大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

報告と内容

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「遅れた理由を聞きましょうか」
昼の十二時前、流石に行かねば不味いと向かった学長室には、膨大な書類を机の上に積んだ学校長がいた。
俺が入って来たことに気づいた学校長は、一度書類を片付ける手を止め、正面にある山をいくらかどかしてから口を開き、真正面から俺の目を見つめた。
「…悪い、ちょっと疲労が溜まってたもんで寝てた」
「でしたら次からはメッセージで一言何かしら言ってください。あなたの腰にあるそれは飾りではないでしょう?」
「むぅ、それは…すまなかった」
色々と遅れたのはこちらのせいだし、今回ばかりは謝るしかない。
すると、学校長が意外そうに眉を上げる。俺が素直に謝ったのがそんなに珍しいか。
「一日の間に何かありましたか?強く頭を打ったとか、毒を盛られたとか。そもそも、どうやってあんな遠くへいったのですか?」
「頭なんか打ってないし、毒も盛られてねぇよ。移動方法についちゃ…ま、信じらんねぇだろうから言わね。これ以上頭おかしいって思われちゃたまんねーわ」
「冗談でなければ信じますよ」
「ロリ金髪のやたら尊大な神様に、トチ狂ったようにブチ切れた英雄と一緒に西学付近に転移させられたんだよ。俺はほぼ巻き添え」
茶化さず本当のことを言えと言わんばかりの視線。だがこれが本当の話なのだから始末が悪い。
俺は肩を竦めて話を変えることにした。
「…本題だ。これはどういう意味で?」
ぴっ、と投げたのはクードラル先生から渡された矢文。
そこには「依頼書、密かに一年の《南下》に同行せよ」とだけ書いてあった。
「そのままの意味です。近々、一年生が《南下》をしますので、その後をこっそりとついて行って欲しいのです」
「俺が?他に適任がいるだろ。それこそ手持ちの《シェパード》…っつーか《雷光》か」
わざわざ無所属の俺を使わなくても、手持ちの駒である彼女を使えばいいだろうに。
え?なんで《臨界点》じゃないかって?あいつはどんな奴か全くわからんからなんとも言えん。
スキルも《雷光》の能力はどんな場面でも生きる強力なスキルだ。広範囲をカバーすることも、強大な敵一人と死闘をすることも、いざとなれば逃げる事にも役立つ。
が。
学校長は首を横に振った。
「彼女は今別の任務にあてがっています。それは《臨界点》も同じ。他の二つ名持ちにも声をかけてみましたが、結果はあまり良くなかったのです」
《シェパード》を別の任務に出してる?それも《雷光》だけでなく両方?
「…何してんだ」
「あなたが知る必要はありません」
口を割る気がないな。一発でそう理解した。
「わかった。引き受けてもいい。だが一つ確認と要求がある。いいか?」
「言ってください」
「一つ確認したいのは俺への報酬だ。見返りに何を出せる?」
「…あなたが欲しいとするなら…そう、情報…ですかね。研究所は見ましたね?あの場所で何をしているか聞かせましょう」
あそこか…んー、まぁ、狭間の話が絡んでいる以上、知っておくべきだろう。
「わかった、じゃあ報酬はそれだ。次に、同行者を許可してもらいたい。俺一人じゃ場合によっちゃカバーしきれない可能性があるからな」
俺の弱点というか、魔法が使えない者の悲しい定めというか、遠距離攻撃や範囲攻撃が出来ない。
万が一、膨大な数の魔獣が一度に押し寄せてこようものなら、俺は死ななくとも、物量に押された一年生が全滅なんてこともありえる。
「いいでしょう。ただし一名だけ、この場で決めていただきましょう」
「あぁ、俺と同室のアーネを連れていく。いいな?」
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