大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

生還と触診

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デーモンからの必死の逃走は成功、そこから結界の方まで走る途中、二度ほど魔獣と遭遇しかけるも、マキナの探索範囲に入った時点で迂回。その結果、やや遠回りになりつつもなんとか結界へとたどり着いた。
「マキナ、先生と連絡取っといてくれ。惨状に関しても報告だ」
『了解・しました』
貰っていた札で結界に入り、ようやく一息ついてその場に座り込む。
「…大丈夫ですの?」
「いんや、全然。正直背中とかヤバい」
「!!、また怪我しましたの!?」
隠す気も無くそう言うと、アーネは俺のコートを無理矢理ひん剥きにかかる。
どうせ後から治してもらうつもりだったし、特に抵抗はしないでいると、ベリっと背中に激痛が走った。
「痛ッ!?お前何した!?」
「背中と服の端がくっついていたので剥がしましたの」
なんつー無茶。いやまぁ、それしかなかったんだろうけどさ。
「ちょっ、痛っ、あの、アーネさん?縁を執拗に触るのやめてくんない?痛っ、痛っ、いたたたた、いたっ痛っ!?」
「そうですわね…この程度なら手持ちのアイテムと今の魔力量でも何とかなりますわね」
「…あの、今の過剰な接触はなんでしょうか」
「触診と、いつも私の手を焼かせる罰ですわ」
焼けてるのは俺の背中なんだがとか言ったら背中をぐりぐりと触られるような気がしたのでやめておいた。
『マスター・セッタ様が・こちらへ向かう・そうです』
「そりゃ助かる。ここで待ってる間に治癒してくれる…ん?」
「どうかしましたの?」
…背中にデカい傷があるってのに、コートの方には穴もなければ汚れすらない。
普通に考えりゃ、溶岩が背中に直に触れたから怪我した訳なんだが。
シャル、なんか知ってる?
『んー…元々それ、魔力吸って能力発動する系の魔導具だったんだが…今は関係ないだろうな。長いこと魔力吸わせて無いから反応しないはず』
ふーむ?ある意味マキナと同じ系統の魔導具か。でもそれなら、ちょくちょく俺、自分の血塗れになってるけどなんで反応しないんだ?
『あぁ、そりゃお前単純に魔力不足だ。オフの状態からオンにする時は馬鹿みたいに魔力食うんだよ、それ。効果は絶大なんだけど、常時血を垂れ流してる訳にもいかんから、俺は一、二回しか使ったことない』
なんだそりゃ。マキナでいいわそんなもん。
「…いや、なんでもない。治癒してくれるか?」
「えぇ、もちろんですわ」
………さて。
「マキナ、先生が来るまでどのぐらいかかる?」
『十分・と想定されます』
割と近いところに出れたのか。そいつは僥倖。
一年生の容態も一応、ある程度は安定して来た。このまま死ぬことはないだろう。
まぁもっとも、死ぬことはないにしても、死んだ方がマシだったと思う人もいるのかもしれないが。
「………。」
その一年生には手足がなかった。
それだけではない、目もなければ髪もない。顔すら黒く焼け、どんな顔だったのか思うどころか性別を知ることすら難しい。
コレが生きていると言えるのだろうか。この一年生を助けた所で、もうこの生徒に戦闘は出来まい。
聖学は厳しく、恐らく居場所はなくなる。
そうなればきっと、聖学はこの一年生を家に帰させるだろう。
手足をなくし、顔すら別のものになった上で、この生徒は自らの家に帰れるのだろうか。
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