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本編
遠距離と魔法
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一年生達の反応が結界の方へ向かっていくのを確認しつつ、未ださらに奥へ進もうとする二つの反応を追いかける。
方角的にざっくり同じ方向へ向かっているのがせめてもの救いだが、如何せん距離がありすぎる。
「アーネ、もうちょい速度出せねぇ?」
「これ以上出すと魔導具の方が壊れますわ。元々一人用なのに、二人分の体重が乗ってもここまで走れる方が上等ですわよ」
と言われた。いわれりゃ確かにギシギシ言ってる。こりゃいつ壊れてもおかしくない。返す時に「耐久性に難あり」って言っとくか。
『マスター・捕捉しました』
「どこだ!?」
鎧として起動させたままのマキナにそう言うと、『そのまま直進・一キロメートル・です』と返ってきた。
「よし、アーネ聞こえたな?」
「えぇ!一キロ先にいるんですのね?」
『補足・戦闘中の模様です。形は人型・体躯は一メートル以上・二メートル未満・武装なし・敵の数は・十二と思われます』
「「十二ィ!?」ですの!?」
多いな。
「混戦か」
『恐らく。魔法らしき・光が見えますが・聞いている様子は・ありません』
厄介だな。それが魔法を無効化しているのか、ダメージとして通っていないのかは分からないが──
「見えたっ!」
一年生達が戦っているのは──なんだあれ!?クリスタルで出来たゴーレムか!?俺も初めて見たぞ!
大きさそのものは大したものでは無いが、見るからに硬そうなのはこの距離でもわかる。
「アーネ、見えるか?」
「見えましたわよ!」
「やれるか?」
「もうやってますわ!」
体内で魔力を汲み上げ、右手に収束。
一瞬だけ映った魔法陣はアーネの拳よりも小さいが、その複雑さは異常とも言える程に精緻なものだった。
「《捉えて穿て、緋の花弁。爆ぜて散らせ、火の華よ》」
ヤバい、珍しくアーネが詠唱してる。
俺は急遽ブレーキをかけ、その場で足を踏ん張る。
何故なら、いつもなら詠唱を捨て、魔力を雑に扱って《圧縮》でぶち抜くアーネが、わざわざ詠唱をして狙っているのだ。
たとえるなら、俺が金剣を戦技無しで振り回すのではなく、連戦技を使った時のようなものか。
明らかにヤバい魔法に違いない。
「《バースト・ブルーム》」
短いとは言え詠唱が終わり、魔法の名前を告げると、ぶわっ、とアーネを中心に火の粉が舞い上がる。
すぐに消えるかと思われたそれは、その場でピタリと制止し、消えることなく燃え続ける。
その数、百に迫ろうかという勢いである。
アーネを中心に展開されているため、再び走ることも出来ない俺は、一つ一つの大きさは親指の爪の大きさ程である火の花びらに込められた魔力量が桁違いであることにすぐ気づいた。
「おいアーネ!大丈夫か!?」
「これぐらいなんてことありませんわ!」
魔力が欠乏したのではないかと思って慌てるが、当のアーネは余裕の表情。
コイツ、身体のどこにこんな魔力を持ってやがるんだ。
「行きますわよ…」
鳴らした指の音に応じてアーネの魔法がついに始動する。
親指の爪ほどの大きさだった炎は、それぞれ回転し始め、徐々に加速。やがて細長い楕円形へと形を変える。
「穿て!」
アーネの号令に応じ、高速回転していた炎が凄まじい勢いで飛んでいく。
乱戦中だと言うのに、アーネの放った魔法は全てゴーレムのみに着弾。そして、着弾と同時に小規模だが強烈な爆発を起こした。
ゆっくりとゴーレムが崩れ落ちていくのが見える。今ので核をやられたか。
「よく核の位置がわかったな」
この距離じゃさすがに俺でも全くわからない。
そう思ってアーネに言うと、アーネもきょとんとした顔。
「私もわかってませんわよ?ただ全身に炎をねじ込んで内側から爆発させただけですわ」
なんという力技。しかも魔法もエグイなお前。
「まぁなんにせよ合流だ。行くぞ」
…にしても。
学校長が言ってた異常ってのはまだそこまで感じられないよなぁ。確かに最初に遭遇したスコルの再生能力は異常だったが、次のアルミラージや今のクリスタルゴーレムは特に異常は無さげ。
学校長が慌てて呼び戻させている割に、そこまで驚異を感じない。これなら続行させていてもそれなりに問題はなさそうだが…
