大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

合流と帰路

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さて、アーネによる手当が終わり、包帯を巻き終わる頃、ちょうど先生と先に帰した生徒達がこちらへ向かって馬車を走らせてくるのが見えた。
先に帰した一年達は無事に戻れたらしく、誰も欠けていなかった事に安堵し、次いで先生には最後の班の生き残りは一人しかいなかったと伝える。
「それは…なんとも痛ましい事ですが、せめて一人でも助かった事に感謝しましょう。ところで、その生徒は」
くい、と親指で後ろの方を指すと、先生がそちらへ行き、一分程で戻ってきた。
「一体、何と戦って来たのです…?およそ人の形を下だけの何かに成り果てるなんて…あれでは担任の私でも誰かわかりません…」
「デーモン」
短く答えると、先生は目をひんむき、口をパクパクさせた。
「ど、ど、ど、どこでですか!?」
「どこって言われてもなぁ…外はほとんど砂だけの枯れた土地だし、目印になるような何かも特にないし。この辺の結界から出て真っ直ぐってぐらいしか言えないな」
あとは強いていえば俺達が隠れていた岩が目印か。でも言わなんてそこらにいくらでもあるしなあ。
「そう…ですか。亡くなった生徒の遺品などは…」
「無かった。遺体もだ。骨まで消し炭になったのか、それとも爆風で吹き飛ばされてどこか行ったのかわからんが、少なくとも俺達の目には止まらなかったな」
「………わかりました。協力感謝します」
と、先生は俺にそう言い、見るからにしょげて生徒達の所へ戻って行った。
そして現在。
「あー…涼しい…」
俺がいるのはガタガタガタガタと揺れる馬車の上。
なんの馬車かと言うと、生徒達が乗っていた馬車、そのうちの一つだ。
行きは例の魔導具で来ていたが、俺のもアーネのもいつの間にかぶっ壊れてた。多分、デーモンの熱にやられたんじゃなかろうか。
なんにせよ、移動手段が無くなった上、ほとんど治癒したとは言え、背中を大きく負傷した上に連続の戦闘等をこなし、消耗した俺と、怪我人を全力で救おうと魔力のほとんどを使い果たしたアーネだけでは帰りの道がかなり危険であると言うこと。
そして、チームのほぼ全員が壊滅した馬車が空いていること。
最後に、セッタ先生は回復等にはあまり向いておらず、例の生徒の面倒を見て欲しかったということから、帰りはこの馬車に乗っても良くなったのだ。
まぁ、ついに隠れる必要がなくなったので、元々どこかの馬車に乗らせてもらおうかと思っていたのだが、都合がついて良かった。
「ちょっと貴方、ちゃんと運転してくださいましね?」
「大丈夫大丈夫。これぐらい問題ねぇよ」
屋根の上からでも馬車の操作ぐらいなら髪を伝って出来るし、ついさっきまでクソ熱い所にいたのでこの辺が丁度いいのだ。
それより。
「そっちの方はどうだ?」
「身体の傷はほぼ全て治りましたわ。ただ、焼けた顔は…」
アーネやユーリアから聞いた話だが、回復魔法、及び治癒魔法は本人や術者の回復力を利用して身体を治す魔法らしい。
回復力というのはつまり、膝を擦りむいたら血が出た。だからカサブタが出来て、それが落ちたらすべすべの肌が出来てて治った。みたいな話。
場合によっては傷も残るし、骨折などの場合はきちんとした形に戻してから回復魔法なり治癒魔法を使わなければ、歪な形で骨同士がくっつき、大変なことになるらしい。
で、今回の一年生にかけたのは治癒魔法だ。
恐らく、顔は元の顔の原型すら残らないような、場合によっては人の顔と認識できないような、恐ろしい顔。
「なにか方法は?」
「単純に、顔を元の形に整え直してから治癒魔法で上書きして、顔の形を治すという方法はありますけれど…彼女が誰なのかがわからない以上、今は触れるべきではありませんわ」
「ふぅむ、できなくは無いのか…ん、アーネ、こいつ女なのか?」
「えぇ、治療の際、見ましたから」
なるほど。直に見りゃそりゃわかるわな。
とりあえず、彼女に対して俺達が今出来ることは無いのか。
「あとは彼女の意識が戻るのを待つだけ、か…」
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