来るだろ。その剣、特殊な金属で出来てるから杖代わりの媒体にもなるんだろ?切り替えはいらないはずだし、そのまま魔法を撃ちながら剣で斬りゃいいだろ」
「一対一なら私も問題は無い。だが複数人となると…」
「あー、分かった分かった。正直俺も武器に一部不安があるからこうしよう。最初はバラでやって、無理だったらすぐにタッグだ。それならいいだろ?」
「…譲歩されただけマシか。わかった。それで行こう」
「ヤバくなったら合流だ。あとは流れで」
──と言う話があった訳だが。
包み隠さず言おう。相手の実力は、俺の予想をずっと上回ったものだった。
あれヤベェ。気ぃ抜いたら一瞬で捲られる。そんでそのまま流れるように持っていかれる。二対一になっただけなのにこれは正直不味い。
銀剣の小回りが効かず、上手いこと扱えないのが致命的すぎる。
過去の俺なら流れるような連撃と、それに見合わない異常に重い攻撃で相手を圧倒出来た。入学初日にフィールドをぶち抜いた事でそれなりに有名だった煌覇という戦技アーツもある程度攻め手を警戒させる抑止力になっていた。
だが、今の俺はそれらが無い。まるで、双剣の形にまるで似合わない煌覇という戦技アーツの破壊力のみをねじ込んだような雑な作りの新銀剣はなるほど、確かに破壊力は増した。
しかし、それによって相手を翻弄する技も、俺に選ばせる選択肢も、もとよりあった戦技アーツも何もかも捨て去る結果となった。
故に、駆け引きが出来ない。ただただ強力な攻撃を連続して放つだけ。
確かに脅威ではあるが、逆に言えばその程度。まして、複数人でかかれば受けるのも尚更楽になる。
当然、その程度は対処出来なければ進級すら出来ないのがこの学校だ。
今の二人組は何とか撃破出来たが、時間が経てば経つほど俺は加速度的に不利になるだろう。
つまり、長々と喋ったが、俺が今何を言いたいかと言うと──
──俺の方が先に不味いと判断した。
「ユーリアぁぁぁぁ!」
と、そこまで遠くにいた訳では無いが、ユーリアが俺と同じように二対一で戦っていた所へ乱入し、流れるように一人分のネックレスを千切り取る。
「あっ!?嘘!?」
「え、レィア!?」
「やるぞユーリア!」
そう言うと、ユーリアはただ、微妙な顔でこちらを見ながら「………どうした?」と言う。ユーリアへの説明?そんな余裕もないし、弱点を晒す訳にもいかん。
現状の俺は、複数人の対人においてかなり弱くなっている。と言えば、即座に十五人が俺をいっせいに狙うだろう。
「ユーリア、背中を預ける」
「??…何があったかよく分からんが、要するに今から共闘の流れだな?わかった。預けられよう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記

スィグトーネ
ファンタジー
 ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。  そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。  まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。  全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。  間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。 ※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています ※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...