…今はとりあえず置いといて、救出を最優先にしていくか。
最後に残ったチームと早く合流せねば。
方角的にざっくり同じ方向へ向かっているのがせめてもの救いだが、如何せん距離がありすぎる。
「アーネ、もうちょい速度出せねぇ?」
「これ以上出すと魔導具の方が壊れますわ。元々一人用なのに、二人分の体重が乗ってもここまで走れる方が上等ですわよ」
と言われた。いわれりゃ確かにギシギシ言ってる。こりゃいつ壊れてもおかしくない。返す時に「耐久性に難あり」って言っとくか。
『マスター・捕捉しました』
「どこだ!?」
鎧として起動させたままのマキナにそう言うと、『そのまま直進・一キロメートル・です』と返ってきた。
「よし、アーネ聞こえたな?」
「えぇ!一キロ先にいるんですのね?」
『補足・戦闘中の模様です。形は人型・体躯は一メートル以上・二メートル未満・武装なし・敵の数は・十二と思われます』
「「十二ィ!?」ですの!?」
多いな。
「混戦か」
『恐らく。魔法らしき・光が見えますが・聞いている様子は・ありません』
厄介だな。それが魔法を無効化しているのか、ダメージとして通っていないのかは分からないが──
「見えたっ!」
一年生達が戦っているのは──なんだあれ!?クリスタルで出来たゴーレムか!?俺も初めて見たぞ!
大きさそのものは大したものでは無いが、見るからに硬そうなのはこの距離でもわかる。
「アーネ、見えるか?」
「見えましたわよ!」
「やれるか?」
「もうやってますわ!」
体内で魔力を汲み上げ、右手に収束。
一瞬だけ映った魔法陣はアーネの拳よりも小さいが、その複雑さは異常とも言える程に精緻なものだった。
「《捉えて穿て、緋の花弁。爆ぜて散らせ、火の華よ》」
ヤバい、珍しくアーネが詠唱してる。
俺は急遽ブレーキをかけ、その場で足を踏ん張る。
何故なら、いつもなら詠唱を捨て、魔力を雑に扱って《圧縮》でぶち抜くアーネが、わざわざ詠唱をして狙っているのだ。
たとえるなら、俺が金剣を戦技無しで振り回すのではなく、連戦技を使った時のようなものか。
明らかにヤバい魔法に違いない。
「《バースト・ブルーム》」
短いとは言え詠唱が終わり、魔法の名前を告げると、ぶわっ、とアーネを中心に火の粉が舞い上がる。
すぐに消えるかと思われたそれは、その場でピタリと制止し、消えることなく燃え続ける。
その数、百に迫ろうかという勢いである。
アーネを中心に展開されているため、再び走ることも出来ない俺は、一つ一つの大きさは親指の爪の大きさ程である火の花びらに込められた魔力量が桁違いであることにすぐ気づいた。
「おいアーネ!大丈夫か!?」
「これぐらいなんてことありませんわ!」
魔力が欠乏したのではないかと思って慌てるが、当のアーネは余裕の表情。
コイツ、身体のどこにこんな魔力を持ってやがるんだ。
「行きますわよ…」
鳴らした指の音に応じてアーネの魔法がついに始動する。
親指の爪ほどの大きさだった炎は、それぞれ回転し始め、徐々に加速。やがて細長い楕円形へと形を変える。
「穿て!」
アーネの号令に応じ、高速回転していた炎が凄まじい勢いで飛んでいく。
乱戦中だと言うのに、アーネの放った魔法は全てゴーレムのみに着弾。そして、着弾と同時に小規模だが強烈な爆発を起こした。
ゆっくりとゴーレムが崩れ落ちていくのが見える。今ので核をやられたか。
「よく核の位置がわかったな」
この距離じゃさすがに俺でも全くわからない。
そう思ってアーネに言うと、アーネもきょとんとした顔。
「私もわかってませんわよ?ただ全身に炎をねじ込んで内側から爆発させただけですわ」
なんという力技。しかも魔法もエグイなお前。
「まぁなんにせよ合流だ。行くぞ」
…にしても。
学校長が言ってた異常ってのはまだそこまで感じられないよなぁ。確かに最初に遭遇したスコルの再生能力は異常だったが、次のアルミラージや今のクリスタルゴーレムは特に異常は無さげ。
学校長が慌てて呼び戻させている割に、そこまで驚異を感じない。これなら続行させていてもそれなりに問題はなさそうだが…
…今はとりあえず置いといて、救出を最優先にしていくか。
最後に残ったチームと早く合流せねば。
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